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富士山には月見草がよく似合うと書かれたオオマツヨイグサが消えていく

 「富士には、月見草がよく似合ふ」と太宰治が「富嶽百景」に書いたのは、黄色い月見草のことだ。「黄金色の月見草」と書いている。
 本来の月見草は、白い色をしているらしい。夜に白い花を咲かせ、明け方にピンクに花の色を変え、しおれていく。白い月見草はアメリカから伝わった外来植物だそうだ。夜に咲いて朝にしおれるから月見草という。
 白い月見草を見ることはほとんどない。これまた月見草より後にアメリカから伝わった宵待草ヨイマチグサ、マツヨイグサ(待宵草)にその座を奪われた。野生化していた白い月見草はなくなった。月見草といえば、黄色い花を咲かせる待宵草のこととなり、太宰治の書いた「月見草」は、オオマツヨイグサのことだといわれている。
 この世はめぐるめぐる糸車。
 白い月見草と同じように、野生化している黄色い月見草、オオマツヨイグサが今、姿を消していきつつある。

 家の近くにかつてオオマツヨイグサの大群落があったのだが、そこが宅地造成され、すっかり姿を消してしまった。タネが飛んだのか、道路の端にぽつぽつと生えているものもあるが、もうすぐ姿を消してしまうだろう。

 オオマツヨイグサは「オオ」=「大」という言葉があるように、大きな花を咲かせるのだが、最近見る月見草は花が小さくなっている。小さな花を咲かせる月見草はけっこう生えている。
 生育地によって花の大きさが違うのかと思ったけど、あまりに大きさが違いすぎる。これはメマツヨイグサという別種だ。
 メマツヨイグサは今もたくさん咲いている。
 同じマツヨイグサの仲間のコマツヨイグサは葉っぱがギザギザで、花がしおれると赤くなる。オオマツヨイグサとは全然違うが、メマツヨイグサはオオマツヨイグサの花の大きさだけを小さくした姿をしている。ほとんど同じ姿をしている。

メマツヨイグサ

 このメマツヨイグサが、オオマツヨイグサの生息地を奪っていっているようだ。
 オオマツヨイグサが咲いていた場所が、いつの間にか花の小さなメマツヨイグサになっている。
 かつてオオマツヨイグサが白い月見草を追いやったのと同じことが繰り返される。

 白い月見草にしたって、それまで日本にあった別の植物を追いやって日本で生きてきたはずだ。
 白い月見草に追いやられた、その植物にしたって、日本原産のものかどうかわからない。
 いろんな国からこの島国に集まって、仲間を増やし生きてきた。

 レンゲやヒガンバナも外来植物だし、ウメだって外来植物。キクなんて、「菊」の読み方「キク」自体が音読みで、訓読みがない。つまり、「キク」という言葉は外来語(中国語)なのだ。
 いろんなものが集まって、今の日本ができあがっている。
 日本の文化ができあがっている。


 メマツヨイグサの「メ」は「雌」のことで、大きなオスに対して、小さなメスという名。そのメスが、オスをどんどん追いやっている。コマツヨイグサの「コ」は「小」だが、小さいモノはオスやメスとは別の場所でしたたかに生育している。
 
 

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