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「青きヴァンパイアの悩み」最終回、普通がひっくり返る瞬間。



「青きヴァンパイアの悩み」最終話、凄まじかった。何がって「それが普通」って思っていたものがひっくり返る瞬間。私の目は何を見ていたのか。私たちがステレオタイプにイメージするヴァンパイアの姿。それが当たり前って何も考えずにいた。「生娘の血を求める。」とか。

「人間は、自分が理解できるように、世界を簡単にして分かったことにするものなのさ。」なんてドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る。」を思わず持ち出してしまうからこそ、その常識が変わる瞬間ってのは心に凄まじく残る。

「逃げ恥」のゆりちゃんの「そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」、「カルテット」の真紀さんの「すずめちゃん、軽井沢帰ろう。病院行かなくていいよ。」のように。

こうじゃないといけないからの脱却。私たちはドラマに潜むそんな何かが変わる瞬間を大事にしてきた。

なのに私は気づかなかった。そう、ヴァンパイアは私たちとはまったく違う別の存在だからって、偏見に満ちたまなざしで彼らを判断してた。
だけど、それは違う。ヴァンパイアの世界じゃない。今、私たちが暮らしてる世界だ。私たちの周りで起きていることだ。
それに気づいて、ハッとしたんだ。
「女性は血を吸われてもヴァンパイアにはなれない。」って。「女性は血を吸われるだけの対象、しかも処女が好まれる」って。「血を吸われ続けることで永遠の若さが手に入る」って。わーわーわーってなる。それって見たことあるやつじゃん。もうあれだ。「わきまえる」とかいうやつだ。

「男らしさ」っていう弊害。あたしなんかは「男らしさ」なんてくそくらえって人だけど、知らず知らずどっかで気にしてるところはあるのは確か。
「声のでかい人が勝つ。」小沢健二さんの配信「キツネを追っていくんだよ」でBOSEさんが言っていたこと。それが正しい情報じゃなくても、自信満々の発信の力だけで信じる人たちが増えていくこと。
そんな権力を持った一握りの人たちが少しずつだけど、退場していっているのはいいことなんだと思うのだけど。

蒼と葵が「男らしい人に惹かれますか」的なことを聞いたとき、未亜が「私レズビアンだから。」って言うこと。なんかそういうことなんじゃないかな。ただそこに居るということ。

「ヴァンパイアもニューノーマル」なんて軽いキャッチコピーを嘯きながら、私たちの社会の負の部分を曝け出してくれていたこのドラマ。それは自分のせいだと思い込んでいたものから少しだけ解放してくれる。人や社会のせいにしてばかりはいけないかもしれないけれど、その中でがんじがらめになっているのなら。1、2話のテーマがひきこもりじゃなくて毒親ってこと。
蒼と葵が人間の血を自分で吸うことでヴァンパイアになるって話じゃない。私たちがなんとなくこういうものだって信じてきたものに疑問を持つこと。
もろもろ解決が少し希望的すぎる気はしたけど、この先どうすれば、なんてこれから考えていくしかないのだ。このままでいいはずなんかないのだから。今まで普通に楽しんでいたオリンピックがこんなに嫌いになったりしたのは。
「変化したくないならただ平成に立ち止まりな。」なんてSKY-HIさんは歌ったけど、私たちが立ち止まってる世界はいったいいつの時代だろうか?


蒼や葵や未亜やオソノさんはすごく困難な道を選んだんだ。そんな彼らに光あれ、と願わずにはいられないし、あたしだって何かしでかさなきゃいけない、とか思うの。

蒼と葵のやっている喫茶店が「夜の子どもたち」って名前なのがすごい好き。
コロナで夜に人が出歩かなくなって、襲う人がいなくなる。お客さんもいなくなる。→供給される血液が少なくなる。→血液を買おうにも高騰。→無理な昼営業とか、ウーバーイーツ的なものとかに手を出す。笑っちゃうけど、ヴァンパイアもコロナで生きづらい。そしてそれは今の私たちにそのまま返ってくる。こんなにも何もできないことが辛いなんて思ってなかった。じゃあ、どうすんだ?ってのをやっぱり考えていかなきゃ。
世界はそんな簡単に変わらない。だけど。

昨日届いたクラファンしたmoment JoonさんのCD。最後の曲「Distance」が現在の私たちの姿を映し出してる。「プライムビデオ Hulu Netflix みんな自分の辛さ忘れるためにスクリーンが切実 でも誰も見たくない 画面が消えた後の黒い鏡 マスクの後ろに隠れる利己主義者がその中に 僕を許してくれ お互いを許せない僕らを神様許してくれ」
絶望を綴りながら、それでも、なんだ。

「そこで素顔で君に会える日を待ってる」

私のニューノーマルだってきっとあるはず。

脚本が「his」や「カフカの東京絶望日記」のアサダアツシさんってのは、やはり見る理由になって。「カフカ」の地下アイドルの回とか絶望的になるほどすごかった。「NoMen」とか凄まじいし。

hisに揺さぶられ続けた話はこちら



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