価値観の異なる組織同士での協力のためのマインドフルネス・瞑想・ヨーガの有効性
今、どうして社会/会社で、組織間での協力の必要があるのか。デイブ・スノーデン(Dave Snowden)氏のカネヴィン・フレームワーク(Cynefin framework)に照らし合わせながら、高度経済成長期以降の社会を俯瞰してみたいと思います。
そのうえで、現在私たちが抱える複雑な問題を解くためには価値観の異なる組織同士での協力が必要であり、価値観の異なる組織同士での協力のためには瞑想やヨーガが有効であると考える理由を記載したいと思います。
カネヴィン・フレームワークでは、問題や状況を4つに分類しています。
1.Simple(シンプル):単純
問題の因果関係や構造が明確
2.Complicated(コンプリケーティッド):困難
少し分析すれば、因果関係や構造を明確化可能
3.Complex(コンプレックス):複雑
因果関係が複雑であり、調査・探索が必要
4.Chaotic(カオス):混乱
因果関係が不明で、状況や問題の理解も難しい
このフレームワークに照らし合わせると、「高度経済成長期」、「2000年代初頭」、「年」では、発生している問題の種類が変わってきていることがわかります。
<高度経済成長期>
この時の企業の課題は比較的シンプルでした。カネヴィン・フレームワークで言う、単純系(obvious)に該当する時期と言えるでしょう。オートメーション化することで多くの課題は解決、企業は売り上げを伸ばすことができました。
<2000年代初頭>
この時代は、ロジカルシンキングや戦略思考で解ける課題が主でした。カネヴィン・フレームワークで言う、困難系(complicated)に該当すると言えます。ビジネスマンは、新しい知識を身に着けることで、自分の商品価値を高めることに躍起になりました。当時、MBAや、マッキンゼー、大前研一氏が注目を浴びました。
<近年>
社会の複雑性が増し、ロジカルシンキングで導いた答えをそのまま現場に適用することは難しくなってきました。「理屈はわかるが、納得できない」というご経験はありませんか。効率化を求める中で各組織ごと、それぞれ目的、目標(KPI)を持ちましたが、それは組織間の分断を生み出しました。決められたことを効率的に進めることを得意とする反面、協力して新しいことに取り組むにはあまり適していないのが現在の組織だと思うのです。近年は、カネヴィン・フレームワークで言う、複雑系(complex)に該当すると言えます。
「あちらを立てればこちらが立たない」状況から、もう一度お互いに協力し合えるようにするためには、U理論、システム思考、対話などの組織開発各種方法論や弁証法を駆使しながら、「自分の見解はある視点においては正しいが、絶対ではない」ことを認識し、他者を理解し、現象を直線ではなく循環でとらえる必要が出てきています。(近年よく聞くSDGsは複雑系の最たるものです。また、企業内でデジタルトランスフォーメーションが進まない一因もここにあると考えます)
ここで、ポイントとなるのが、自己利益や自己保存にこだわり、自身の意見を主張するだけでは、対話は成立しないという点。そして、対話をするためには、相手の意見を自分ごととして腹落ちし聴くためには、「私の考え」「私の利益」に執着する、エゴと距離を置く必要があります。(正しくは、「距離を置く」ではなく、「エゴが自分と認識する領域を拡大する」だと思いますが、ややこしくなりますので、「距離を置く」としています)
これまで、私たちはエゴと同一化して生きてきたため、急に「エゴと距離を置く」といわれてもなかなか実践が難しい。
わかりやすい例をあげると、よく会議などで「幣部としては〇〇な認識です」という言葉を耳にしませんか。そうではなく、論点は「社長の視点から見たらどうなのか」です。しかし、その視点を得るには、「どうしたら自部門に都合がいいか」「どちらが自部門にとって得か」から離れて考える必要があります。それはつまり、「自分の評判」「自分の業績」「自分の昇進」「自分の給料」から離れて考えるということです。これが、実に難しい。
このエゴと距離を置くために有効なツールが瞑想やヨーガだと思うのです。
対話と瞑想の関係性がうかがえるエピソードを一つご紹介します。以前、組織間のコミュニケーション改善に取り組む、「組織開発」界隈の方々のお話を伺った際に、瞑想実践者が多いことに驚きました。組織開発界隈のお仕事をされている方は、お仕事の性質上、瞑想の重要性に気づかれている方も多いのだと思います。
この先、組織課題や社会課題に取り組む方々が、エゴと距離をとるために、瞑想を必要とする時が来ると思います。(すでに一部の方は活用されています)その際に、インド・中国などアジア各地に古来伝わる伝統的手法を統合し、必要な方法のみを抽出した本山式経絡体操法、およびIARPヨーガは、その方々の強力な助けとなることと思います。
ここまでを整理しますと、複雑化した問題に取り組む必要がある昨今、その問題解決のネックとなるのは組織の縦割り文化と、個々人のエゴであると思います。
そして、個々人のエゴを客観視できるようになるためのツールが、マインドフルネスや瞑想・ヨーガであると思います。
なお、エゴ客観視のためのテクニックとして、内省・1on1・傾聴・対話など様々な内容が企業研修でも話されるようになってきていますが、その形式だけまねても「エゴが優勢な状態」では問題解決には至らない、というのが私の経験からの実感です。
ここで引用したいのが、賢人の言葉で、「難行道」「優行道」という言葉があります。
「難行道」=実践が困難な修行 を指し
「易行道」=易しい修行のこと を指します。
禅やヨーガのエッセンスをわかりやすく抽出し、ビジネスマンでも実践しやすい形に編集したマインドフルネスは、(比較的)易行道といえるかと思います。
かたや、瞑想やヨーガは、パフォーマンス改善というレベルまでであれば比較的容易に到達可能ですが、その先にさらなるステップがあるといわれています。数年の実践ではどこまで到達できるか、生涯行ってもどこまで到達できるか未知である、難しさ、奥深さがあります。
ですので、取り組まれる皆様には、ぜひ1週間や1カ月の取り組みではなく、長期間取り組む展望を持ちながらはじめていただけると、得られるものもより多くあるかと存じます。