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ずっと信じてた魔法

どんどん自分は穢れて無垢な子供じゃなくなっていくけれど、これだけは知らずにずっと子供でいたかった。

私にとって、クリスマスは魔法でした。
深緑とロイヤルレッドに染まる世界、
散りばめられた瞬く光の粒、
寒い寒い季節に胸の中に広がる眩い黄金の温かさ、
白く吐き出した息が一瞬宙で止まるような感動。

一年良い子にしていれば、きっと幸せが訪れる。

キリスト教でもないのに、寧ろキリスト教の友達以上にクリスマスを尊んでいた。
今思えば、友達があまりいなくて頑張って良い子を演じて好かれようと頑張っていた自分には、その一年に一度、見守ってくれている知らない優しい誰かに存在と生き方を肯定されるイベントだったのかも知れない。自分はこれで良いんだと言う証をサンタさんから毎年貰い、寂しくてもグレても落ちこぼれても、クリスマスに励まされていた。

それが、喧嘩ばかりして仲が悪くて、でも血が繋がっているからというだけの理由で愛してくれる親という存在だということに、自分は気付きたくなかった。誰か知らない自分を客観視してくれる人間に良い子だと認められたかった。親不孝者である自覚があったから、苦しめ合った親から励ましなんて貰ったら虚しさと罪悪感で胸が潰れそうだった。

その魔法が嘘とは薄々と分かっていても、自分は19になるまでずっとずっと心のどこかで「サンタさんはいる」と頑なに信じていた。

でも魔法もいつかは終わる。

大学の友達に散々「いないよ、まず証拠ないだろ」とコテンパンに言い負かされて泣かされて、子供時代の魔法は幕を閉じた。
本当に客観的に人を見ることは誰もできない。良い子の定義なんて、人それぞれ。良い子だと褒められることが無くなっても、あたしは生きていかなければいかない。

でも、自分が一番悪い子だった時に、一番自分が嫌いだった時に、良い子だと言ってくれてありがとう。
嘘だったとしても、サンタさん、ありがとう。

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