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雇用調整助成金を使わせようとしたことが最大の失敗かなと

ちょっと溢れる想いを書きなぐるので乱文になりそうです。
すいません。

感染症による都や政府の対応について、私はどちらかと言えば「よく頑張っている」と好意的に見ている立場です。

しかし、好意的に捉えている私から見ても「雇用調整助成金」を今回の感染症対策に適用および案内したことだけは、大変な間違いだったと感じています。

その証拠と言いますか、雇用調整助成金は今回の状況に対応すべく、様式や提出書類の変更が何回も施され、今や「出来の悪いキメラ」となってしまっており、それに伴い、「現時点での(最新版の)正しい申請がどのようなものなのか」という判断が、ほんの一部の現場の人間しか出来ないという状況に陥っています。コールセンターに問い合わせても「分からない」と平気で言われますし、コロコロ仕様が変わるので問い合わせる毎に違う案内をされます。

結論から言えば、「理念」の違う助成金を使わせるのではなく、国の「持続化給付金」や、都の「休業協力金」のように、感染症対策専用の制度を早急に設置して対応した方が良かったと思いますし、今からでも遅くないので早急に設置するべきだと考えています。

そもそも「助成金」の理念は現況にそぐわない

そもそも、雇用調整助成金は、その名の通り「助成」でしかありません。特に国が施設する助成金に大体当てはまりますが、助成率が100%のものなどなく、大抵2/3くらいの助成率で、1/3以上は自前調達、自助努力が課せられます。

これは至極当たり前で、想像するに行政の考える「助成金」というものは、借金で首が回らない経営者に融資代わりに給付する金銭ではなく、未来ある事業者に急場をしのぐために一部資金を援助することで、更なる発展を促すための金銭であり、故に最近では経営者側の負担金や、申請時に用意する資料、その審査の厳格さなども求められるようになっているようです。

助成金の申請の煩雑さや審査の不透明さ、「本当に必要としている人に届いているのか」など、細かい部分で納得の行かない事は多々ありますが、この想像する理念が的外れでなければ仕方がない部分もあるかも知れません。

雇用調整助成金についても、「雇用を守る」という側面は勿論あるかも知れませんが、経営者も事業への人件費の投資額が補填されるわけで、事業の援助施策に他なりません。被雇用者にのみフォーカスするのであれば、失業時の雇用保険支給額を増額する手もありますが、わざわざ企業へ向けた助成金にしている点から、前述のような考えが伺えます。

なんにせよ「助成金」というものは昨今、100%企業をサポートするものではなくなっていて、企業を「選別」して補助する施策に他なりません。そんなシステムを緊急時の対応策として使うように政府は促しているワケです。しかしながら、そう簡単にはシステムは変わりませんし、現場の処理も変わりません。このシステムを使わせるのはかなり無理があるように感じます。

基本「出したくない」が見え隠れするシステム

どうやら、様々な助成金で過去、不正受給が横行したようで、雇用調整助成金についても不正受給に対して滅茶苦茶センシティブな様式になっています。

不正受給に関する確認項目がとにかく多いです。ビックリするくらい。

また、昨今では「1日上限8330円の支給上限」が少なすぎると話題ですが、通常、助成率は休業手当支払額の最大で2/3となるため、計算すると休業手当12,495円/1日まで対応できる助成金となっていて、そこまで低い金額ではないかもしれません。加えて厄介なのは、恐らく早々に制限解除されたため、あまり報道で語られていない「年間100日上限(※この上限は今回の感染症対応時は適用されない)」なんて縛りもあったりします。(100日取得した後、1年間のクーリング期間が必要となる)

<記載に誤りがございましたので削除しました、ご指摘ありがとうございました>

ざっくり書きましたが、「100日上限/1年」の上に、「150日上限/3年」という縛りもあるため、無いとは思いますが、毎年申請するとすれば、年間の支給上限は更に半分の50日分相当ということになります。売り上げ減少の条件もあり、事前計画を申請させるなど申請様式も多い割には、審査は厳しいらしいですし支給は給与支払い後の後払い……対象は被雇用保険者のみだったり(感染症対策で現在は被雇用保険者以外も申請できます)使う場面があまり想像できない制度ですが……

仮に従来の制度で1ヶ月従業員を休業させた場合、

・従業員は被雇用保険者のみ
・日給換算12,495円

上記条件の範囲内で、休業手当の2/3の金額が受け取れるという感じです。一般的な就労形態でも上記条件を超える事業所が殆どだと思いますが「100日縛り」と「上限 8,330円/日縛り」の「2WAY縛り」が結構利いていて就労形態を基に忠実に申請すると、どちらかの縛りに引っかかって大抵、経営者の負担割合が増えるように出来ています。細かく書きませんが、ここで算出に使う「休業日数」も、実際に休んだ日数ではなく独特な算出方法が採用されていて(恐らくシフト勤務は想定されていない)、私はこれら様式の算出方式を確認したとき「助成の負担額を減らす方策として天才的な縛りだな」と感じました。考えた人は本当に天才か、何も考えていないかのどちらかです。「上限 8,330円/日縛り」は比較的平易な考え方ですが、そこに「延べ日数100日縛りを追加しよう!(そして休業日数の算出をこうしよう)」というアイディアは(支給側にとって)とても秀逸な縛りなので、恐らく天才なんだと思います。「満額出したくないぜ!」って意気込みを感じました。

無理やり「感染症対策」で使わせようとした結果

ここまでは、「本来の雇用調整助成金」の話でした。要は「感染症対策として全く機能しない制度」だったわけですが、これを何を思ったのか「事業者は雇用調整助成金を使って欲しい」と国民に向けて発信してしまったために、制度のキメラ化が始まっていきます。

まず以下のような内容に制度が変更になりました

・100日上限の撤廃
・解雇等を行わない場合、中小企業9/10、大企業3/4に助成率を引き上げ
・計画の事後提出可
・被雇用保険者以外も申請可
etc.

……細かく言うと他にもありますが、要は

もう全く違う制度

と言っても過言ではないという事です。
また、東京都に関しては3月24日に外出自粛要請が出ているにも関わらず、この制度の切り替えについて4月1日を境界ラインとし、3月31日までと、4月1日以降の申請様式が別になるという面倒もあったり、変更後の制度に対応するように様式を変更したり、様式が多いという批判を受けて既存の様式を削除したりと、どんどんキメラになっていきます。

キメラになるだけならまだしも、現場が変更に対応しきれず、不明点について問い合わせても現場ですら明確に回答できないこともしばしば。回答を貰って準備しても、聞く人によって全然違う案内をされるようなこともありました。

様式に記入する項目についても、用語が理解しにくく、数字部分に関して様式が自動計算になったりもしましたが、基準となる入力値記入欄に一体何を入力すれば良いのか?という点で分からない部分は依然として残ったままです。これではいくら自動計算にしたところで、正しく書類を作れている実感がありません。

自動計算にしても、100日上限の縛りが撤廃されているのに計算式に盛り込まれていたり(最終的な算出には使われていない)正に付け焼刃。

もっと言うと、4月8日以降の助成率が、解雇を伴わない場合中小企業に於いて100%となり更に資料が形骸化。昨日の安倍総理の会見内容が実現して15,000円/日相当まで助成金の引き上げを行うのであれば、この金額を超えない限り、ざっと見すべての計算式は形骸化します。

そもそも、100日上限を撤廃し、受給率を100%にするならば、「短時間休業」と「全日休業」の申請様式は分けるべきで、全日休業の算出様式に関しては、休業期間と従業員リスト(実際に支払う金額と休業日数を伴うリスト)だけあれば良いはずです。

結局ここから上限金額と実質助成金額の計算を挟む必要が出て来るかもしれませんが、書類を作成する側からすれば、入力項目が至ってシンプルになると思います。

別の制度を作った方が良かった

最初に書きましたが、結局、ここまで制度を変えるのであれば、最初からシンプルな給付金制度として作ってしまった方が、支給側、受給側、全方位に向けて優しかったと思います。本来の雇用調整助成金の制度も(善し悪しはともかく)グチャグチャになってますし、現場も申請者も被雇用者もグチャグチャなうえ、給付も遅く、他の新設した制度に比べてスピード感が感じられないという印象です。

もちろん予算的な問題があったのかもしれません。新しい制度を作ってこれから予算を決議するよりは「元々予算を持っていた助成金の範疇で対応した方が初動が早い」と考えたのかも知れませんが、そんなメリットなど跡形もなくなって認識できなくなるくらい、あまりにも現況にそぐわない制度でした。結果、対応が混沌とし、緊急事態宣言が解除されるかも?となっている今でも、混乱は収まる気配を見せません。

更に、昨日の安倍総理の会見にて「被雇用側からも申請できる制度を設ける」という話も出ており、個人的には更に困惑しています。

「え?結局、事業所側は申請した方が良いの?雇用者に任せた方が良いの?」

という感じです。
雇用調整助成金は、昨今の助成金の性質を踏まえて「後払い」となるため、従業員には先に休業手当を出さなければなりません。言い方は悪いですが、少なくとも私は雇用調整助成金をアテにしている部分もありますし、今後も助成金ありきで動いています。ここで申請窓口を2WAYにして「どちらを適用するのか?」という話になれば、これから申請する事業者の動きも鈍るのではないでしょうか。

雇用調整助成金の4月分の申請が受理されているかどうかも分からないこの状況で、また5月分を先払いしなければならない事業者は「だったら休業手当は払わずに従業員に申請して貰おう」とした方がリスクが低く、あまり良い結果に働かない気がしています。従業員から申請する給付金は、給与の8割程度になる予定とのことですし、シフト制で働く方々は、給与証明も難しく、例えば給与基礎額を過去3ヶ月程度の平均値にするなど、あまり有利な算出式で支給されないのではないか?という懸念もあります。

従業員からしてみれば、制度を利用しようとしない事業者に対して、自分で申請したいと思うかもしれませんが、個人的には事業者がまとめて申請する方が処理する行政側の負担も少ないですし、合理的であると考えています。問題は、様式の難解さおよび申請の煩雑さかつ、対応の遅さ、混沌さ(なんか全部ダメですね……)で「事業者が申請したがらない」という状況が生まれていることです。

故に、政府がするべきことは、ヘタに継ぎ足し継ぎ足しして雇用調整助成金のキメラ化を推進するのではなく「雇用持続化給付金」とでも銘打って、簡易な申請で受給できる制度を作る事だったと思います。

なぜ雇用調整助成金に執着するのか……その執着が良い結果を生んでいるとはちょっと考えにくいというのが私見です。

まだしばらくの間、感染症の脅威は経済に影響を与え続けるかと思います。雇用持続(被雇用者の収入確保)という課題に対して、もう少し分かりやすく、そして利用しやすい制度が出てくることを心から願います。
(被雇用者申請の給付金が利用しやすいものだと良いですね)

余談:実態が分からないのが一番不安

色々書きましたが、とりあえず事業者側は与えられた制度で凌ぐしかないため、少なくとも作業の迅速化を頑張って貰いたいと思うと共に、申請状況の透明化も頑張って欲しいと思います。どの助成金も給付金もそうですが、自分のステータスが分からないことが一番不安であるため、WEBなどで逐一状況を確認できるものを組んで欲しいなと思います。

個人的には郵便の追跡システムのイメージで、申込の整理番号さえわかれば、いま申請がどの状況まで進んでいるか、もしくは止まっているかがリアルタイムに近い形で確認出来たら良いと思います。

雇用調整助成金は今からでは難しいかと思いますが、今回あった休業協力金や、持続化給付金、一律給付金などはWeb申請を行っているので、チェックもWebを使っているハズです(全部出力してアナログで確認とかないですよね……)であれば、提出資料をチェックしたらその証跡としてWeb上でチェックして、そのまま進捗に反映→申請者が確認できるようなシステムを組んで貰いたいなと。一回テンプレとなるシステムを作ってしまえば、他の申請に転用可能かと思います。色々な方が居ますので窓口申請を無くせとはもちろん言いませんが、こういうご時世ですから、もっとITに強い政府になって欲しいなと思います。

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