【江戸ことば その5】切刃(きっぱ)を廻す
≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。
【その5】 切刃(きっぱ)を廻す
刀の柄に手をかけて引き抜こうとする姿勢。
太刀は刃を下に向けて腰に帯び、
抜く時は切刃を上に回したのでいう。
(…時代劇の立ち回りが鮮やかに思い浮かぶ)
文例・明和6年(1769年)
「合点せにゃ切刃を廻すお部屋住」
2011年1月12日 Twitter投稿
動きが感じられませんか?
こんな言葉を見つけると、うれしくなります。
例えば、こんな感じで使うかな。
一里塚の大杉の陰から、ぱらぱらと出てきたのは、宿場で因縁をつけてきた米津左内と、その連れ立ちだった。
絡んできた左内を躱しただけで、恥をかかせたつもりはない。だが、左内は血走った眼で、すでに刀を抜いている。
吉左衛門は独り旅、周りに人目はない。命のやり取りになったのは不本意だか、やむを得ぬ。
切刃を廻し、腰を落とす。吉左衛門は、じりじりと間合いを詰めた。
写真は、村の社。
2012年、父撮影。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?