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【江戸ことば その30】左様ならば

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「左様ならば」

それならば。それでは。
武士言葉では「左様御座らば」という。
別れのあいさつ語にも。

(…「さようなら」の生い立ち。「さらば」も「さ(左様)あらば」で同じですね)

文例・寛政3年(1791年)
「さようならば、御きげんよう」
2011年2月18日 Twitter投稿

「後で悔やむんじゃねぇか?」
草鞋を履いて立ち上がった喜平に、巳之吉は追いすがるように声を掛けた。このままおせいと逢わずに帰阪するのは、あまりではないか、と巳之吉は思ったのだ。幼いころから、おせいのことはよく知っている。吉野町の長屋で、ひっそり独りで喜平のことを考えているに違いない。
「気遣いはありがてぇ、だがもういいんだ」
背を向けたままだった喜平は、振り向きざま「左様ならば」と一言、頭を下げて笠を手に歩き出した。

写真は2011年8月、立秋の実家です。
左の桜は、去年枯れてしまいました。父撮影。

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