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転勤が回覧板に 赤坂の話がしたい 28

 赤坂で、マスク姿の男性を見かけた。町会仲間の利根川さんかな? しかしマスクで、顔がよく見えない。小さな声で「利根川さん?」と言うと、男性が振り向いた。返事がなかったら、知らぬふりで立ち去るつもりだったが、ああ間違ってなかった。よかった。
 「神戸さん、福岡に戻るんだってね」
 利根川さんが言った。
 「ご存知でしたか?! 誰から聞きました?」
 「回覧板に出てたよ」
 「は???」

 都会の赤坂でも、「中ノ町・新四」町会では、回覧板はお店をやっている自営の人には回っていく。ただ、僕のように独り暮らしの人間には、回覧板を郵便ポストに入れてもいつ見るかわからないし、そもそも僕ら自身が次に渡す家も知らないから、回覧板は回っては来ない。連絡は、投げ込みチラシのような形で届く。
 夜、居酒屋の「花丸」に行ったら、カウンターの上に、回覧板があった。
 「何か、出てるらしいんだけど」と聞いてみたが、店主の玉置さんはまだ見てなかった。厚紙の回覧板を開くと、A4の一枚紙が挟み込んであった。
 一番下に、なんと「神戸金史さん、ありがとう!」という項目があった。
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 これまで赤坂中ノ町・新四町会に多大な貢献をしてくださいました、RKB毎日放送(本社・福岡市)の神戸金史さんが異動となり、九州に戻る運びとなりました。これまでの町会へのご尽力に感謝申し上げます。氷川祭に今後も参加なさるとうかがっています。
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 最後のフレーズ。「福岡に帰っても、また来いよな」という町会からのメッセージだ。動画で短く記録してみたので、ぜひぜひ見ていただきたい!

 玉置さんをはじめ、「花丸」の常連からは、送別に喧嘩札をいただいた。神輿を担ぐ際に、お江戸の火消が首から下げたという木札。祭りにつきものの喧嘩、この札を下げることは「喧嘩に応じるぜ」という意気を表したという。
 高そうな黒檀の喧嘩札、表には「赤坂 神戸」と彫り込んである(地名が2つ並んでいるようにも見える)。
裏には、トンボ柄に町会名。トンボは、前にしか飛ばないことから「勝ち虫」とされ、縁起よいと江戸で好まれた柄だ。
 回覧板に喧嘩札、どちらも卒業祝いか。とてもありがたい。どちらも、赤坂氷川祭にはこれからも参加しろ、という指示でもあると受け止めた。
 今年の祭りは、さすがに中止と決まったが、来年9月にはまた赤坂に来ねばなるまい。

(2020年6月24日 FB投稿)

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