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【江戸ことば その14】膳を据える

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「膳を据える」

女の方から肉交を許す態度に出るたとえ。

(…「食わぬは男の恥」の据え膳。
迷ったんですが面白い言葉なので発信)

文例・天保8年(1837年)
「お吉めがおかしな眼付をしたり、何かしてお膳を据ゑるから、箸を取らねえのも変だと」
2011年1月24日 Twitter投稿

「据え膳食わぬは男の恥」という言い回しがありますが、「据え膳」とは何かと考えたことがありませんでした。
膳を据えるという言葉が先にあった……。
女性から誘われた状況を意味するものだったとは、驚きでした。御膳に対して「箸を取らねぇのも変だ」っていう言い方も面白いですね。

今年は豊作だったので、村の鎮守さまに丁寧にお礼を申し上げなければならない。祭りの準備に、村人は心浮き立っている。
やしろの宵宮は無礼講、男と女が出会う夜だ。
去年は実乃吉と朝まで過ごしたが、夜が明ければそれっきり。おせきの方だって、何だかしっくりこなかったので、気にしていない。

宵闇の中、社の裏の森で腰を下ろすと、清吉が近寄ってきて、隣に座った。
嫌な若衆ではない。
左手を伸ばして、清吉の膝の上に置いた。
ここからどう膳を据えていこうか、おせきは頭をめぐらせた。

写真は2019年11月、村の小さな神社を自分で撮ってみました。

14膳を据える


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