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【江戸ことば その6】手活(ていけ)の花

≪ 2011年、Facebookへの投稿 ≫
講談社学術文庫の『江戸語の辞典』(前田勇編)は1067ページもある大著で、約3万語を収録しています。
私は4年前(注:2006年秋)に「端から端まで読み通してみよう」と一念発起し、4か月半かけて何とか通読しました。今も持ち歩いては、「江戸の暮らしが目に浮かぶ言葉」「現代語の知られざる語源」「色っぽい言葉」を楽しんでいます。
1日に1語程度、ツイッターで紹介してきた江戸語を、Facebookのノートにまとめて採録してみます。
なお、カッコ内は私の感想・コメントで、編者の前田勇さんとは関係がありません。

「手活(ていけ)の花」

自分自身で活けた花。
転じて妾。

(…その男尊女卑思想を厳しく非難します。が、あまりに艶やかな言葉!
うらやま…以下発禁)

文例・天保9年(1838年)
「新地で音に聞こえた唄女衆(はおりしゅ)を、毎日側へ引き寄せて、手活の花にして居りゃァ、是程粋な咄(はなし)やァあるめえ」
2011年1月13日 Twitter投稿

これは、文例がとてもいいですね。どこかの旦那の噂話でしょうか。
出典は「春色雪の梅」。江戸の男女の恋愛を描いた「人情本」と呼ばれるジャンルの本です。

「手に取るな やはり野に置け 蓮華草」という句があります。遊女を見受けしようとした人を諫めたものと伝わります。色町においてこそ、遊女は咲き誇るのだ、と。
完全な男社会の言葉ではありますが、「手活」とうっすらつながっているような、「手」の語感です。

旦那の遣いで幸吉が妾宅にやって来るのを、美代は内心楽しみにしていた。
五十すぎの旦那にしか見せないこの化粧、いくら「手活けの花」だって、街歩きもさせてもらえないじゃ、気も塞ぐ。
そんな気持ちを、幸吉が分かってくれていたからだ。
だが、心の底に咲く気持ちを旦那に知られるわけにはいかない。幸吉を寄越してくれなくなる。

写真は2007年8月、裏庭に生える藪ランを父が撮影したものです。

20070818裏庭の藪ラン


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