見出し画像

福岡と赤坂の縁 赤坂の話がしたい 10

 ここまで書いてきたのは4年前、赤坂に来てすぐの、たった数時間の話。なのに、今僕が行きつけにしているお店は、すでに名前が出てきている。
 みんな、顔見知りの町会員にはサービスしてくれる。「うちにおいでよ」と手を挙げてくれた人の店をぐるぐる回って、僕は単身東京で生き延びてきた。

 高齢の女性が長年やってきた美容室は、その名もなんと、「タカシ美容室」という。息子のタカシさんに代替わりして、店名も替えた。「赤坂に、タカシさんて人います?」と聞けば、この店に連れてこられるのは間違いない。それこそ「タカシでわかります!」なのだ。
 梅雨になって、コインランドリーからの帰り、乾燥させた衣類が濡れてしまったので、3万円の洗濯機を買った。それをタカシさんに言ったら、「何だよー、買っちゃったの!」とがっかりされた。タカシさん、すみません。だけど、もちろん散髪はタカシ美容室でと決めている。

 9月、秋の大祭では、山車の一つの先導をTBSの小谷さんから任された。赤坂氷川神社には、震災と空襲をまぬかれた山車が、お江戸で唯一残っている。中ノ町の半纏は、赤坂氷川神社の「巴」の社紋入り。江戸火消しの装束で、山車を運び、神輿を担ぐ。

 強面なのに人のいいカズマは、運送会社を経営している。赤坂には20あまりの町会があって、カズマの会社がある「福吉」町会は、元々は福岡の黒田藩と熊本の人吉藩の藩邸があったので、福吉の名があると教わった。「赤坂と福岡は縁がある」ということらしい。
 それからもカズマとは「紫月」や「花丸」で飲むことになる。「俺が連れていかなければ、神戸さんはこんなに赤坂には入れなかった」が口癖だ。

(2020年5月23日 FB投稿)

次話 やまゆり園事件 赤坂の話がしたい 11

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?