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あしらの俳句甲子園2024その10 決勝戦の風景

 思い返せば2023年、夏の俳句甲子園にボランティアとして参加していた。単なる北海道地区の予選の受付だけど。
 ピンクの俳句甲子園と背中に印刷されたTシャツに違和感を覚えながら3校5チームの戦いを見つめていた。

 松山の本戦で旭川東高校が予選から敗者復活で勝ち上がり開成高校と戦い準優勝した事を俳句仲間と熱く語り合った。
 予選会場には新聞社もテレビ局も声をかけても来ない。北海道の人は俳句に興味ないのかと軽い絶望を抱く。指導者不足や認知度の低さから俳句を詠もうとする高校生は周囲には見かけず、俳句甲子園を目指す高校生の数は増えない。一人では目指せないのも俳句甲子園ならではである。
 私の高校時代に俳句甲子園あったらなぁなんて思ったりもしていた。でもきっと人は集まらなかったろうな。
 俵万智さんの歌集「サラダ記念日」が爆発的にヒットをしても、凄いねー沢山売れてくらいの感想しか高校生たち(文芸部でも)からは出てこなかった。北海道で短歌と俳句・川柳は区別しづらいのかごっちゃになって、私が俳句をやっているのと言えば「サラリーマン川柳面白いよねー」と言われる。
 プレバトが放映していても、興味のない人に「夏井いつき」の名前は未だに無名なのが現実である。
 これが北海道の文化としてのレベルなんだろうか?

 決勝戦に立つ。
 実感が湧き上がって来ない。 
 ラストはチームくじら雲の胸を借りて戦うが、勝ち目は無い。
 壇上に上がり白チームの席に座って会場を見渡した。
 これが夏に行われた俳句甲子園、旭川東の見た景色なのと思う。私が羨ましいと思っていた俳句甲子園の壇上から見た客席を見渡す。視力はメガネをかけても0.6くらいなのでぼんやりとしか見えないけど。
 沢山の人、遠くに地元のカメラ、やのちゃんの司会、嘘みたい。

 最初から最期まで勝てるなんて思ってなかった。勝てたらいいなーくらいは思ってたけど実際、決勝まで上がれるなんてラッキー過ぎる。
「ここまでで本当に満足です。ありがとうございます」と戦う前にお礼を述べた。

 「前回優勝した時もこの赤チームでした。このメンバーで連勝します!」
 チームくじら雲のいさな歌鈴さんが軽やかに宣言して、何故か蝦夷のきのこチームではマイクが私に回ってきた。
 「道後温泉に行くつもりだったので勝ち上がるのは意外なんです。意外に勝っても良いと思います」
 少し会場に笑って頂いたところで決勝戦が始まる。

 先鋒戦、

 下描きをはづれて雪の降る積もる(くじら雲)

 昏々と胎児に還る雪の夜(蝦夷のきのこ)

「下五が特徴的だと思いました。雪に対して当然の降る積もると二つの動詞を下五に配した意図を教えて下さい」
 「降る、積もるは時間経過だったり勢い動詞二つを畳み掛ける事により表していると思います」
 「雪は降ったら積もるものなんです。当たり前の事を言っても意味は無いと思います」
 「内地もんにとっては雪は貴重なものなのですね。積もるほどの雪であったと言いたかった」
 「降る積もると動詞を畳み掛ける事により勢いが出るのですが時間経過に幅を詠むという事に対して適切だったのでしょうか?」 
 「この景は時間の幅を出す為に動詞二つを重ねる事にしました」

攻守入れ替わり、
 「こんこんとは静かな景だと思います。こんこんと胎児に還る上五中七に対して雪の夜の季語が動くのでは無いかと思いますがどうでしょうか?」
 「前に雪うさぎが優勝した時に柊月子さんが雪の夜は温かいのだと言ったら会場がザワザワってなりました。雪が降ってない日はキンキンに冷えているのですが、雪の降っている日は静かで暖かいんです」
 「こんこんと胎児に帰るのこんこんに夜の気配がします。夜は言わなくても良かったのではないでしょうか?」

 赤二本でチームくじら雲が先鋒戦を取る。

 岸本先生の講評である。
 「降る積もるとは、降っている雪と積もっている雪と空間的に読みました。空中を舞っている雪ともう既に地面に落ちて止まっている雪。 予めあった雪のイメージを外れて降ったり積もったりしている。下書きを外れて色を塗っている筆と実景に即した解釈も出来ると思います。何が外れたかと言う塗り残し余白がこの俳句の面白さだと思います。赤の句は良くまとまっています。胎児に還るイメージ、こんこんと雪が降るイメージ、言葉と言葉が収斂気味で、何処かでもっと破れた方が言葉がもっと力が出ると思います。破れがあり余白が出た対比で赤の句に旗を上げさせて頂きました」

 改めて読み直しますと、下描きを外れてと雪が重なるのがやはり面白く感じる句です。


 中堅戦

 雪しんしん余命半年を演ず(蝦夷のきのこ)

 雪しづか本をひらけば丘のよう(くじら雲)

 「雪と命の取り合わせは良く見ます。ドラマの役者が演じているのかと思いましたが如何なのでしょうか?」
 「札幌の演劇、斎藤歩さん事を詠みました。余命半年と告げられながら、仕事をまだ続けております。余命半年と言われながらも演劇を続けている。その事を読みました」
 私の俳句はザ 演劇オタクの俳句でもうただ単に大舞台で札幌の演劇を宣伝したい愛で舞台で読み上げました。札幌の演劇シーズン面白いですよ。是非見にきてね(宣伝)。
 「余命半年と言う役柄ではなくて、余命半年と言う期間を最後まで演じると言う事ですかね」
 「そこに関しては余白残しているのであります。余命半年を期間を演じるているのか、余命半年の役柄を演じているのか、余命半年と言う状況を演技しているのか色々と余白残した方がいいのでは無いでしょうか」
 「両方の解釈が出来るのはわかりました」

 攻守入れ代わり、きのこさんの質問。
 「雪静かと読書の静かな光景ですが、しずかと三音使う必要があったでしょうか?」
 「静かな世界感を全体として表しているので静かは必要だと思います」
 「中七の開けばについて伺いたい思います。どう言うふうに読むべきなのでしょうか?」
 「描写は綺麗に表現出来ていると思います」

 旗が上がる、赤二本。チームくじら雲!

 五十嵐秀彦先生かの講評で
「前書が無かったからね、ちょっと残念。本を開くのが美瑛のような。とても上手に出来てました」

 大将戦

 獅子吠ゆるや雪の震えて雪へ降る(チームくじら雲)

 壁越しに雪の厚みを聴く当直(蝦夷のきのこ)

 ディベート無しで白に二本旗が上がります。

 岸本先生から講評を頂きます。
 「積雪厚みを感じます。当直をしていて何時間も部屋に居てずっと雪の気配を感じ続けている句でだとわかります。赤の句はライオンのうなり声で雪が震える。遊び心の句として鑑賞した方が良いのかなと思いました」

 準優勝の弁です「はい、北野きのこです。一昨日欠航便を見送ってでも別な空港へ走ってここに来る事ができて良かったです」

 二連覇をしたチームくじら雲の山本先生「とても嬉しいです。暖かく見守って頂きありがとうございます。昨日も夜11時までカフェで頑張ってました。譲らない部分があって早朝起きて頑張りました。真剣な俳句の遊びが出来てよかったです」

 元旦震災がありましたが社会を回してお金を生み出義援金送る。そうして社会を元気にする。大勢で俳句を楽しみその楽しさを伝えられたら。
 準優勝出来たのは、そんな楽しさを伝えるレポーターとしてなのかなと思えました。

 チーム蝦夷のきのこ、困難を乗り越えて準優勝!
 本当に夢みたいでした。

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