古本屋日記 店主誕生

豊平川には様々な生き物たちが生息している。鮭が登って来るくらいに生態系は豊かな幅をもっている。ある種類の生物たちはもともと北海道の在来種ではなく、移住した者たちにくっついて来た外来の生き物だ。荷物の隅っこにそっと隠れるようにして本州からやってきた妖怪たちもいる。荷物が地面に置かれるやいなや足早に逃げ去り森に姿を隠したのだ。そんな移住者してきた子孫の河童がいた。豊平川泳ぎながら漂っている食べ物を食べて生きていた。毎日毎日どんぐらどんぐら泳いで夜の帳が下りて姿が暗闇に紛れ込むと河から上がって岸に腰掛けて休みながら街の明かりをぼんやりと眺めたりした。
ついグッスリ寝入ってしまい、朝の光が肌に当たった。あたりを見回し、河に入らなきゃなと慌てながら火照りつある肌を撫でながらぼとぼとと水の中に足を入れようとした。
その時である。
「なんだこれは!」
河べりに落ちている雑誌はへにゃへにゃになってはいるが女子がシナを作った姿が見てとれた。女子は分かるが周囲の印はよくわからなかった。河童は顔を赤らめながら「もっともっと何が記されているのか知りたい!」と強く思った。えろというパワーが偉大であると言うのは昔から言われている話しではあるが、人間だけではなく妖怪にも通じる話しであったのだ。朝の微かな日差しを頼りに河に投げられている印刷物を日々拾い集め日本語の猛勉強をした河童は、マシな本が捨てられているとこっそりと何処ぞに売ったりなどして小銭を稼ぎ、さらにさらにと本を読み続け、いつしか本が溜まり、家を借りて僅かな本の売り買いから始まってから早11年以上、人間の女子も若干萎びておったが嫁を取る事も出来、現在の古本屋となっておりまする。

今もなお、早朝は河に少しだけ水浴びにし通うほどでございますが、びじゅあるは通常の人に化けており、人間界で普通を装って生活しております。

#小説

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