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『数学ギョウザ』

 中2の夏。
 怪しげな店で数学ギョウザを食べたら、女の子の頭の上に数式が見えるようになった。その数式を解くと、どうやら僕を好きになってくれるらしい。

 女の子数名で試してみたが、効果は確かだった。
 ただ、佳奈の頭の上の数式だけは難しく、どうしても解けない。佳奈はとびきりの美人で、僕は意地でもその数式が解きたかった。

 それから必死に数学を勉強した。
 数学ギョウザで見える数式は消えてしまったが、佳奈の数式だけは確かに覚えていて、僕は長い時間をかけて数学に向き合った。

「今日はフィールズ賞の授賞式でしょ? 机に向かってないで準備したら?」
「んん。けど、僕には解きたい数式がまだ一つ残ってるんだ」
「なら好きにして。ところで、あなたの頭の上の数式は、中学2年の私が解いたから」
「え? まさか。佳奈も数学ギョウザを?」

 ならば、この僕の感情は数学ギョウザの効果──? 

 いや、どちらでもいい。
 僕は目の前の数式を解き続けるだけだ。




(おしまい)

僕の書いた文章を少しでも追っていただけたのなら、僕は嬉しいです。