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寄席普及の会に行ってみたら

 最近の趣味は「落語」だ。全然詳しくないので、先に言っておく。加えて、ここで落語の感想は書かない。だって詳しくないので。そういうことは、詳しい人に任せりゃいいのだ。
 でもね、ここ1年で2か月に1回程度は、落語を見に行っている。ああ楽しい。
 落語を見に行く中で、最近気が付いたことがある。

 聞きに来ている人も、面白い人が多い、ということだ。
 職業柄?ついそういうことばかり気になって、周りを見てしまい、今日はどんな人に会えるかな、と思いながら席を探す。

 会場の中で、わたしの席は真ん中あたり。両隣に人がいるわけだから「できれば隣の人は、同世代くらいの女性だといいな」と願うのだが、実際なかなかそうはいかない。

 わたしが席に向かうと、すでにその隣にはおじさんらしき人が座っていた。ああ、今日も残念だ。小さく頭を下げて、隣に座る。どしっと座るおじさんの顔は見えないが、堂々と腰を据える感じは、会場に慣れている風格すら感じる。

 しばらくすると、左隣にも人が来た。
 
 おじさんだ。
 しかも、右のおじさんよりもひと回り大きい。

 こればかりは仕方ないが、意外と幕が開くと気にならなくなるから不思議。今回も楽しく、進んでいく。

 左のやや大きめのおじさんは、小さなメモ帳を携え、時々何かメモをしている様子。面白いネタとか、言葉とか何か書くのだろうか?
 今回は「寄席の普及」が目的の会だったので、普通の落語会などではなかなかない、最初の一番太鼓や、出ばやしの説明などもあった。
 知識としてメモしているのか?熱心だなぁと思うが、落語の途中だけでなく、噺家のまくら(雑談みたいなもの)の中で、時々「今の流れで、一体何をメモしたのか」と思うこともあった。
 人それぞれである。

 そんな中、皆が爆笑した瞬間があった。わたしも笑った。両隣のおじさんも笑った。
 そして気が付いた。

 右のおじさんは、おばさんだ。

 かわいい笑い声だった。むしろわたしよりも。
 なんか、ごめん。
 なかなか瞬間判断は難しいなあ、と思う。年を重ねると、性別さえもあやしくなるのだ。気を付けねばいかん。

 そうしたところで、前の席にいるおじいさんにも目が行った。帽子の隙間から、白髪がのぞいている。気になったのは、その帽子だ。
 ハイブランドの帽子をかぶっているのだ。かっこいい!
 年齢を重ねた人が、格好よくハイブランドを身に着けていると、素敵だなぁと思う。ハイブランドのキャップを被って落語とは、粋なものだ。

 しかし、よく見るとその柄は、ハイブランドのものとは若干違うことに気が付いた。あれ?すごーーーくよく似ているけど、よーーーーく見ると違う気がする。恐らく、遠くから見ればわからないが、なんせおじいさんはわたしの目の前に座っているのだ。わたしは、柄の違いに気が付いてしまった。

 ううむ、でも本当に偽物なのか?(ってこれはこれで変な表現)と思い、つばの方まで見ようとすると、帽子のつばには明らかにそのブランドを象徴するカラーリングが施されていた。
 いや、これ本物?いや偽物?と思った先に、そのブランドで時々見かけるハチの刺繡が目に入る。

 このハチ、めちゃくちゃ弱そうじゃん!!

 このハチで、ブランド物にも大して詳しくないわたしでもわかってしまった。これは偽物だ。残念ながら。本物は、もっと強そうなハチなんだもん。おじいさんの帽子に付いているハチは、その辺のミツバチである。
 本物と比べると、ミツバチとオオスズメバチの女王くらいの差があるだろう。

 面白いなー。偽物のハイブランド。いや、ハチ。
 
 そんなことを思っていたら、舞台では「はっつぁん!!(八つぁん)」と落語によく出てくる登場人物の名が呼ばれた。

 「一目上がり」でした。

 ちんとてしゃんしゃん♪ また落語、行こう。

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