018 ハムスター その2(真夜中の、りこちゃん)
闇のなかを、高速で移動する物体がある。
それは、うちのハムスター、りこちゃんだ。
ハムスターと言えば、寝ているイメージかもしれない。
たしかに、昼間はイモムシみたいに丸くなって、あるいは、びろんと伸びて、くぅくぅ寝ている。
ときどき、水を飲んだり、エサを食べたりするために起きるが、動きはのろい。ぽてぽての丸いからだで、のそのそ動く。よく野生で絶滅しなかったなあ、と感心する。
しかし、夜のハムスターは違う。
りこちゃんは、だいたい夜の十二時くらいから活動を始める。
のそのそ動きから一変して、夜になれば、ごーーーっと滑車をまわし、しゅたっと飛び降りると、ものすごい速さでケージ内を駆け巡る。まるで別ハムである。
とにかく動きが素早い。
トンネルのそばにいたかと思ったら、滑車をまわしている。部屋を暗くしているせいかもしれないが、速すぎて目で動きを追えない時がある。
深夜一時から三時すぎくらいまでが、りこちゃんのゴールデンタイムのよう。この調子で、せわしなく動き続ける。
野生のハムスターは一晩で、二十キロも三十キロも走るそうだが、この子を見ていると、ほんとうだろうな、と思う。
夜にこれだけ激しく動けば、昼間ずっと寝ているのも当然だ。
空が白み始めて、カラスの鳴き声が聞こえてきたら、りこちゃんは活動をやめ、おうちに戻って行った。
さて、なぜ、こんなにりこちゃんの活動に詳しいか。
それは、一晩中、眺めていた日があったから。
原因は、夫がもらってきたお茶である。
京都の有名なお茶屋さんのものらしいのだが、封を開けてから半年近く経っていた。缶入りだけど、湿気っているかも。もったいない、と昼間にがぶ飲みしたのがいけなかったようで(一リットルは飲んだ気がする)、目がさえて寝ようとしても、どうにも眠りが浅い。
本でも読むか、と起きることにしたが、りこちゃんのいる部屋から、ごーーーっ、しゅたっ、かさかさ、と聞こえてくる。
様子を見に行くと、気付けば、明け方まで眺めていた。
りこちゃんは、現在、生後7か月くらいの若ハムなので、元気いっぱい。
朝、ケージをのぞくと滑車がひっくり返っていることが、ときどきある。自分でわざとひっくり返して、その下にもぐり込んで寝ている。別荘のつもりなのかも。
夜中のハムスター、すごいですよ。ほんとに。
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