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不動産投資のお話 -「生産緑地の2022年問題」

金澤幸雄です。

最近、「生産緑地の2022年問題」が話題になっていますね。
不動産投資に興味がある方はすでにご存じとは思いますが、かねてからのコロナ禍とこの2022年問題によって、さらなる都市部の不動産価格の下落、賃貸だと物件の空室増加などが業界内で懸念されています。

生産緑地とは、一定の条件のもとで税負担の軽減などが受けられる、都市部の農地や山林のことです。
この生産緑地制度は、今から29年前の1992年に、都市部に農地を残す目的で、三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)の市街化区域を中心として始まりました。
向こう30年の間は、生産緑地の所有者は固定資産税の軽減や相続税の納税の猶予などの税制優遇という恩恵を受ける代わりに、勝手に農業を辞めたり土地を売買したりできないという制度です。

2022年問題とは、この生産緑地制度が期間満了を迎え、税制優遇を受けられなくなる(=農業を営む義務がなくなる)2022年に、当該の土地を手放す人が急増する可能性を指しているのです。
1992年当時30歳だった人も2022年には60歳を迎えます。生産緑地の所有者の高齢化、後継者の不足は紛れもない事実であり、それに加えて税制の優遇措置もなくなり、代わりに固定資産税が跳ね上がるといったら、土地を手放して農業を引退しようと考える人が多く現れるのはある意味当然といえます。

こうしてもし実際に2022年問題が起こると、売りに出された生産緑地法指定解除の対象となったエリアに新築住宅、マンションなどが乱立し、やがて過剰供給となり、都市部の不動産価格の暴落、物件の空室増加を招く恐れがあります。また、生産「緑地」ですから、住宅建設により緑が失われるといった弊害も考える必要があります。

実際に、ハウスメーカーやマンションデベロッパーの中には、元・生産緑地が大量に売りに出される可能性を期待しているところもあると思います。
しかしながら、農地に指定されていることからもお分かりいただけるとおり、都市部の中心には当然生産緑地はありません。
東京都を例にとると、生産緑地法指定解除の対象となっている地域はほとんどが市部(八王子、町田、立川など)の、それも最寄り駅から離れた地域です。
さらに、農林水産省は、2018年から他の農家や企業などに生産緑地を貸しても、その土地の持ち主が税優遇を受けられるとした「都市農地の貸借の円滑化に関する法律」を施行しました。

結論として、2022年問題の影響を受ける可能性が高いのは、郊外かつ駅から距離がある住宅でしょう。反対に、23区など都心部の駅近物件などの希少価値は、この問題では損なわれにくいということが言えそうです。

金澤幸雄

Photo by Beth Macdonald on Unsplash

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