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いますぐ、期待するのはやめよう。ー不登校児の母から、突然の在宅学習のポイント

3月、新型コロナウイルス感染症の拡大防止で、臨時休校が決まりましたね。そこで、中1娘による「えっ、今日学校行かへんの?」自主的臨時休校(別名:不登校)を小学校4年の終わりから3年間ほど体験して現在にいたる経験者として、少しだけ、アドバイスを送らせていただきます。


▶いますぐ、期待するのはやめよう。

オンラインの学びコンテンツは、この数年、ものすごい充実ぶりです。だからこそ親は期待してしまいます。「ああ、いっそ学校に行くよりも、在宅の方がむしろ、質の良い学びをしっかりできるんじゃないかしら!」って。

そして親は、こうも期待します。「私も忙しいし、どうせこどもが家で留守番するのだから、ちょっとくらい家事もやってもらおう。洗濯物畳むのと、掃除と、ちょうど食器洗っておくのも教えるタイミングかも?」

その結果、「じゃあ、頑張ってね!」と玄関を閉めた後から1日中、「ただいまー、と家に入った瞬間、こどもがキラキラした目で『あの動画で分数がわかったよ!』と言い約束の4ページきっちり埋めて丸つけもしたドリルみせて、しかもソファに広げていた洗濯物が畳まれている!」なんて光景を夢見たりしてしまいます。

経験者として言います。いますぐ、期待するのはやめましょう。ほとんどの場合、お互いにしんどくなるだけです。


▶①家にひとりでいると、そんなに勉強しない

セルフマネジメントは、相当難しいです。たとえばあなたは、会社から来るなと言われた翌日から、3週間にわたり、オフィスのデスクに9時―17時半で座っている”以上”の仕事量を、確実にこなせますか?

大人が会社でFacebookをしないのも、こどもに学校でゲームをしないのも、禁止されているからです。そして自宅には、そんな強制力はありません(あなたがこどもの隣で睨んでいるのではない限り)。

「9時になったら始めよう♪」と思っていたけどマンガ読んでて時計見たら11時近くなってて、うわぁいっけねえと猛然と頑張りだした瞬間に家族から「ちゃんとやってんの?」と電話が入り、なんかモチベーション下がったから気分転換とTVつけたらなんとなく見ちゃって、1時前にあかんあかんと昼食のラーメンつくって思いっきりこぼす。自宅は、そんな罠だらけです。

・いわゆる勉強の「量」は、学校にいるときの1/10くらいになる。
・いわゆる勉強の「質」は、そんなに変わらない。

とすると、結果は、0.1×1=0.1。イメージしていたのの1割できていれば、かなり上出来だと思ってください。


▶②家事は、こどもの仕事ではない

そもそも近代の学校が始まったのは、小さいこどもを労働させる親からこどもを守るためという側面もあった、と聞いたことがあります。たしかにこどもは洗濯物を畳むことができます(保育園なら必ずやっていたでしょう)。でも、親のピラピラのパンツを畳むのまで、こどもの仕事でしょうか?

こどもの仕事は、「こどものその時にしかできないことをすること」です。こどもの発達段階にあわせて、その時にしか学べないことをするのがこどもの仕事だ……って、ルソーが言ってたような。ともかく一家全員倒れてたり、本人がしたがってたら別だけど、「たまたま家にいるじゃん、ラッキー」という理由で、本来自分の仕事である家事を押しつけるのは、やめましょう。

彼・彼女の、10歳くらいの命が、はじめて過ごす1時間を、親の後始末に使わせるのは、ルソー先生じゃなくても、しのびないっす。それに21世紀にもなって、「ほら。そんなだから、近代教育でこどもを家庭から救い出したんだよ」って近代のひとに言われるのも、ねぇ。

家事を頼むなら、洗濯乾燥機や食洗器やルンバがおすすめ。必ずやってくれるから。ストレスないっすよ。ね? もう21世紀だもの。


▶③そもそも、留守番してくれて、ありがとう

だいたい、一方で急な休校があり、他方で親は急に仕事の調整ができなかったので、やむにやまれず、心配ながらも留守番させることになった……というケースが多いのではないかと思います。準備期間なんて、なかったのではないでしょうか。

だからね、帰宅してみると、朝「今日は4ページやろうね」と約束していたドリルは1ページの途中で放り出され、オンライン講座は4日目から進んでおらず、畳む予定の洗濯物はそのまま広げてあるばかりかその上にお菓子の空袋がひっくり返って油じみが洗濯物についていて、「やってない」と言い張るゲームを家のインターホンが鳴るまでやっていた形跡がありすぎたり(スマホもコントローラーもあったかすぎやろ)……ってしててもね。

それでも、ぶじに生き延びてくれた。よかったよかったよかった。生き物だもの。それがいちばんの、そして唯一の目的だわさ。そう思い出して、ためらわずにハグしてください。散らかった部屋の真ん中で、「そら、できるわけないか! 掃除苦手な私の子やもの!」とゲラゲラ笑いながら。


▶モードを変える。「いつも通り」を諦める。

頑張る親御さんほど、理想と現実のギャップに打ちひしがれます。今回、お子さんに合わせて在宅勤務を始めてみる方もおいでかもしれませんが、「仕事をしようとしたら『ウン〇ー!』、仕事をしようとしたら『ねえねえ、これなーにー?』、仕事をしようとしたら『お腹すいたー』、仕事しようとしたら……」の繰り返しで、(これまた)思い描いていた1/10しかできなくて自己嫌悪……という方も、Facebook見ていると多そうでした。

あのね、そんなもんスよ。在宅勤務というのは、実は超高度なセルフマネジメント技術(マインドとスキルと環境)が必要で、いきなりやれというのは、会社勤めの人にいきなり起業しろというくらい、難しいのです。ほんと。そして、もしも十分な経験を積んだ大人のあなたができなかったとしたら、お子さんができるわけないのです。

思い切って、モードを変えてはどうでしょうか。いまは災害時、非常事態。そんなときに、ふだんと同じことをしよう、通常モードでいようというのが、チャンチャラおかしいのだ、って。


▶自分を感じることができる時間を楽しむ。

帰国してびっくりしたのですが(娘は3歳までスペイン育ち)、日本のこどもはふだん「やらなきゃいけないこと」で、朝から夜までびっちり詰まっています。お風呂や夕ご飯まで、「楽しいこと」よりも「さっさと終わっちゃいなさい」な”タスク”化させてしまうことも、私自身も、よくやっちゃいます。

今回、「やらなきゃいけないこと」がドッカーンと吹っ飛びました。そこに、同じような「やらなきゃいけないこと」(※でも、「やる」のはいつもより難しいこと)を突っ込んでしまうのではなく、いまや何より貴重かもしれない「自由で”ヒマ”な時間」を、めいっぱい楽しんでみてもらうというのは、いかがでしょう。

押し付けられる時間が減ったら、自分を感じることができる時間が増えます。こどもはいつか、自ら何かを発見するでしょう。意外と算数の図形だけは超超超好き、とか、お父さんの本棚にあった旅行記読んだらおもしろかっよコスタリカいいねえ、とか、一日中水たまりを観察していたよ、とか。おうちに帰ったら、聞いてみてください「ねえ、今日は、なに考えてたの?」って。


今年のこの急な長い春休みは、そうやって、こどもが、自分から何かを発見していく時間だと思って、いろいろ諦めてのんびりしておくのも、良いかもしれません。

そしてそれは、慣れない在宅勤務をされる親御さんご自身のことも同じ。「いつも通りか、それ以上にできる!」なんて無茶な期待を自分やこどもにかけず、在宅学習・勤務という初めての挑戦がいきなりうまくいかなくても「いやー、なかなか難しいねえ」って笑って、そして、せっかくだから何か初めてのことをしてみたりとか、自分から何かを発見しようとしてみてください。

このポカッとあいた時間に、一生続けられるような「好き!」のきっかけが見つかったりしたら、めっちゃ素敵だと思うなあ。

以上、この3年間だいぶいろいろ試行錯誤してきた、不登校児(最近は保健室登校児)の母でした~。今日帰ってきたら、見事に、洗濯物の山の上に、パンの食べかすが……。私が書いた予言みたいな原稿見せて、一緒に大爆笑。だ~めだコリャ。



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