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スマホはなぜ流行したのか?

スマホは今や誰もが持っていると言っても過言ではない。小学生だって持ちたいと言い始めるとTwitterでも目にする。しかし、なぜスマホはこんなにも流行したのか?
気になったので、メディア論として議論している文献が無いか調べた。そこで大久保遼さんの『これからのメディア論』という本を見つけた。紹介として感想文を書いてみる。

スマホは既存技術の集合にすぎない

組合の飲み会でスマホの話を聞くことがある。先輩組合員いわく、スマホが出た当時、すでにガラケーに搭載されていた技術を応用することで作られたのだと。タッチパネルはガラケーに搭載されていたし、カメラも当然搭載していた。
本にも同様のことが書いてある。軸はもちろんiPhoneだ。
2007年に電話の再発明として発表された。しかし、それ以前からモトローラ、ブラックベリー、ノキアからスマートフォンが発売されていた。しかし既存端末の本体の半分弱がボタン形式のキーボードだったのに対して、iPhoneは端末全体がタッチスクリーンのインターフェースで、OSも高性能だった。(pp.262)
またiPhoneにおけるアプリの考え方も後発だ。1994年にはIBMがタッチスクリーン式の電話機「サイモン」を発売している。これはGPSや地図、株価などのアプリを備えている。ここから考えれば、iPhoneは既存技術を適切なタイミングでパッケージングしたといえる(pp.262,263)。

通信技術の向上とスクリーンメディア化

通信技術が高速化したのもスマホが広まった原因だ。2012年の3G回線から4G回線への移行で、「約8倍の高速通信が可能に」なった。それまでの携帯、ガラケーはあくまでも通話とメールが中心だった。それに対してスマホは「さまざまなアプリやSNS、写真撮影や動画の視聴などネットを介したあらゆる情報の入り口と」なった(p.263)。
「携帯電話、と音楽再生、通信端末を統合する『電話の再発明』として出発したiPhoneは、10年の時を経て、さまざまな機能を集約するメタ・メディアとしてのスクリーンの開発と洗練へと収斂して」いった。スマホは電話であるにも関わらず、もはや「かける」ものではなく「見る」ものへ、「映像メディアの一つ」へと進化していった(pp.265,266)。

SNSの利用率向上と人生に限りなく近づいてゆくモバイルメディア

さらにSNSの利用率上昇もスマホ利用に拍車をかける。2016年には全体で71.2%、20代に限定すれば97.7%が何らかのSNSを利用しているというデータも紹介されている(p.267)。
離れて暮らす人同士の対話は携帯で行われるし、大切な写真や音楽、メッセージはSNSでやり取りされ、スマホに保存される。1992年のポケベル誕生から「25年分のモバイルコミュニケーションの積み重ねのうえに、新しい世代の経験が成立しており、この変化と持続の両面がスマートフォン社会の日常を形成しているのです」(p.269)。

感想

これだけではまだまだわからないことは多い。しかしスクリーンメディア化したスマホが、人の人生に限りなく近づいてゆくというのは非常に興味深い。
なぜガラケーはスクリーンメディア化しなかったのか?画面が小さすぎた?スクリーンメディア化するのに最小限の画面サイズとは?人の視覚サイズが概ねこのぐらいの大きさだから、このぐらいの画面サイズが無いと没入感が得られないなど、そういう考え方があるのだろうか?
また、SNSとスクリーンメディアというのは相性が良いのかも気になる。写真や動画の投稿もSNSならできる。SNSから動画を見るとすると、様々なスクリーンが複数の他者によって紹介される構造が作られているということになる。「スマホ」はもう少し考えてみたいテーマの一つだ。

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