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2024年2月の記事一覧

一般名詞としての哲学ーー廣松渉『新哲学入門』

廣松渉『新哲学入門』(岩波新書、1988)の感想です。 一般名詞としての哲学 新鮮だったのが、『新哲学入門』は固有名詞がほとんど出てこない哲学書、いわば「一般名詞としての哲学」の本だったことです。 普段読み慣れている思想の本は、カントのあれがこうとか、ハイデガーのこの概念がこう、とか、とにかく固有名がたくさん出てきます。國分功一朗の『中動態の世界』にしても、東浩紀の『訂正可能性の哲学』にしても、帯にはアーレントやらルソーやら、言及される哲学者の名前が列挙されるのが常です。

廣松渉の存在について

我々は廣松渉「新哲学入門」を読んだ。 新書。読みやすいかと思って手に取ってみたが、完全に廣松の文章だった。現代語とは言いづらいと個人的には思う。漢文や欧州語を扱ったであろう知識人の独特の言語に圧倒させられる。 緒論、つまりはじめの章を読んで、まずヒュポダイムという用語についてが気になった。廣松においてヒュポダイムとは「不協和を明識しない信念や知識の秩序態、そこでの基幹的発想の枠組み」(p.5)を指す。私なりに解釈すれば、当たり前の物事、自明の論理といったところか。 哲学と