民主化の実践的な方法
この記事は民主化の実践的な方法をまとめた記事です。しかしこの記事の内容は簡易なものであり、詳しい解説については以下のブログから確認する必要があります。また、民主化を達成するためにはこの記事で解説される内容ばかりでなく、実際の民主制の運用方法を知ることが必要です。以下ののブログを読めばそれについても知ることができます。
書籍「世界の基礎」の目次 - 世界の基礎+α (kanayamatetsuya.com)
この記事は以下の記事と一緒に読むことをおすすめします。読む順番はどちらが先でも問題ありません。
民主化に取り組むうえで重要なこと
非暴力不服従
民主化運動を行う際には非暴力不服従の方針を採用することが推奨されます。そして、非暴力不服従が推奨される理由は決して単なるきれいごとではありません。
そもそも民衆は国家の軍隊に勝利できるほどの武器を手にすることが困難であるため、通常は暴力による政権打倒は失敗に終わります。従って、民主化を達成したいのであれば、多くの場合暴力以外の手法を模索するのが現実的です。また、暴力を用いないことは民主化運動の参加者自身を守ることにもつながるというメリットもあります。なぜそのようなメリットが生じるのかというと、独裁者の命令で弾圧を行う警察官や軍人にも人の心があるからです。非暴力的な手段で抵抗すれば、弾圧を直接的に行う人々はそれを暴力によって抑え込むことに消極的になります。更に、暴力を用いない抵抗運動は、それを武力で鎮圧した場合に生じる国民の政権に対する反発や不信感が大きくなりやすいため、独裁者も簡単に武力を用いて抑え込む選択はできません。
では、暴力を用いずに政権を打倒するにはどうしたらいいのかというと、言論による説得や不服従という手段が考えられます。独裁者の権力というのはそれに服従する人間がいることによって生じます。もし軍人やその他の公務員が独裁者の命令に従わなくなれば、独裁者の命令は効力を発揮しないようになり、その権力は実質的に無効化されます。従って、独裁政権を打倒したければ、公務員の自主的な判断や民衆による説得によって、公務員の政権に対する不服従の態度を引き出す必要があります(更に民主政府に対する服従を促進することも大切です)。
また、政府機関の外部に存在する一般の国民も不服従の態度を取ることで独裁政権に対抗することが可能です。例えば、政府が政権批判を封じる法律を制定したとしてもその法律に従わないことで抵抗できます。あるいは、公務員の職務の遂行を独裁政権の意向を無視して施設の占拠などによって妨害することも考えられます。
ただし、誤解を受けないように補足しておきますが、私は武力による民主化運動を常いかなる時も全面的に否定するつもりはありません。もし独裁者及びその指揮下にある軍隊やその他の公務員がどのように説得しても独裁体制を存続させようとし続けるのであれば、武力を用いてそれらの人々を打倒せざるを得なくなる可能性があります。とはいえ、武力による闘争は先述のとおり成功させることが困難であり更には必然的に多くの犠牲者を生じさせることになるため、依然として安易に肯定しないようにしなくてはなりません。
全体的かつ長期的な視野を持つ
民主化運動を指導する立場に立つ人(社会には多数の民主化に加担しうる組織が存在し、そのそれぞれにおいて指導者が現れる可能性があります。また、政治への深い理解と高い情報発信力を有する個人が自ずと疑似的な民主化運動の指導者となることもあり得ます)は、全体的かつ長期的な視野を持って戦略を立てることを大切にしなくてはなりません。
後にも触れることですが、民主化運動を民衆のそれぞれが個人的に行うことはリスクが高いです。従って、民主化運動の指導者はできるだけ抵抗運動を同じタイミングで大勢の人間で行うことができるように指示を出すことが必要となります。
また、民主化運動の指導者は民主体制への移行がスムーズに行われるように、民主政府の設立及び民主政府への権力移譲の手順を具体的に考えておかなくてはなりません。民主体制に移行する際にはその過程で無政府状態とならないようにすることが大切です。
民主化が成功した後に政治家となろうとする人々は、市民が民主体制に失望することのないように、民主化達成後の政治的混乱を最小限に抑えより良い政策を実施するための準備をしておくことが必要です。
民主化の具体的な流れ
民主化の流れの全体像
私は民主化運動は大まかに捉えると以下の流れで進行すると考えます。
「民衆の民主化に対する支持の拡大」
↓
「民衆の権利の拡大」
↓
「民主体制への移行及び選挙の実施」
ただし、以上の流れの各段階は他の段階と同時に進行することもあれば、省略されることもあります。
支持の拡大
・草の根運動、はじめの一歩
民主化を達成するためには地道に民主主義の支持者を増やしていくことが大切です。一般人はまずは家族や友人の説得から始めると良いでしょう。それは大きな権限を持たない人でもできることです。
・説得の方法
民主主義を広める際には、他者に対してその思想が正しいと言える理由をより分かりやすく、より核心をついいた形で説明するように努めることが大切です(※1)。真に優れた思想は一度人々の間でそれへの十分な理解を伴った形で支持されるようになると、権力者の都合でその状態を覆すことは、政府と民衆の間に大きな情報発信力の差がある場合にも極めて難しいです。
・より多くを罪をゆるすこと。
ある人をその人が独裁制を支持していた時期があることを理由に侮辱することは控えなくてはなりません。また、独裁体制下において民衆への弾圧に加担した者についても、それによる過ちの程度が軽微であったりその行為が自らの意志に基づかなかったりする場合には責め立てたり罰を与えたりしないようにするべきです。もしそうしなければ自らへの非難や罰を恐れて民主主義の拒否に固執する者が増加し、かえって民主化は遠のくこととなるでしょう。
※1:民主主義が望ましい理由については私の書籍の民主主義の章を確認してください。なお、その部分はいずれnoteの記事としても公開される可能性があります。
権利の拡大
◇部分的権利の獲得
民主主義の賛同者が増えてきたら、今度は民衆の権利の拡大を推し進めるべきです。とはいえ、強固な独裁体制が確立している国では、いきなり公正な選挙の実施を求めることは困難かもしれないのでまずは政権に民衆の権利を部分的に認めさせることから始めると良いと思います。そして、その際に獲得を目指すべき権利は言論の自由等の明らかに民主主義に必要なものばかりに限られません。民主主義と直接的には関係のないように見える権利でもその獲得を目指して活動することは人々に政府を変えるための技術を身に着けさせることに繋がり、実際にそれに成功すれば民衆の側に政府を変えることができるとの自信を与えることができます。
◇広い支持を集めやすい権利の獲得から目指す
独裁体制の支持者や中立者からも賛同を得やすい権利は政権にそれを認めさせることが比較的容易です。何故ならば独裁者にとってそれを否定することは、自身の既存の支持者を反体制派に転向せたり、民衆の間に潜在的な不満が新たに蓄積されたりすることに繋がるため好ましくないからです。
◇独裁者の願望成就を阻害することによる権利の拡大
特定の権利を求める運動を行う際には、デモ等を行うことも社会に要求の内容を認知させたり人々の間でそれへの支持を広げたりするという観点から有効ですが、それだけでは実際に独裁政権に民衆の要求をのませることは困難です。
人々が独裁政権に何らかの要求をのませるためには、人々の内の多くが特定のタイミングで一斉にその要求の内容を呈示したうえで、それが受け入れられるまでの間道徳的かつより多くの人の支持を得やすい形で政府の願望が成就することを阻んだりその願望が満たされた状態を崩したりする動きをするとよいでしょう(このとき相手がとりわけ強く実現を望む目標の達成を率先して阻むようにすることで運動の効果を高めることができます)。そうすれば政府は自身の望みを達成するために民衆の要求をのまざるを得なくなるはずです。
もちろん民衆による抵抗に直面した独裁政権は自身の体制の転覆を防ぐためにも容易にはそれらの要求を呑もうとはしないことが予測されます。しかしその場合でもその願望を阻害する運動を政府が無視することができないレベルにまで拡大すればやがては抵抗者の要求は押し通すことができるようになります。また、独裁政権内部においても様々な立場の人間がいるのであり、その場での支持を得ることが必要な者は独裁制を維持するためという理由で民衆の要求をなんでも無視しようとするということは不可能です。
◇リスクの低減
民主化運動の参加者を増やすためには、人々がその運動に参加することによって生じるリスクを減らすことが重要です。そしてそのための方法の一つとしては、「民主化運動を実施する際は、多人数が協力して一斉にそれに参加するようにする」というものが考えられます。
例えば、一度のデモにおいて10人の人間を拘束することができる集団に10人以下で立ち向かった場合、各個人が拘束される確率は100%です。しかし、その確率はデモの参加者が100人、1000人...と増えて行くにつれて、1/10、1/100...と下がっていきます。もちろん現実はこんなに単純な計算で捉えられるわけではないですが、それでもこのことからは一度により多くの人間でやれば各参加者のリスクを下げることができることが理解できます。そして、このような方法で民主化運動の参加者の各個人に生じるリスクを減らせば、それまで恐怖心から表向きは中立の立場を保っていた民主化の賛同者のその運動への参加も増えることにも期待できるはずです。
以上の理由から、民主化運動を行う際には、それをできるだけ組織的あるいは集団的な活動として行うようにすることが望ましいといえます。また、明示的な抵抗運動をする際には、事前に他者とそれを同時に行うための約束をより信頼性の高い形でしておくことが必要となるかもしれません。
・抵抗運動であると判断するのが困難な抵抗
明確に反体制的な活動を行うことが難しい場合は、それが抵抗運動であると判定することが困難な方法によって独裁政権に抵抗することができます。それもまた弾圧されるリスクを抑える方法の一つです。
◇交渉について
民主派勢力の代表者と独裁政権の間で行われる交渉においては、民衆の抵抗力を手放すことに繋がる合意は行わないほうが良いです。民衆の抵抗力が存在するからこそ政権にそれに不利な合意を履行させることができるのであり、それがなくなれば権力者に都合の悪い合意は容易に破られるようになります。交渉で目指すべきことがあるとすれば、独裁体制から民主体制への移行を円滑に行うための合意を形成することや、民主化の流れが確実なものになったにもかかわらず抵抗を続けて社会により多くの被害を与えようとする独裁者に対してその身の安全を確保する代わりに自らその抵抗を辞めさせることです。ただし、残虐な弾圧を行った独裁者やそれに加担した者については後に法的な罰を与えることが望ましいのであり、それをしないということはやむを得ない場合に選択するものであるということは弁えておくべきです。なお、私の個人的な考えでは強度な公益性がある場合には遡及処罰を行うことを容認する余地があります(特に独裁者が身勝手に自身の悪行を処罰する法律を作らなかった場合に、後の民主政府が馬鹿正直にそれに従う必要があるとは私は思いません)。
交渉の合意については後の信用を損なわないようにするためにも安易に破るべきではないのが通常です。しかし独裁者に対しては前提としてその人との合意は破られるものであると考え、事前にそれが起きた場合への対策をしておくべきです。
補足:残虐な弾圧を行ったわけではない独裁者については、民主的に成立した独裁を禁じる法を破ったわけでなければ、単に民主主義者との間に思想信条に違いがあっただけであると言えます。従ってそのような人を有罪とすることは少なくとも私の個人的な考えにおいては適切ではありません。
民主化運動過程における公的機関の在り方
◇公的機関全般
公的機関は不服従の態度を取るにしても、維持すべき機能は維持しなくてはなりません。警察であれば民主化運動と関係のない通常の犯罪に対する取り締まりは行い続けるべきです。
◇軍及び警察
民主化の過程において軍の一部が民主派勢力の下につき、独裁体制につく軍の残りの部分と戦うことは多くの犠牲者を生むので好ましくありません。従って、民主化に賛同する軍人やその集団は、まずは軍内部で「民主主義の支持」や「独裁政権への不服従及び将来的な民主政府への服従の方針」を広めることに努め、十分な求心力と統治能力を持った民主政府が設立された場合に軍のより多くの部分が一斉にそれに従うようにするための準備を行うことが望ましいです。
・弾圧緩和のための不服従あるいは非効率的服従
民主主義を支持する軍人や警察官がデモ隊などの取り締まりに駆り出された場合には、わざと非効率にそれを行うことで独裁政権に抵抗することができます。
・クーデターによる民主化のリスク
軍がクーデターを起こし民主化を達成しようとすることは、軍による独裁を招く恐れがあります。もしそのような行動を軍が取った場合は国民は新たな独裁政権が発生しないように細心の注意を払うべきです。また、軍の各部位もそのような動きを取ろうとする軍の他の部位に対しては警戒を怠らないようにするべきです。
円滑な民主体制への移行及び迅速な選挙の実施
社会において民主主義への支持と民衆の権利の拡大が十分に進みいよいよ民主制へ移行する準備が整ってきたのであれば、次に求めるべきは公正な選挙の実施です。そしてそのためには既存の政権に対して外部から圧力をかけたりその内部で民主派勢力を拡大したりすることで、それに選挙を実施すること認めさせると良いでしょう。ただし、選挙の実施に当たってはその時の政権による不正を防ぐためにも十分に民主派勢力がそのプロセスに関わるようにしなくてはなりません。また、選挙を実施に関わる人々は当然独裁政権に限らずあらゆる勢力による不正を防ぐことも考えるべきであり、そのためにも適切な選挙制度について事前に調べるようにすることが必要です。
私は民主化の専門家ではないのでそれが現実的であるかどうかは分からないですが、ときには選挙を実施するために「民主派勢力が暫定的な並行政府(この政府は最低でも組織内民主主義を実現しておく必要があります)を作ったうえで独裁政権の権力を簒奪し、その政府が選挙を実施する」という手段を使うことも考えられるかもしれません(※おそらくこの方法は大きな社会的混乱を招くため避けられるなら避けたほうが良いです)。ただし、それをするには並行政府が社会からの支持と選挙を実践するために必要な実行力の双方を十分に確保することが必要となります。
・統治システムの引継ぎについて
民主体制に移行する際に、独裁体制下で用いられていた国家の統治のための制度や機関を丸ごと作り替えるようなことをする必要はありません。多くの場合、一から全く新たな統治システムを作り出すよりも既存のそれらを修正しつつ引き継いだ方が、政治体制の変更にかかる労力は少なく済むはずです。もし全く新たな統治システムを作らなくてはならないことがあるとすれば、それはその方が既存の制度を修正することよりも容易であったり、民主体制下で必要なシステムが既存のシステムには存在しなかったりするときです。
突発的政権打倒運動が起きる条件
民衆の間で独裁政権への不満や民主主義を支持する気持ちが潜在的に高まっているときに、何か人々の心を大きく動かすような出来事が起きた場合には自ずと社会の多くの人間が参加する政権打倒運動や民主化運動が起こることがあります。そのような出来事がいつおきるかは事前に予測できないことが多いですが、それが実際に起きたときに立ち上がり始めた人々の手助けをできるようにあらかじめ何らかの準備を行っておくのも良いことかもしれません。
民主化後
暫定憲法に基づく政権運営&憲法の作成
選挙によって選ばれた民衆の代表は、正式な憲法が作られるまでの間は暫定的な憲法に従って政権を運用すると良いでしょう。また、このときの暫定憲法の内容は最低限の権力分立の規定と権力の運用の仕方を定めるにとどめておくべきであり(そうしないと民主派勢力の中で意見がまとまらず政局が混乱します)、民主化が達成されるまでの間には考えておくことが望ましいです。
そして、正式な憲法を作ろうとする際には、民衆の代表が専門家の意見を聞きながらそれを作るという方法を採用することが現実的です。場合によっては国民自身に憲法案の特定の規定についての是非を問いかけることも必要ですが、政治に関する理解が比較的浅く専門家の助力も得ることが難しい国民が憲法作成に介入しすぎると、憲法に妥当ではない規定が含まれることになる恐れが高まります。また、そもそも国民の意思を確認するためには多くの時間が必要となるため憲法の作成が遅れ、政治的な混乱も拡大するかもしれません。従って、国民の意思の憲法への反映はその代表を通して行われることが望ましいと考えられます。
ただし、憲法の規定は基本的に「権力分立及び権力運用の在り方」や「政府の権限の限界(国民の侵害されてはならない権利)」を明らかにするために定めるものであり、現在の民衆の代表は自身の独善的な思想を国民や未来の政治家に押し付けるためにそれを定めてはなりません。個人的な思想は憲法ではなく言論によって社会に根付かせるにとどめましょう。
民主主義の定着
もし国民の民主主義への理解が中途半端な状態にあれば、再び独裁政権を作ろうとする者が現れた場合にそれを支持する国民が多くあらわれることになります。そのような事態を防ぐためにも、民主主義の重要性や民主制の適切な運用法を教育や報道によって全ての国民に認知させるべきです。民主政府が成立した後に、その政府が行う政治の質が低かったのであれば、その状態は独裁ではなく民衆とその代表の努力によって改善しなくてはなりません。
民主的統制の強化
民主化後には軍や警察、その他の公的機関への民主政府による統制を十分に定着させる必要があります。それらの機関において指導的な立場につく者の中には民主主義に否定的であるにも関わらずその地位にしがみつこうとする者もいるかもしれませんが、そのような人に対しては様々な手段を用いて強制的にその地位及び権力を維持することをあきらめさせなくてはなりません。公的機関内の民主化に反対する者に対しても同じ人間としての敬意は払うべきですが、民主主義を確実にするための統制についてはそれらの人に臆さず強気で行うことが大切です。
・クーデターの阻止
民主化後のクーデターを阻止するためには、軍を監視する制度を成立させなくてはなりません。また、軍の人事権や軍を指導する権限は民衆の代表が握らなくてはなりません。もしそれができないのであれば民衆とその代表は、民主化はまだ達成されていないと解釈し、更なる民主化運動を行うべきです。
その他
独裁者へ
現在独裁を行っている人は、自国に本当に強い民主化の流れが生じた場合には、どのように努力しても自身の権力を維持できないのだということを理解しておいた方がよいでしょう。世界には個人や少数の人間の力では変えられない流れというものが存在します。無理にそれに抗おうとする人はより大きな損失を被ることになります。
また、私は独裁者に対し、自身の権力を維持することに固執せず、自ら民主化を推進するか、自身の権力を民主化を推進する者に移譲することを推奨します(どちらが良いのかは時と場合によって変わります)。民主化は民衆の側からだけではなく、政府の側から行うこともできます。そして、政府が積極的に民主化を推し進める場合には、民主化に伴って生じる犠牲の数を抑えることができます。私は現在独裁的な政治を行っている人が自ら民主化を推し進めることを心から期待しています。
機が熟すのを待つことについて
私は民主化を成功させるためには人々がある程度のリスクを負う覚悟をしなくてはならないと考えています。しかし、私は自身にとって独裁国家が民主化することが望ましいのだとしても、それらの国に住む人々がリスクを負わないことを決して責めるつもりはありません。なぜなら私自身が独裁国家の国民となったときに、自身の身の安全が損なわれることを覚悟してまで民主化運動を行うとは限らないからです。
私は自身がもし独裁国家に住んでいたのだとしても、機が熟さないうちから民主化のためにリスクを負って活動するようなことはしません。民主化運動を行ってもリスクがあるばかりで民主制が実現する見込みがないような状況では、私はまずは人民の教育水準や生活水準を向上させることに努め、人々の潜在的な民主化欲求を高めることを目指します。私が政府による弾圧を覚悟で明示的に民主化運動に参加することがあるとすれば、それは大規模な民主化運動が既に起きているもしくはそれが起きることが確実である場合です。大規模な民主化運動への参加は既に述べた通り参加者一人当たりのリスクを小さいことから、自身が有することになるリスクも小さなものとなるため、臆病者である私にも行うことが可能です。また、民主化運動に参加しないことが自身により大きな損失をもたらすことが明らかである場合は自身に危険が及ぶことを覚悟してそれに参加する可能性はあります。しかし、以上のようなケースに該当しない場合、私は恐らく極めて限定的な範囲でしか民主化運動に参加することができません。
内容の不確実性
ここまでに記された民主化の手法は、政治の非専門家である私によって書かれたものです。従って内容の信頼性は高くはありません。読者の中にもし民主化運動に何らかの形でかかわる人がいるのであれば、以上の内容は参考程度にとどめておいてください。
参考書籍
この記事の執筆にあたっては以下の書籍を参考にしました。
ジーン・シャープ(Gene Sharp).独裁体制から民主主義へ-権力に対抗するための教科書.瀧口範子(たきぐち・のりこ)訳.筑摩書房.
またこの記事の内容は私の著書「世界の基礎」の一部をまとめなおしたものです。