対談

『えんとこの歌 寝たきり歌人・遠藤 滋』

作品解説

伊勢真一監督作品
ベッドの上で寝たきりの暮らしになって35年になる遠藤滋は、1947年、仮死状態で生まれ甦り、1歳で脳性マヒと診断される。障がいがありながら大学を卒業、重度障がい者として東京都で初めて教員に採用され、母校の光明養護学校で国語教師となるが、障がいが進行し教壇に立つことができなくなり、寝たきりの介護生活が始まる。自ら“えんとこ”を組織し、介助者たちの力を借りながら自立生活を続けている。東京・世田谷のアパートの一室“えんとこ”のベッドの上から、社会や自分自身を凝視するその眼差しで50代後半から短歌を詠むようになり、心の叫びを言葉に託す日々を送っている……。

落水さんと別府ブルーバード劇場へ

1月13日(日)講演会後に落水さんを車に乗せて別府まで。「えんとこの歌」の伊勢監督との対談のために、ブルーバード劇場へ向かいました。ホントは、私が落水さんの移動やブルーバード劇場でのあれこれは、伊勢監督の知り合いで、落水さんと私の縁をつないでくれた(知ってる方は知ってる)Iさんが行うこととなっていたのですが、Iさんが突如入院して、更にお父様がお亡くなりになるという大変な事態になって、急遽お手伝いすることとなりました。
ブルーバード劇場では、2回の上映会と伊勢監督との対談を行った訳ですが、私も落水さんも2回とも「えんとこの歌」を鑑賞することになりました。

えんとこの歌について

「えんとこの歌」については、パンフレットを見たときからちょっと戸惑ってしまいました。黒塗りのバックに老人の横顔、それに「寝たきり歌人」のクレジット。正直に言いますがちょっと引いてしまっていたのです。
私は、今回、落水さんの講演会を開催しましたが、障がいや福祉については専門外で、どっちかというと、「重い話はムリー」というタイプです。ただ、ありがたいことに、刑務所での勤務の大半を作業や社会復帰の関係の部署で過ごし、障がいを持った受刑者の出所に関して、福祉関係施設との受入調整等の業務を行っていたことや妻の実家が知的障がいのある人たちの雇用をしていた関係で、事情は承知しています。
しかし、落水さんにとっては、いずれそうなっていく現実に向き合う映画だと思いますし、私自身は介助の現実に直面する映画ならあまり見たくないなぁと思ったのです。
しかし、信頼しているIさんが、伊勢監督のファンであり、長い時間をかけて今回の対談を実現させたとのことですし、まぁしょうがない、というレベルで向かった訳です。

ドキュメント映画の力

ということで、鑑賞したのですが、これが物凄い映画でした。主人公である「寝たきり歌人」の遠藤滋さんを中心として話は進むのですが、それは、介助する周りの人々によって描かれる遠藤滋さんです。行動が失われた遠藤さんの脳の中には膨大な思考が渦巻いていて、そこから紡ぎ出される言葉が短歌になり、受け止める私たちに迫ります。
「だって、君は一人で勝手に何かをやっていくことなんてできないんだろう」
もう、何も言葉が出ませんでした。自分は自分の力で生きている気になっていて、その立場から他人をみているのです。
今回の落水洋介氏の講演会も同様です。私がいくらやりたいと思っても、協力してくれる人がいなければできないのです。そして、そのことは、誰から言われることでなく、この映画が言葉以上に教えてくれるのです。
これがドキュメント映画の力です。

共時性(シンクロニシティー)を信じよう

大学時代は心理学を専攻して、ユングに傾倒していました(卒業論文は「元型としての鬼」という国東らしいものだったりして)。ユングの観念に共時性という言葉があって「意味のある偶然の一致」を指します。今回、落水さんとの出会い、Iさんとの出会い、講演会、そして、「えんとこの歌」との出会いについて、とても偶然とは思えませんし、これは、何か重要なことを指し示しているようの思えるのです。
さらに重要なことは、映画終了後の懇親会で私が「豊後高田市で「えんとこの歌」を上映したい」といったところ、伊勢監督から、上映会をするのなら豊後高田市に来てくれるという言葉をもらったことです。さらに話が盛り上がって、落水さんとのトークセッションも可能であるという話になったのです。

「えんとこの歌」上映実行委員会を立ち上げます

そんな訳で、豊後高田市「えんとこの歌」上演実行委員会を立ち上げたいと思います。中央公民館で上映会を行います。そして、伊勢真一監督と落水洋介さんに来てもらいます。まだ、全然予定も何もありませんが、年内にはなんとかしたいと思っています。落水さんの講演に参加したり、参加できなかったり、ドキュメンタリー映画に興味があったり、今回は市内市外とか関係なく、「えんとこの歌」に興味があるいろんな人と開催したいと思います。ぜひ力を貸してください。
僕は一人で何かをやれる訳ではないのです。

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