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半笑い母の完全勝利

長女と次女が洗面所で小競り合いをしている。

14歳の長女はお風呂に入ろうとし、8歳の次女は歯磨きをしようとして。


思春期真っ盛りの長女は、たとえ妹でも、近くに誰かがいると服を脱ぐのを嫌がる。だから「なんで今来るの?おねえちゃんお風呂入りたいんだけど」と妹を洗面所から出て行かせようとしている。

次女は次女で、自分は正しいことをしていると思ってるからテコでも動かない。私から「歯を磨きなさい」と言われたという大義名分があるもんだからなおのこと。
ふだんは歯ブラシを突っこんだままリビングに来ては「歯磨きは洗面所でしなさい」と叱られてるのに。

長女は長女で、次女が寝る時間に風呂に入るからいかんのだ。それまでにいくらでも入る時間はあったのに。

要するに、どっちもどっち。


だが長女のほうがタラタラねちねちとイヤミを言い、次女は無言でがんとして動かない。

親から見たら、ただの意地の張り合いだ。誰もいい気分にならんし、なにもコトが進まん。こういうケンカは本当に嫌いだ。



とはいえ、私も幼いころよくやっていた。

3歳下の弟と、ただの意地の張り合いでお互い一歩も引かないとき、私の母はよく私たちをけしかけてた。「やれやれ~」と、半笑いで。

わたしはそれがめちゃくちゃ嫌いだった!

ものっすごいバカにされてるようで。


こちとら弟の間違いを指摘し自分の正しさを証明するために、一歩も引くわけにゃいかんのだ。ふざけんじゃねえって思ってた。


ただ、半笑いでけしかけてくる親を見て別の怒りがわき、弟への怒りが目減りする。

それでも素直に引けないのが思春期長女のめんどくさいところなのだが、それでも放っておかれるより幾分かケンカの時間は短くなっていたように思う。


今日思った。

あれ、母の思うツボだったんじゃないのか?

意地を張ってケンカを続けることが、なんだかバカバカしいことに感じられたのは事実だ。

ただの意地っ張りだということは、今になると分かる。
そんなケンカ、誰も得をしない。ただただ時間のムダだ。

母に、「怒りを分散させてケンカを短縮させよう」なんて意図があったかどうかは分からないが、結果的にはそうなった。母の完全勝利だ。


次はわたしも、半笑いでけしかけてみようかな?

いや、でもあのときの母が大嫌いだったんだよなぁ。




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