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役病17 2022. 5. 1 抗原原罪

 今年2022年は、六年に一度の諏訪の御柱祭りが行われます。4月に山出し、5月に里曳きが行われますが、4月の山出しは実質的に中止され、御柱がトレーラーで運ばれました。1200年以上の歴史の中で初めてのことだそうです。

 日本は3月の後半から感染者数が3万人から5万人の間で推移しています。欧米は日本より対人口比率での感染者数や死者数が多い国がほとんどですが、ウィルスに対する警戒を解いて、かつての日常生活を取り戻そうとしています。

 武漢で発生した野生株から始まってデルタ株までは連続的に変異してきましたが、最近現れたオミクロン株は全く系統の異なるものです。また新たな系統が一から始まるので、最初に現れたオミクロン株BA.1の病原性が弱くても、今回のウィルスが弱毒化したとは言えないのではないでしょうか。

 BA.1の病原性は弱いと言われていますが、死者、後遺症に悩まされる人がともに増え、また、子供への感染が増えて、発熱やけいれんなどの症状が出やすくなっているようです。

 新たな系統の変異を注視する必要があります。これから先、弱毒化していく可能性もありますが、BA.2と呼ばれる変異種は病原性を強めています。一般的には、変異し易いウィルスが流行している状況下では、ウィルスは病原性を高めるように変異していくようです。

 ウィルスが変異していく、特にスパイクたんぱく質が変異していく場合、ワクチンを創るなら、変異しない部分に焦点を当ててワクチンを創るべきだと思うのですが、日本政府が最近承認したノババックスのワクチンはスパイクたんぱく質に焦点を当てたワクチンです。しかも大昔の武漢型のスパイクたんぱく質を前提にして創られています。抗体の適合性という観点から有効性は低いと推測されますが、mRNAワクチンよりは良いかもしれません。

 日本では3回目のワクチン接種が始まっていますが、20代・30代が接種に消極的なようです。この世代はワクチンの効果に疑いを持っているようです。他の先進国でも同様に3回目の接種率は伸び悩んでいます。

 イスラエルでの4回目のmRNAワクチン接種による効果はあまり良いものではなく、それらを検証した結果、日本を含めた多くの先進国では、4回目接種については高齢者と基礎疾患のある人のみを対象とすることにしたようです。はっきりとは言っていませんが、自己免疫疾患を防ぐためです。

 抗原原罪という現象があります。

 此の現象は最初に受けた強い印象がいつまでも記憶されるように、数々の異なった種類のワクチンを何度接種しても産生される抗体の多くは最初に接種したワクチンの型に対応するものになってしまいます。この現象はインフルエンザ、デング熱、マラリアなどで認められています。

 病原体に感染するとナイーブT細胞によって免疫応答が開始され,病原体の排除のためにキラーT細胞、B細胞が活性化し、病原体が駆逐されるとメモリーT細胞、メモリーB細胞に病原体の情報が記憶され、その後、同じ病原体が侵入するとメモリーT細胞、メモリーB細胞はナイーブT細胞の活性化を抑制し、直ちに免疫応答します。

 しかし、過去に感染した病原体が変異していても、これらのメモリー細胞は最初に免疫応答するはずのナイーブT細胞の活性化を抑制するので、最初に感染したウィルスの記憶に基づいたキラーT細胞、B細胞を活性化させます。

 その結果、最初の記憶がそのまま生かされて、最初のウィルスにも存在した共通の部分に有効な抗体は産生されますが、二度目以降に感染したウィルスの変異した部分に有効な抗体はあまり産生されません。

 インフルエンザウィルスは毎年少しずつ姿を変えて出現しますが、感染するとまず初感染時の免疫記憶が蘇るため、変異ウィルスは生き延びて流行は拡大していきます。

 今後、感染時にウィルスのスパイクたんぱく質が変異していても、抗原原罪により最初に接種したワクチンによる記憶に基づいて抗体が作られるため、抗体の適合性が不完全で、免疫逃避だけでなく、ADE(抗体依存性感染増強)が起きる危険性があります。変異していけばいくほど、その危険性は高まります。

 ワクチンの接種については慎重であるべきで、とりあえず出来合いのものを打てばいいというものではなく、どれだけ犠牲者が出ても我慢して、これ以上のものは創れないという自信作が出来てから接種すべきだったのではないでしょうか。

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