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役病14 2022. 2. 1 脳神経系統への影響

    2022年1月1日の感染者は534人でしたが、1月29日の感染者は84,930人と急増しています。これがオミクロン株B.1.1.529です。感染後2~3日で発症し、多くの人に感染させますが、症状が出ても回復は早く、全体としてサイクルが早いので、ピークアウトも早いのではないかと言われています。

 

 ただ、ステルスオミクロンと呼ばれる亜種のBA.2は、より感染力が強く、欧州ではオミクロン株がピークアウトしている国がある中、BA.2に置き換わったデンマークでは感染が拡大し続けています。日本でも置き換わって感染が拡大し続けていく可能性があります。

 

 重症化しにくいといわれ、社会全体として収束への期待が高まっていますが、重症者は増える傾向にあり、過去最高を更新するのではないかと予測されています。また全てのペースが早いようで、脳に霧がかかったようになってぼんやりとしてしまい、日常生活に支障をきたす、ブレインフォッグと呼ばれる脳神経系統の障害が、後遺症としてではなく、感染している最中に現れてきているようです。

 

 今回のウィルスによる脳神経系統へのダメージについては、以下の新たな事実が判明しました。

 

 2021年12月20日にNature Portfolioに発表された米国立衛生研究所による感染者44人の病理解剖を行った結果によると、感染が直接の原因で亡くなった患者もいれば、なかには感染後最長で7カ月後に死亡したケースもありました。そのうち11人について広く脳を調べたところ、10人の脳に死亡時、今回のウィルスが広がっていたことが分かりました。

 

 そして、オックスフォード大学実験心理学科のSijia Zhao博士は、過去に検査で陽性となり、従来の後遺症を訴えていない参加者を対象に記憶力と認知能力を試す調査を実施しました。その結果、感染後最長6か月にわたって、エピソード記憶と呼ばれる個人的な経験を思い出す能力が著しく損なわれているケースが多く見られ、また、感染後最長9か月に亘って注意持続能力に非感染者よりも大幅な低下が見られました。感染後数か月に亘って認知能力に慢性的な影響があるようです。

 

 コロナ後遺症患者に見られる認知機能の障害や記憶力の衰えは、アルツハイマー病の症状にとてもよく似ています。

 

 米アリゾナ州バナー・サン衛生研究所シビン神経病理学研究室の室長ガイディ・セラーノ氏は、今回のウィルスが臭いを分析する嗅球から感情を調節する扁桃体へ、そしてさらに海馬へと移動すると言っています。これらは認知と記憶に関係する領域で、この経路をウィルスが移動しているとすれば、他のタイプの認知症に症状が酷似しているのも頷けます。

 

 さらに、米ニューヨーク大学ランゴーン・ヘルス・グロスマン医学部の神経救急治療スペシャリストであるジェニファー・フロンテラ氏とそのチームは、2020年10月に医学誌Neurologyに発表した論文のなかで、今回のウィルスに感染して入院した患者の13.5%が脳障害(感染症や体の免疫反応によって引き起こされる認知機能障害)やてんかん発作、脳卒中などの神経疾患を新たに発症していたと報告しています。  

 

 どんな原因であったとしても、集中治療室に入るほど重症化すれば、神経症状が現れる患者が出てきます。フロンテラ氏は同大学のアルツハイマー病研究センター長のトーマス・ウィズネスキー氏と組んで、入院時に患者から採取された血液サンプルを分析しました。2022年1月13日にアルツハイマー病協会のサイトに公開されたその結果を見ると、認知症の既往歴がないものの入院中に認知機能障害を示した新型コロナ患者の血液中に、脳に損傷があることを示すタンパク質が多量に存在していたことが明らかとなりました。なかには、181位リン酸化タウタンパク質(p-tau)のように、アルツハイマー病に特徴的なタンパク質もありました。

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