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役病13 2022. 1. 1 日本人の6割は交差免疫を持っている

 秋から年末にかけて海外では感染が爆発していましたが、日本では2021年10月に入って、感染はどんどん引いて、10月17日に一日の感染者が500人を割ってからは、100人を下回る日もあり、12月29日に再び500人を超えるまでは無風状態でした。 

  このことについて、はっきりとした原因は分かりませんが、日本人が今回のウィルスに感染しても重症化しない原因の一つが解明されました。

  2021年12月8日に発表された、理化学研究所の藤井真一郎らの研究によると、日本人の約6割が持っている白血球の型HLA-A24のおかげで、一般的な風邪の症状を示す季節性コロナウィルスを免疫系が記憶していると、今回のウィルスにもキラーT細胞が働いている可能性があるようです。

  HLA(Human leukocyte antigen)=ヒト白血球抗原は、1954年に白血球の血液型として発見され、その後、HLA抗原はほぼすべての細胞と体液に分布していることが分かりました。HLA抗原は、外部から侵入した細菌やウィルスなどの非自己である病原体を識別し、病原体の一部を結合してT細胞に提示することで、免疫の働き手であるキラーT細胞やB細胞などに危険情報を伝えます。

  HLA抗原が結合してT細胞に提示される病原体の一部は、エピトープ(epitope)と呼ばれます。

  免疫系、特に抗体、B細胞、T細胞が病原体のような抗原を認識する場合、その全体を認識するわけではなく、抗原の比較的小さな特定部位のみを認識します。この特定部位がエピトープで、抗原を認識する最小単位であることから、抗原決定基とも呼ばれます。そして、特定抗原の侵入により形成された抗体または免疫記憶は,その抗原と同一あるいは類似のエピトープを持つものとしか反応しません。

  今回のウィルスのスパイクタンパク質領域に存在する6種類のエピトープの中から、日本人に多いHLAタイプHLA-A24と親和性の高いエピトープとして、QYIペプチドを同定しました。QYIペプチドに対するキラーT細胞の反応性を調べたところ、健常人の80%以上が反応したようです。

  また、QYIペプチドと季節性コロナウィルスのスパイクタンパク質領域に存在するペプチドは、アミノ酸配列が近似していることが分かりました。そこで、キラーT細胞の交差反応性を検証したところ、今回のウィルスと季節性コロナウィルスの両方のエピトープに対して、同等の結合力を持つことが判明しました。このことから、過去に風邪(季節性コロナウィルス)にかかった際に働いたキラーT細胞が、今回のウィルスに反応する可能性が示されました。

  さて、日本では感染が落ち着いていましたが、新しい変異株B.1.1.529が11月11日にボツワナで見つかり、11月24日に南アフリカからWHOに報告され、11月26日にオミクロン株と名付けられました。スパイクタンパク質に32の変異が認められ、その感染力とワクチン回避能力から、すぐさま懸念される変異株VOCに認定されました。これを受けて日本政府は、11月30日午前0時をもって全外国人の入国を禁止し、全てが電光石火のごとくスピーディーでした。

 実効再生産数は京都大学の西浦博教授によるとデルタ株の2.8~4.2倍で、2022年前半に感染者が30億人を突破するかもしれないという試算もあるようです。また、自然感染やmRNAワクチンを2回接種してできた免疫を簡単にすり抜けて感染してしまうようです。

  しかし、早期の少ないデータからは、重症化リスクはデルタ株と比べて25~50%とされています。これを裏付けるように、北海道大学大学院の福原崇介教授は、細胞や動物の実験によってオミクロン株の特徴を調べ、体重減少、肺機能検査、病理検査のすべての結果から、オミクロン株の病原性が他の株と比べて弱いと結論付けています。

  まず、培養した細胞を使った病理検査から以下のことが分かりました。通常、今回のウィルスに感染した細胞は他の細胞にくっつき、融合することで感染を広げます。つまり、細胞の境目が無くなっていきます。デルタ株は従来株と比較すると、より多くくっつき、境目が無くなっています。一方、オミクロン株は、従来株と比べても、あまりくっついていません。つまり、症状が悪化しにくいということを示しています。

 次に、若い成長期のハムスターを使用し、そのハムスターに従来株、デルタ株、オミクロン株に、それぞれ6匹ずつ感染させ、体重の変化を見ました。感染していないハムスターは、体重は増加していて、従来株やデルタ株に感染したハムスターは体重が減少しました。これらに対して、オミクロン株に感染したハムスターの体重は、ほぼ変わりませんでした。 また、ハムスターでの実験で、呼吸機能についても調べました。従来株、デルタ株については、酸素飽和度は急激に減少しています。しかし、オミクロン株は、少し下がった程度で、呼吸機能が、ある程度保たれていました。

 さらに、香港大学李嘉誠医学院の研究チームによると、オミクロン株はデルタ株と比べて気管支での増殖が70倍速く、肺組織では相対的にあまり活性化せず、従来のウィルスに比べて複製能力は10倍未満であるようです。つまり、肺に到達する前に気管支で感染してしまうため、肺炎を起こさないようです。

 ただ、米国ではオミクロン株の流行によって、18歳未満の子どもの入院が5倍に増えたようなので、もう少し時間が経ってデータが集まらない限り、何とも言えません。

 次に出てくるオミクロン株よりも感染力の強い変異株がさらに弱毒化していれば、収束の芽が出てくるかもしれませんが、このオミクロン株は爆発的に広がるようなので、どんな変異株が出てくるか分かりません。

  でも、2021年10月から12月にかけての日本の感染状況を見ると、オミクロン株による日本国内での被害は、諸外国と比較すると小さくて済むのではないかと推測してしまいます。

  最期に、ファイザー社とモデルナ社について、両社の社長は保有している自社株を売却したようです。株価は少し先の未来を見越して形成されていると考えられています。両者が自社株を売却したということは、これ以上株価を上げる材料は無く、いまが株価の天井と考えているからです。

  また、ファイザーの社長はTVインタビューで、ワクチンを接種していないことを告白したようです。そして、その理由を尋ねられて、自分は人と会わないので接種する必要がないと答えたようです。

 イスラエルやイギリスは国民の多数に接種する決断を下す前に、両社の技術開発部員の半数以上に接種を迫るべきだったのではないでしょうか。


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