杉山久子の俳句を読む 23年05月号
日輪や切れてはげしき蜥蜴の尾(句集『泉』所収)
上五に打ち込まれた掲句の切れ字「や」の効果はすこし複雑である。蜥蜴の尾を昼の光にさらけ出すために上五で背景を作るならば、「太陽や」「白日や」とできるところ、あえて二次元的な「日輪や」が選ばれているからだ。
「や」の性質上、主格として「日輪が切れて」とも読める。蜥蜴の尾が切れるのは生物の営みにおける自然現象だが、日輪が切れるなら超常現象である。太陽が外縁で盛んに波立つように見える、いわゆるプロミネンス(紅炎)の映像を凝視すれ