再掲 その2

獺祭が読めない君はそれだけで清純すぎる異世界のひと


2019年の岡山大学短歌会(以下、おかたん)の新歓歌会に出した歌。

新歓イベントだけあって、ゲストを招いたり、新入生に宣伝をしたりと、普段の歌会より多くの人を集めるものだった。
大学に入りたての18歳から、ゲストでいらした社会人の方まで。主催であるおかたんの方も院生がいたりOGがいたり、年齢層が幅広かったと記憶している。

おかたんの歌会では、最初に司会が指名した人が提出された短歌を読み上げ、評(一読した感想や「自分はこのように読み取った」という内容)を述べる。その後は続けて指名された人が評をしたり、他に意見がある人が自由発言をしたり、といった形で、基本的には発言者がいなくなるまで1首について語りつくし、次の歌に進む。

この時の歌会で、司会は冒頭の歌の読み上げに新入生を指名した。そして、読み上げの最初で詰まった。

社会人のゲストの方がすぐに「だっさい、だよ」と助け船を出した。そこから、「お酒の名前だよ」「大学1年生じゃまだ知らないよね」「私も知らなかった、そうなんですね」「歌の通りだね」と、盛り上がったのを覚えている。

無垢な君をまぶしく思う気持ちを際立たせたくて、アイドルの系統以外ではあまり聞かない「清純」という言葉を選び、「異世界のひと」とわざと大袈裟な表現をした。そして、お酒の名前を知らない人と知っている人が混在している可能性が高い新歓の場にこの歌を出した。狙いがばっちり決まり、作者としてはとても気持ちよかった。

私自身も歌会で読み上げ担当として指名されたときに読めない漢字があるととても焦るというのに、読めない人がいる前提の言葉を先頭に持ってきたのは今思えば性格が悪かったと思う。しかし、司会は新入生をあえて指名し、周りの人がフォローして盛り上がることができた。あの歌会に参加していた方々に心より感謝申し上げたい。


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