「まひる野」2022年7月号
マチエール掲載「黎明」
瞬間を悟られることなく満ちる月の真下で開くベゴニア
あなたの持つ橙色の沈黙のなかで揺られる臨月の猫
クレープの写真に写り込む足が革靴を履いていて青葉風
光らない日々が街には必要でジャンボタニシのいない用水
朝に降る雨の静けさ ほんとうはあなたと寝坊してみたかった
慣れるからさみしいのですね花を摘むしぐさと灯すしぐさは同じ
憶えていてねと背骨をなぞる黎明の火に喩えられやすい素肌で
背中にしか会えない夢を繰り返し見ていて夏は嫌いだと言う
SNSで学生時