大人の言うことは聞くな

最近就活では「オヤカク」という言葉が使われるらしい。「オヤカク」とは「内定を承諾することを親がOKしているかどうか就活生に確認すること」。

就活生の内定が決まったにも関わらず、
親がその会社に入社することを反対して
内定を辞退せざるを得なくなるというケースが多いかららしい。

親は名のある大企業や伝統的な会社の方が安定すると考えて、「安定した人生を歩んでほしい」という親心で子供にアドバイスをするのだろう。
でも子供の方は…今の子は繊細で優しい子が多いので、親を傷つけたくない一心で自分の意見を押し殺して親に従っている子が多いような気がする。

私が昔塾で働いていた時、医学部やその他医療系の学部が人気だったけれど、高校生に志望理由を聞くとほとんどがこれだった。
「親が医学部に行きなさいって言ったから」

進路に悩んでいる子と話をしている時も、
「私はこうしたいけど親が…」とほとんどの子が言った。
とある子は県外の大学に行きたいけど、
親に「実家から出ないで」と懇願されて悩んでいた。
中には両親だけでなく、祖父母や叔父叔母までに口を出されてがんじがらめになっている子もいた。

私の話をしよう。
私は短大を卒業した後、4年制大学を卒業したが
就職が決まらず就職浪人した。
周りははっきりとは言わないが、「就職はまだ？」というようなことを遠回しに言われることが多く、
私は「早くきちんと働かなきゃ、正社員にならなきゃ」と焦って塾の事務員の職を得た。

だけどそれが間違いだった。
上司や同僚への報告相談、仲間との雑談…
みんなが普通にできていることが私には全くできなかった。
特に私は人に物を頼むということが致命的に下手で、勝手に1人で抱え込んでは勝手に孤独を感じていた。

加えて事務職だと思っていたのに、
蓋を開けてみればバリバリの営業職。
新規の生徒や既存の生徒の受講講座を増やすため、
面談をしたり電話をかけたりしていたが、
「結構です。」と言われるとそれ以上何も言えなかった。
私よりも大学生のアルバイトの方がどんどん生徒を獲得したりしていて、大学生よりも仕事ができない自分が恥ずかしくて消えてしまいたかった。

そして異変は次第に現れた。
朝起きた瞬間に涙が次々に流れる。
お風呂に入れない。
出勤20分前に泣きながらベッドから這い出し、
髪を洗っていないのに気づかれないように前髪だけ洗面所で洗って出かけた。
電車の中ではずっと泣いていた。

お腹はちゃんと空くのに
何を買ったらいいのか考えることができず、
毎日毎食同じコンビニのおにぎりで過ごした。
その結果体重は6キロ落ち、
ショッピングもまともにできないほど体力が落ちた。

家族へのLINEも返せず母や妹から心配された。
とにかく辛すぎて誰かに助けてほしくて
心療内科に駆け込んで「この辛さを何とかしてほしい」と先生に訴えた。
先生には「適応障害になりかけだね」と言われた。

周りの言うことを聞いて
「きちんと」した人生を送ろうとした結果がこれである。

会社のためにプライベートを犠牲にして
バリバリ働くのに向いていない人間だとわかったので、
私は正社員の職を捨て、大分に帰りカフェでアルバイトを始めた。
その後体調も元通りになり、アルバイトではお金が足りなくなってきたため派遣社員になった。

大卒なのに(しかも割と名のある地方国公立)
派遣社員なんてもったいないね、と何度も言われたが、派遣社員の方が残業もなく休日出勤もなく、
重すぎる責任に心をすり減らすこともないので私には合っている。
時間と心に余裕があるので演奏活動も再開できたし、新しい趣味や知り合いもできた。

世間の大人からすると(私もそこそこいい歳だけど)
私の人生は「失敗」だろう。
でも私は「失敗」の人生の方が好きだし幸せだ。

以上のことをふまえて、
今の就活生に対して物申せるならこう言いたい。
大人の言うことは聞かない方がいい。

「すぐに泣くな！」と言われて
泣きたくても我慢するようにしたら、
私は自分の感情がわからなくなった。
「何を考えてるかわからない」と言われて
みんなに距離を置かれるようになった。

「校則を守れ」と言われて
スカートの丈も守って前髪もきっちり留めたのに
男子たちに指を指されて笑われて
私はそれがトラウマで男子の集団に近寄れなくなった。
(今でも高校生くらいの男の子の集団が怖い。)
校則を守らないと内申が悪くなると言っていたくせに、スカートを短くして髪の毛をくるくる巻いていた子も推薦でいい高校に合格していた。
結局大人の言いつけを守ったっていいことはない、むしろ悪いことばかりだった。

世の中の自称常識人の中で、
なんのためにスカートを長くしたり髪をきっちり留めないといけない校則があるのか、
どうして正社員でなければいけないのか
どうして結婚しなければいけないのか
説得力のある理由を言える人がどれだけいるだろうか。

所詮人間なんて他人にとやかく文句を言いたいだけ。
だから惑わされてはいけない。
判断基準は全て自分の中にある。

「〜するのが普通だ」と言われたら、「そうするのが普通かもしれないけど私は普通じゃないから」と言えばいい。
それで失敗して「だから私の言う通りにしておけばよかったんだ！」と言われても、「だってあの時の私はそうしたかったんだから、仕方ないじゃん」って言ってあとは無視しとけばいい。

直感ほど信用できるものはない。
直感はあなたのこれまでの人生経験全てから導き出した答えをあなたに教えてくれる、あなたを熟知したAIのようなものだ。
だからあなたは自称常識人の経験則より、自分の直感を信じるべきだ。