見出し画像

「100年予測」と林芳正外務大臣と成田悠輔さんに感謝している

自分の未来はどうなるのか? 
思春期の若者のように未来に漠然とした暗くて強い不安を感じた。2年前の2月 ロシアがウクライナに軍事侵攻をした時だった。

毎日毎日テレビのニュースやTwitterやYouTubeを見て何が起きているのか情報を得ようとしていた。ウクライナがどこにあってどんな国なのかも知らず、ロシアとウクライナはどういう関係だったのかも知らなかったので ひたすら不安だった。

ロシアに関しては母からこう聞いていた。
「決してロシアを信じてはいけない」
母はありふれた市井の人で、ロシアやソ連に関連して直接辛い体験をしたわけでもなく 母の今までの人生でロシアと何か関わりがあったわけでもない。それでもあちこちで見聞きしたこと、特に第二次世界大戦時のソ連の振る舞いを見てそう感じていたのだと思う。ボルシチやピロシキ、御茶ノ水のニコライ堂などロシアに結びつくものは身近にあるのに、なぜ母がこんなにもロシアを嫌っているのだろうと子供ながら強く思った。不安を強く感じたのもその刷り込みのせいかもしれない。

侵攻当初 どの情報を信じていいかわからなかったが、毎日熱心に探しているうち信頼できる情報源を自分なりに見つけた。平凡な市民なので特別な情報源があるわけではないが、世の中の進歩により、自宅でインターネットに繋がるだけで世界中に溢れる情報に接することができる。おかしな陰謀論に落ち込まないよう 偏りが出ないように選んでいき 海外発信の情報にも接した。特に初めのうちは現地に入ってレポートしているBBCなどが頼りになった。次第に日本にいる軍事や戦略あるいは国際政治の専門家の情報にも接することができるようになり 自分でも少し知識をたくわえるようになって 入ってくる情報を評価する力がついてきた。

毎日こんな情報に接しているうちに 北方領土を持つ日本もいつの日にかロシアに侵攻されてしまうのではないかと考えるようになった。その時自分たちの国をどう守ったらいいのだろう?ウクライナのように勇気を出して守り切ることができるのだろうか?自分の身内が兵士として出征していかなければならない日が来るのだろうか?想像はどんどん膨らんで行った。現実に起こっていることは何なのか、それが知りたくてさらにネットの中で信頼度の高い情報を探すようになった。現実に起きているとは思えないほどひどい情報に接して 寝つきが悪くなるくらい不安になることもあった。

そんな時に私の不安を解いてくれたものが三つある。
一つは 物事の本質をはっきりということで知られる成田悠輔さんがTwitterに載せた焚き火の映像だった。キャプションも何もなくただ火が燃えている短い映像だった。見ているととても落ち着いて自分の中の不安を宥めることができた。世間では情け容赦ないと受け取られかねない発言をしドライな人柄と思っていたが きっと内面は繊細に人を思いやる優しさに満ちた人なんだなと思った。あの時期にあんなに癒されるものを他で見聞きしなかったので尚更そう感じた。

もう一つは 林芳正外務大臣がどこかの会合で発した言葉だった。
「この戦争は誤りだったと歴史に刻まなければならない。」
その通りと思った。こんな行為が許されていいはずがなく、後世にこれは間違っていたんだと 残していくのが今この時代を生きている私たちの勤めと思った。「誤りであることを証明するためにこのまま戦争が続けば ウクライナの人々はずっと戦い続けて亡くなる人も多くなる、それはあまりにひどい」と私の周囲でもいう人がいた。けれどこのまま終わらせて仕舞えば 侵略したもの勝ち 武力で思うまま行動したもの勝ちで終わってしまう。現在を生きる私たちが後世にそんな教訓を残してはいけないと思った。ウクライナの人たちは自分たちの犠牲が増えても戦い続けると言っていて その人たちの勇気に報いるためにも私たちはできる支援を続けていかなければならないと強く思えるようになった。今でもその気持ちは変わらない。

最後は 「100年予測」という本を知ったことだ。Twitterで名著と紹介されていた。ストラトフォーというアメリカのインテリジェンス企業の代表ジョージ・フリードマンが主に地政学の立場から著したものだ。2009年に発行されており 早川書房が翻訳権を独占しているそうだ。ほぼ20年刻みで将来の予測を立てている。この本を読むことで やっと世界の国々の繋がりやそれぞれの国の事情を理解でき 現在の情勢を理解する基礎ができたのだと思う。そして何より、2020年のロシアの章で、「ロシアの動きにアメリカが対応し、再び冷戦が起こる。今回の冷戦は前回と比べれば小規模だが、前回と同様、ロシアの自壊で幕を閉じるだろう。」と書かれており 心底納得してホッとできた。拡大された大きな見取り図を得た気持ちだった。全体の中での今のこの動きをどう理解するか 日々のあれこれに一喜一憂しない大きな流れを掴んだ気分だった。その後の戦争の進行も不安にならずに追い続けることができている。

これから先はどうなるのか、来年のことも来月のこともわからない。ウクライナを応援し続ける気持ちに変わりはないが、この戦争に勝ったからと言って平和になるとは限らないという人もおり ウクライナの人たちには豊かで平和だった軍事侵攻以前の暮らしを早期に取り戻せるようにと祈らずにはいられない。例えば本に書かれていた通りロシアが自壊したとしても、その後どうなって行くのかそれもわからない。戦争に負ければいい、プーチンが辞めればいい、という単純な話ではない。うねりながら大きく波打っていく世界情勢をどう理解していけばいいのか。学者も政治家も軍事関係者も必死に取り組んでいる。私のような名もない市民は 冷静に正しい知識を入れて必死に取り組んでいる人たちの意見に賛成し支援を続ける、そうしていくことが平和につながっていくように思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?