公正証書遺言が無効になった裁判例

  1. 取り上げた裁判例
     大阪高判H26.11.28判タ1411号92頁

  2. 事案の概要等
     脳梗塞を発症し、その後、認知症を発症した遺言者が残した4通の公正証書遺言の効力が共同相続人の間で争われた事案。
     第1の遺言をした平成13年当時、遺言者は多発性脳梗塞に罹患していたものの、自己の財産の管理・処分に関する意思決定をすることが可能であり、他者を介在させずに遺言に関する手続を自ら行った。そのため、第1の遺言時、遺言者に遺言能力がなかったとはいえない。
     平成17年の第2遺言当時は、多発性脳梗塞等の既往症に加えて、認知症と診断されたこともあり、記憶力や特に計算能力の低下が目立ち始めており、入院中のベッドに横になっていた遺言者が、顔の前にかざされた遺言公正証書の案をどの程度読むことができたのかも定かではなかった。また、公証人の説明に対して「はい」と返事をしたとしても、それが遺言の内容を理解し、そのとおりの遺言をする趣旨の発言であるかどうかは疑問の残るところであり、この程度の発言でもって、遺言者の真意の確保のために必要とされる「口授」(民法969条2号)があったということはできない。
     その後の2通の遺言も、同様に「口授」があったとは認められない。
     したがって、第1の公正証書遺言のみが有効とされ、その後の3通の公正証書遺言は無効と判断。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?