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故に「儀式」と呼ぶ



猫には儀式がある

少なくともうちの猫には儀式がある


それらは形式美を伴い、
ある一定の時間、ある一定の条件において
ある1匹の猫によって粛々と行われる

それを故に儀式と呼ぶ


うちの母屋には4匹の猫が住んでいる


長男の元晴(もとはる)は神経質なマザコンの黒猫だ

次女の麝子(じゃいこ)はビビリのくせに厚顔無恥の白黒猫

三女の恵子那(えこな)は現在のボス・人にでさえ勝手は許さない

次男の恵比造(えびぞう)は末っ子気質の甘えん坊・たまに暴走する


各自に色々な儀式があり
それぞれの美学によって行われているが

どれも人間が関与せねばならず非常に面倒くさい



それらの1つをご紹介しよう


黒猫長男の儀式



彼には夜になると始まる「三粒の儀式」がある

それが始まる時間になるとしつこいほど鳴きはじめる

こちらの意志など無視してお誘いをかけてくるのだ

それを無視していると延々鳴く
1時間や2時間では諦めない 5時間でも夜通し鳴く


そのくらい彼はその儀式に執着し真剣である


呼ばれて何をするかというと

まず餌のおいてある部屋へ粛々と進む
猫が一番先に入らねばならず、無視して人間が先に入ると

やり直し!と出て行ってしまう

(そして呼ばれ、また最初からになる)


途中で付いて行くフリをして
違う場所に行ってしまうと
烈火のように怒り出す

抱き上げると怒って鼻を噛まれる事もある
そのくらい きちんとやらねば腹が立つものらしい


餌の部屋まで付いて行くと

器の前に座り、

「きちんとやってくれよ」と言わんがばかリに

後ろをチラッと確認
(これさえも判で押したかのような確認である)


そしておもむろに立ち上がり

「さぁやってくれたまえ」と深くため息をつく


何を? 


尻を叩くのである


左右からポンポンとリズムをつけ
あるいは歌を歌いつつ
軽く軽く叩いていく


そうすると 彼は

1粒1粒とポリリ、ポリリと餌を食む


そして3粒程を食べ終えると座り、


「うむ、ご苦労さま」とばかりに出て行ってしまう

これで三粒の儀式は終了になる



だが、インターバルを10分置いた後 またお誘いの声がかかる

それが大体1晩に 3~4回 行われる


何故に?

わからないが 人間が決めたわけでもなく

猫が納得する顔をするまで

試行錯誤の上、渋々したがっていたら

こんな事に付き合わされる羽目になった

ちなみにこの儀式はもうすでに4~5年続いている

あまりに歌がふざけた内容だったり

尻を叩く手が強すぎたり弱すぎると

即座にお叱りを受ける


そしてノーカウントとしてもう一度やりなおしの声がかかる


大変に面倒くさい


そして人間も付き合うのがつらい

だが無視しても鳴き続けるので無視もできない


怒ってみても諦めはしない


そしてただただ


「お前は何もわかっちゃいない これは儀式なんだ

儀式は行わねばならぬ 人はそれに従わねばならぬ」


そういった顔で見つめてくる


猫の世界にも宗教感が生まれているのかもしれない

「世界三粒教」


絶対に入信したいとは思えない


ちなみにこの「三粒教」


他の猫らは全くやりもせず興味も持っていない


ごくごくまれに暇な時にエコナが同じことを請求することがあるが

元々、そういう物に興味を示すようなタイプではないので
ざっくりとした適当な作法でいい加減に行われる

元々エコナは他の猫の趣味を真似る傾向がある

楽しそうだからやってみた そんなとこだろうか


それを盗み見した長男は

「ああ、お前らは何もわかっちゃいない」

そういう軽蔑のまなざしで見つめ


フンと不機嫌そうに鼻を鳴らすのだが


わかりたいとも思えないのが今の正直な気持ちだ



早く人間の関与しなくて済む 

次なる儀式の登場を心から願う


悲しい事だが、この儀式を皮切りに

各種の儀式がそれぞれの猫によって行われている



疲れる


早くみんなそういう宗教は諦めて欲しい

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