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記憶の蓋




【カナコさんお久しぶりです
アイヌ関係に詳しかったですよね
私、最近アイヌ関連の事すごく気になってて】


そんなメールが昔の知り合いからきた

どうして彼女とは何年も離れていたんだっけかな
よく覚えていない

何回かメールをやり取りした後
電話で話そうという事になった


聞けばアイヌの装束や
タマサイと言われるアクセサリーに
凄く興味があるとの事だった


【やっぱり、装束って高いんでしょうねぇ、欲しいけど】

そうねぇ、ちゃんとしたものなら10万とかなら安いかな



【10万! それで安いの?】

良い着物ならもっとするでしょう?和服でも



【カナコさんは昔の持ってる?】

うーん、私が持ってたやつは現代の布のものだし
外で着てたやつだから褪せちゃっててダメかもね
雨とかにもあたってたし、、、
それに第一、何年も帰っていない実家にある筈なので
もう既に断捨離の餌食になったと思う


【えーもったいないー残念ね】

そうね、残念。。。と言えば残念かなぁ


【ねぇねぇ、アクセサリーはもってる?】

あー、昔してたのは持ち主が亡くなったんで
どうなったのかなー?
黒曜石とかメノウの玉のついたやつだったね
前についたシトキっていう円盤には銀が象嵌されてた

あれは重いんだよね たぶん7~8キロはあると思う


【そういうのが欲しいのよね!ねぇそれは今どこにあるの?】

うーん、元々私のじゃなかったしね
たぶん別なので良いならヤフオクかメルカリとかで売ってるんじゃないかな


【メルカリかぁ、私が見ても本物かわからないものなぁ】

うーん、素人の人が見ても偽物と違うものの区別はつくと思うよ
メルカリのほうはあまり価値がわからない人が出してるのか
10分の1くらいの価格があったりするよ


【ぇー、そうなの・・・記念に飾っておくだけでも良かったんだけどな】

【ねぇ、本物っぽく作れない?】

本物っぽく?
でも資材やそこそこの量考えたら結構な金額になると思うけどね


【えー、どのくらい?】

本物だと安くて10万くらいで高いのだと80万とかしてるからなぁ


【えええ!そんなに!】

いや、昔は40万とかざらだったから、10万とか安いほうじゃないのかな
実際、私が個人で持っていたのも結構なお値段がしたし


【えっ!個人でも持ってるの?それ譲ってくれない?】

いや、以前知り合ったアイヌの方に差し上げたんだよ
欲しいのだけど、持ってないって言ってたから
アイヌのものはアイヌに戻そうって考えて無償であげることにしたんだ
今も大切に使ってくれてるって聞いたばかりだよ


【えー!もったいない!】


うーん、まぁ私のお金で買ったのだし
私がどう使おうと自由だから・・・

ミニチュアなら割合安く作れそうだけどね



【え!作ってよ、買うから!作ってみて】

うーん、、、、


…………


と言うやり取りがあって

まあいい機会なので作ってみる事にした

10分の1くらいのサイズで


シトキに合う金属板がなかったので
ちょっとした金属のボタンを代わりにつけた

ビーズをつなげてタマサイを作る際と同じ作り方で作った
タマサイを作る時は糸を何本も通すので
針が何本も必要になる


小さいから4本の糸で良いだろう

シトキという円盤から伸ばした糸4本にそれぞれ針を付ける

編みこむようにそれぞれにガラスのビーズやアクリルのビーズを付けていく


まぁそれなりには見えるかな



出来上がったよと言うメールを出したら
受け取りに来ると返事があった

気に入ってくれたら、あげることにしよう


ファミレスで会うことになり
久しぶりに顔を合わせた

「ねっ、 アレ早く見せて」

ああ、こんな感じなんだけど、、、どう?


「えーっ!小さすぎじゃない!」


10分の1って言ったよね?


「どうして本物みたいに首にかけれるやつにしてくれなかったの?」


ぇ、壁にかけるだけでもいいって、、、、、



「こんなのダメよー!あーあ、せっかく来たのに」


ぇー。。。。。



「ねっ、私良い事考えた!」


はい?

「あのさ、前にタダであげたって人、どこの人?返してもらえないかな」


ダメだよ もう差し上げたのだし


「えー、だってお金貰ってないんでしょう?何万したの?」


あれはそんなに高くはなかったけど、、20万くらいだったかな



「ほら!そんなのもったいないよ!貰いに行こう?」


いやさすがにダメでしょう

あれぇ。。。この人、、、こんなんだったかな、、、、


「じゃ、住所教えて、私、貰いに行くから」


いやいやいや、無理 ごめん、さすがにちょっと無理だから


ちょっとムッとして言った


「あっそ、じゃもういいわ そんなオモチャ要らないし」


「もう電話しないでね、友だちだと思ってたのに、残念だわ」


「あーあ、せっかくきてあげたのにっ」



・・・・


とぼとぼと家に戻り

せめて写真だけでも撮っておこうかなと


デジカメを取りだそうとしたら

カバーだけで本体がなかった



帰宅した旦那に聞くと

「あ、、、ごめん、この前、落としちゃって」



ずっと言えないままで 戸棚の中に入れてあったらしい



大切な友人がくれたカメラだったのにな

どう見ても治りそうにない傷がレンズについてた



怒る気力もない




壁には小さな 首飾りをぶら下げた

結構良くできたと思ったのにな・・・




思えばあの人と疎遠になったのは

あの人がどんどん私にバッグや小物を
彼女の思いのままで作らせようとしたことからだった

ところがどんどん代金を払わなくなり、
そして気づけば高値で転売してた噂もあり

その矢先に私が別件のいざこざで縫わない宣言をしたところで


彼女のほうから「見限った」関係だった



そういう人だから記憶に蓋をしてたのかな


今回も転売目的だったのかなぁ・・・




そのうちタマサイはビーズに戻そうと思う

受け手のないものは縁起が悪いので・・・




なんか残念な1日だった



こんな日もある 

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