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【地主さんと私】㉓風評被害


「あれさ、どうなってんの」

ファミレスの隅の席でAさんが私に聞いた

Aさんは私がメインで借りている畑の管理者で
俗に言うところの大家さんだ
私はAさんの畑をもう7年程借りている

地主さんの畑は今年初めて借りたもので
Aさんと地主さんは畑がお隣同士で別人である


どうなってんのか私が知りたいですよ
でもまぁ、こないだ片付けたが最後で
縁がこれで切れたと思う事にしてますよ


そんなことを
オブラートでデパート包みするように
Aさんに伝えた  丁寧に丁寧に


今年借りた農地は
来年地主さんが大根を植えると決まったので
私は借りない事になっている(現在は)


現在はと書いたのは
あの地主さんなのでどうなるかは
一切予測できないからだ


「そうなんだ」

ええ、そうなんですよ


Aさんはミックスフライ定食についた
キャベツをモリモリと食べながらあきれ顔で言った


「いやぁ、実はさ、、」


Aさんの説明ではこういう話だった


半月ほど前

Aさんが植えたキャベツの周囲の草抜きをしていたら
地主さんがやってきて自分の大根の自慢話をしていった

そしてお決まりの


【今から種まくんだ】


と宣言していったらしい


「なんぼなんでも遅すぎると思ったんだよ」


でもそこは長年地主さんの謎行動に悩まされているAさん
注意したら何を言うかわからないので笑顔でスルーしたらしい


そして昨日
またしても地主さんがAさんの畑にやってきて


【おう、あのな実は、、、】


大根の種まきの中止を伝えにきたらしい


種まきの中止自体は私も聞いていた
何言ってんだこいつと思いつつも


そうですね 来年が勝負ですね と

地主さんの言った言葉を鸚鵡返しした



ところが地主さんが
Aさんに伝えた『理由』は私の想像を軽く超えていた


「俺もびっくりしちゃってさぁ」


地主さんはAさんに
この大根は地元の有名焼肉店のキムチ用に注文されたと言っていた

ところがその大根を蒔かなかった理由を
店側の理由でキャンセルされたと言ったのだ


ええっ、大体、店に注文なんてされてないじゃないですか


「そうなんだってね でもさ、俺にこう言ったのよ」



コロナで客足が減ったので

キムチ用の注文を取り下げます


そうキャンセルされたんだ!と



風評被害だ!


わーびっくり

コロナに対する熱い風評被害


できうるならばコロナに訴えられてしまえ


っていうか

よくそういう変な理由思いついたなぁ(汗
ちょっと意外な…


「あれかなって思って」


ドレ?

「ほら、コロナで事業に影響あったって事になったら
補助金が出るんでしょう?」


そっちかーーーーーー!

地主さんなら補助金とか大好きだから
そういうのはやりかねん


「でも、そうなったらお店のほうに確認の書類貰わんとならんもんね?」

う、うん
第一、そうと決まったわけじゃないしね


「うん、そうね うん」

二人で暗い目をしてデザートの抹茶ゼリーをかき回し
来年の畑の面積の相談をして
じゃ、またねと店の前で別れた


私は本屋さんに寄りたかったからだ


本屋さんで種のカタログを買い帰ろうとして


ふと見た本の棚に蛍光ピンクの表紙の雑誌が見えた


あれ、この本 どこかで・・・


たしか地主さんの休憩所の椅子のとこに・・・


手にとった雑誌のタイトルは




新型コロナ対応給付金・助成金

「申請するだけで貰える寄付金・2020年度版」



あ(大汗






ま、、、まさかね!まさかね!


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