海街お衣裳雑記



『海街diary』が終わりました。気づいたら終わっていたレベルの忙しさでした。

ご来場いただいた方、どこかで応援してくださった方、ありがとうございました。


Twitterや劇場で衣裳の話をしていただいているのを静かに見聞きし喜んでおりました。
みなさま、聞こえてました。ありがとうございます(笑)


きっと誰も気づいていないであろう(キャストにも言っていない)こだわりポイントがあったので、ここにそっと書き記しておきたいなと思います。
※ネタバレしまくりです。ご注意ください。

大迫はDVDの担当でもあるのでちょっと宣伝もします。すみません。
DVD、買ってね。通販あるよ。
「今更言うなよ!DVDで確認したくなるだろ」って、ぜひ思ってね。笑

大迫の大好きな映画の撮影チームさんが残してくれた初日。私も今から楽しみです。



隠したテーマは『コロナ禍』

これは本当に誰にも言っていませんでした。
もちろん演出部にも話していないので座組の総意ではありません。悪しからず。

「喪服」(=誰かと繋がり、誰かに想いを馳せる温かい服)、
「花火」「浴衣」(=花火大会そろそろ見たくない?!)
など、どうしても縁遠くなってしまったものを愛しく思う気持ちでプランしました。
喪服は、自分以外の人のために着る服という意味ではとても温かい意味合いのある洋服だな、と思います。
ここら辺はキャスト様の多大なるお力添えにより、非常にリアリティのあるプランになりました。重くてケアも大変なのに快くご自身の物を着てくださった方も。
本当にありがとうございました。




私は花火が見たい(ので作ったあのダンス衣裳)

今回1番頑張ったのは、「恋の花火」という、4姉妹が浴衣を着て出てくる曲の爆速早着替え浴衣と夏祭りデートなガールズのダンス衣裳でした。

受け渡して以降は「着てる子達可愛いな〜」と他人事で見てた


4姉妹の浴衣着用時間は約20秒。すずはその後のサッカーへの早着替えも20秒。ここは、初演の香盤では着替えなしだったところです。(お写真なしですみません)(いかんせん皆さん早着替え)(キャストさんに頭が上がりません)

「初演に負けたくない」という気持ちと「映画に負けたくない」(海街の映画版ではなく、着替えにおいて有利な“映画”というコンテンツそのものに、“舞台”という編集不可能2時間ワンカットのコンテンツで勝負したい)という気持ちで、気付いたら3月の殆どをこの衣裳に費やしました。

演出助手の森岡里世とサイゼで「再演では恋の花火、なんかしたくない?!!!!」って話して、最初はダンサーの女の子達に浴衣を着せたい説もあったんだけど、「仕掛け衣裳、いつかやりたいね〜」と言っていたのを思い出して、盛り上がって、女の子達には花火をイメージしたスカートを仕込んだ仕掛けワンピを着ていただきました。サイゼのスパイスの粉美味しいよね。今思えばあれにテンション上がって作った衣裳かも知れない。


「とにかくキラキラにしたいんです!!」と、照明さんをユザワヤに強制連行して選んでもらったスパンコール付きのチュール。照明さん、すみませんでした。


仕掛けがとにかく分からなすぎたので、とにかくYouTubeを見まくり、
スロー再生しまくり、
それでも急に7着作って失敗するのは嫌だったのでまずは試作。

肩と脇のところが分かれるようになってます。よく見るとクリップが。(本番はマジックテープでした)
一応テンション上げるために可愛い布で作った。



試作では全くスムーズに開かず。
周りの有識者達にこの動画を送りまくり、スカートの形に問題があるよ、と指摘していただきました。


何よりキャストさん達の稽古の賜物ですが、スカートをキュッとした物から全円の物に変えたらここまで開くようになりました!
有識者、すげえ…有識者に出会えた私の人生もすごい。感謝。


一生裁断しててくれた里世。ハサミ逆だけどこれがいいらしい。私が左利きだからハサミが歪んでたのかな…?


謎の節約。コピー用紙で型紙を書きました。



すずは囃し立てられろ!と思ってた

特に曲の前後にすずのキュンキュンエピソードはないんですが、
「恋の花火」に「浴衣の金魚が私を囃し立てる」って歌詞があるんですね、

あるんです。DVDで確認してください(すみません)

だから浴衣、ひとりは金魚柄がいいな〜と思い、
まあ、すずが妥当かな、と思って青(オクトパスカラー)に赤い金魚の浴衣を血眼になって探しました。理想の浴衣に出会えてよかった〜〜

台本のイメージもそうですが、今回のキャストさんの空気感的に、
囃し立てられるのはすずかな〜という、私の勝手な解釈です。
お姉ちゃんズがそれぞれしっかり恋をしているからっていうのもあったかな。


実は、ここまですずはここまでは(一瞬の暗め赤マフラー以外)意図的に寒色を着てもらっていました。小物も含め。
(セーラーの水色リボンは原作重視です)

ここら辺から少しずつ、金(帯に入れた)とか、白のゆったりTシャツが登場します。
帯の赤も、マフラーより少し明るめの赤に。
金魚もリアルめだけどニコッとしてる?子達が描かれたのを選びました。

すず自身が金魚ちゃんに見えても可愛いな、と思ったので、末っ子なのもあって帯の後ろのリボン部分は兵児帯風にクシュっと、出目金?のイメージでリボンの裾は長め、センターに金色の装飾を入れてみました。
気付いてた方はいるかしら…?


着付けも年齢順に、キャラクターを生かして

縫う前。置いてみて色味チェック。千佳の黄色い帯飾りはカットになりました。


早着替えだったからこそ尺の中で着るのが難しくはあったものの、
オール加工済みの早着替えだからこそ、慣れちゃえば安定した形で着れちゃうのが強みということで。
1度着てみていただいて、お端折りができる部分を縫い込み、更に稽古場で何度も着て頂いて、調整しながらマジックテープを数カ所設置した作りだったんですが、加工した時点で4人それぞれの着付けも微妙に違います。

すずは前述の通り後ろだけ兵児帯風。
リアル中学生では兵児帯はしないだろうけど、末っ子感重視でああなりました。
着丈も短め、帯の位置も高め、首の後ろはそんなに抜いてません。
末っ子!って思いすぎて、小学生スレスレの着付けだったかも、、(笑)
パジャマを脱い(だら中にオクトパス)でからの浴衣着用だったので1番段取りが多かったのに、安定して綺麗に着付けてもらいました。
担当の方に感謝。(誰が担当だったかは予想を楽しんでくださいね)(私は見ててワクワクした)
その後のオクトパスユニは、ハケてから浴衣を爆速で脱いでもらってました。
マジテ、すぐ着れてすぐ脱げてすごい。一瞬で浴衣からも袖からも出て行ってた。笑

千佳はとにかく元気に可愛く!
千佳のテーマカラーだった黄色にハッキリとした赤帯、
いやらしくない程度に首の後ろを抜いて、帯飾りも1番ガチャガチャさせてみました。(帯飾りのマーガレットの黄色いところ、地味にビーズ縫ったよ〜〜〜アップあって欲しい〜〜〜)
「カマドウマー!」ってハケて来てからピンクのタオルを投げるフォームがとても綺麗でした。
袖中、修羅場だったなあ。。笑

佳乃はヘルシーな色気と可愛らしさ、スッキリした性格の中に女の子らしさが欲しくてピンク、レース、ちょっとキラキラぎみの帯。
(帯はみんな本当の帯じゃなくて、布を重ねて作ってました)
首の後ろもしっかり目に抜いて、でも年長組の次女ということで着丈は長め。
飾りも現代風を意識したので、アップヘアじゃないのが逆に合ってて可愛いなあと思ってました。(他人事…?笑)

幸はお姉さんなのとしっかりした性格なので、
後ろは幼くならない程度にだけ抜いて、帯自体は控えめにキラキラさせたものの飾りなしで、さっぱり目に着ていただきました。
貝の口という、リボンじゃない帯の結び方もそれっぽく再現してひたすら縫い込み…

製作途中です。ちなみに貝の口、本当の帯ではわたし出来ません。

浴衣も帯も淡白な色同士で合わせてみたんですがいかがでしたでしょうか…?
ファンタジーに振り切った妹達よりも、リアルに居てもおかしくなく作りたかったので、逆に1番挑戦的だったコーディネートかも知れません。淡色合わせって、センスいるよね…(キャストのお姉様方からの評判がよかった事が救いです。)



止まっていた時間が動き出す、白の部屋着

初演の映像を見た時、「夏の終わりの虫歯」のストップモーションのシーンが素敵だな、と思って、
これまた公式の解釈ではないんですが、私の中であれは「すずの止まっていた時間が動き出す」ことの象徴でした。
すず自らの指パチンで動き出すところがいいよね。

なので、無理にお願いさせてもらってあそこはいつものネイビーの部屋着ではなく、
真っ白でゆるっとした、悲しみを上手にどこかに置いて来れたかのようなイメージをオーダーさせていただきました。

あそこに出てくる海街の人々、徐々に自由度が増していきましたね。好きだったなあ…。
あと、曲中で人々が一斉に行き交うシーンでは、リアルに日常で着られている洋服達の息吹のようなものを感じました。やっぱり普段から着られて、時には汚されて、その人が生きる家のベランダで風を通されているお洋服は持っているパワーが違う。悔しいけど頭で考えたプランでは勝てない。

キャスト様の多大なるご協力に感謝です。


キャプテンマークも作りました

サッカーチーム「オクトパス」の、劇中で2人のキャストが使用するキャプテンマーク。

サクッと着脱できるように、また劇中で落ちたりしないように、加工アリの手作りです。

本当は(暗く、混雑する袖中で回すリスクや予備的な意味を込めて)それぞれの分を作ろうとしていたんですが、「物語の中で回ってくる事に意味がある」というご本人達との話し合いを経て、本当に1つのキャプテンマークを回していただきました。

私は恥ずかしながら今までキャプテンマークの存在を知りませんでしたが、とても意味のあるものだということをキャストさんに教えていただきました。
衣裳を通して役の気持ちを作ってくださる事もあるので、今後も丁寧に寄り添っていきたいな…。

美帆ちゃんの背番号1番

これも恥ずかしながら今回知った事ですが、
ゴールキーパーは背番号1番を着ることが多いそうです。

初演からの引き継ぎだったのでサイズが合ったのは奇跡ですが、サッカー経験者のアドバイスをもらってメンバーの番号選びを行いました!

感謝!



突然終わります(笑)

以上、纏まりなく書き連ねてきましたが、
海街、こんな感じです!

最初の「赤い糸」の白ワンピも好評で。
あれもかなり、役者さんに助けていただきました。


生きたお洋服のこともそうですが、
何よりキャストの誰1人として
「この早着替え無理です」といった相談を頂かなかったのがすごい。
役者魂…。

「ぶっちゃけ、流石にこの尺では無理かな〜!」と思いながらお渡しした衣裳もあったのに(笑)。

幕が開くことにはみんな私よりも衣裳に詳しくなってて、無理難題もなんとかしてくれて。
数人が集まって1人を集中的に着替えさせてる光景は、
F1のメンテナンス?みたいだなーと思ってました(笑)。

仕掛け衣裳、本当に大変だったのに、
「私たちはこれを綺麗に着る義務があります」って言ってもらって、
こんなに作り甲斐のあった衣裳ってなかなかないです。
着てくれた方々から頂いた愛の大きさは、人生で1番の衣裳ランキングに候補入りしてます。


もう一生縫い物しない〜〜〜〜!って思ってるけど、
多分少し休んだらまた縫いたくなっちゃう。

その日までは綺麗なものを見て、
美味しいものを食べて、
大好きな人たちと過ごして、
世界を見る目を養おうと思います。


(流石にこの流れではDVDに言及しにくくなったのでTwitterのツリーにだけ、URLを貼っておきます。笑)


たくさんの応援、
そしてこんな私のプランに、もったいないくらいのお褒めのお言葉をいただき、ありがとうございました!

役者としてもですが、やはり見てもらわないと育たない部分があって。
そこを3,000人の方に見ていただけた経験は私の宝物です。

心からの感謝を。






それでは、また会う日まで!


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