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鼻の奥までぐりぐり... 何の検査 ?

※この記事は、日本科学未来館で科学コミュニケーターとして活動しているときに執筆したブログ記事です。【2015年1月5日に投稿】を編集・追記。当時の活動を振り返る”編集後記”を載せて再掲載しています。

【編集後記】生物の特定の物質(抗原)をつかまえるには、生体の物質(抗体)を使います。いかに私たちの体の仕組みが精度が高く繊細にできているかを感じます。検査したその場で検査結果が分かる迅速診断キット。COVID-19ではPCR検査での診断には1~数日を要するので、開発が急がれています。

ここは病院。

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お医者さんに長ーーーい綿棒を、鼻の奥まで入れられています。

ぐりぐりぐり...

何をしているのでしょうか。

されたことがある方は ピン ときたかもしれません。

そうです。これは"インフルエンザの検査"です。

綿棒で鼻の奥の粘膜を採り、インフルエンザウイルスが検出されるかどうか調べます。


使うのはこれ!インフルエンザ迅速診断キットです。

インフルエンザウイルスは大きく分けてA型、B型、C型とあります。季節性のインフルエンザはA型、B型なので、インフルエンザ迅速診断キットではA型とB型を判定できるようにしてあります。

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ぐりぐりして採った鼻の粘膜を特殊な液に溶かし(=鼻ぬぐい液)、キットの穴に垂らします。

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すると、15分以内にラインが出てきます。

インフルエンザに感染していない場合は、1本しかラインがでませんが(陰性:上のイラストでは右の「r」のライン)、感染している場合は、2本か3本のラインが出てきます(陽性)。A型、B型のどちらに感染しているかもラインの位置で分かります。

上の検査結果はA型インフルエンザ陽性、つまりA型のインフルエンザウイルスに感染しているということですね。

さて、いったいどうやってこのラインを出しているのでしょう?

私たちの鼻のぬぐい液には、細胞や粘液のたくさんの成分が含まれています。イメージだとこんな感じ。

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(いろんな成分が溶け出している)

どうやって、この中からインフルエンザウイルスの成分だけを見分けているのでしょう?

ヒントは実は私たちの体にあります。

それは…… "免疫!"

免疫は、病気の原因となる細菌やウイルスを攻撃し自分の身を守るシステムで、体内の"免疫細胞"や"抗体"が大活躍します。
抗体は自分と異物(菌やウイルス、花粉など)をきちんと見分けて異物にとりつき、異物を免疫細胞に食べられやすくする役割があります。

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では、抗体はどうやって異物だけをとらえているのでしょうか?!

抗体の構造に秘密があります。

抗体はタンパク質でできており、Y字の形をしています。

異物をとらえる部位は抗体の先端の部分です。

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体内には、さまざまな異物に対応できる抗体があらかじめそろっていて、ある異物が体内に侵入すると、その異物にぴったり合うような先端の構造を持つ抗体が大量につくられるようになります。


前説が長くなりましたが、インフルエンザ診断キットには、インフルエンザウイルスの成分だけをとらえる抗体、つまりA型をとらえる抗体とB型をとらえる抗体が使われています。


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rのラインは...いったい何のためにあるのでしょう?
実はとっても大事です。

rのラインは鼻ぬぐい液と抗体がきちんとキットを流れている証拠。

つまり、反応がうまく行われていることを確認するためのラインです。
rにラインが出なければ、手順にミスがあったとか、キットに不具合があったなど、何かトラブルが生じたことを示しています。つまり、その検査結果は信用できないため、"やり直し"となります。

例えば、rのラインだけが出ていて、A型やB型のラインが出ていない場合は、どちらのインフルエンザウイルスもみつからない(=陰性)、という意味になります。しかし、r が出ていない場合は、検査はやり直しとなります。

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このインフルエンザ迅速診断キットを使えば、15分程度でインフルエンザに感染しているのかどうかと、感染しているのはA型かB型かがわかります。

(ちなみに妊娠検査薬も同じ原理です。)

もし、病院でインフルエンザの検査をする機会があれば、ぜひ検査キットを見てくださいね!!

はっ!

私はなんてことを...

むしろ、インフルエンザの診断キットにお世話にならないように、手洗い、うがいだけでなく、十分な睡眠とバランスの良い食事で免疫を高めて、ウイルスをはねのけてくださいね !

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