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ガンマ関数とメリン変換|ガンマ関数で様々な関数を積分表示

今回はガンマ関数の留数の性質をつかって、様々な関数を、ガンマ関数を含んだ積分で表します。

この記事では複素積分を扱います。留数定理がわかればいける。

そして、留数と、ガンマ関数のメリン逆変換を知った方には、最後の考察まで見てほしいです!
最後が一番話したい内容。


ガンマ関数の留数計算

極の位置と位数

ガウスの乗積表示を見ればすぐに分かる。

$${\Gamma(x)=\displaystyle\lim_{N\to\infty}\frac{N^xN!}{\prod_{k=0}^{N}(x+k)}}$$

分子の指数関数に極はない。
分母は$${x}$$が0以下の整数なら、$${N}$$を大きくすれば0になるので、極になる。
$${x}$$に依るとこはそこだけ。

よってガンマ関数の極は
0以下の整数 のみで、全て1位。

留数計算

$${n\in\mathbb{Z}_{\ge0}}$$とする。
$${x=-n}$$における留数は、
$${x+n}$$を掛けた$${x\to -n}$$の極限なので

$${\mathrm{Res}(\Gamma,-n)=\displaystyle\lim_{x\to -n}(x+n)\Gamma(x)}$$

ここで$${(x+n)}$$と$${\Gamma(x)}$$間に、ガンマ関数の漸化式に足りないもの
$${(x+(n-1))(x+(n-2))...(x-(n-n))}$$
を掛ける。
でもタダで掛けることはできないので、
この式の$${x\to-n}$$の時の値、計算すると
$${=(-1)(-2)(-3)...(-n)\\=(-1)^n\,n!}$$
で、割っておく。
つまり、

$${\mathrm{Res}(\Gamma,-n)=\displaystyle\lim_{x\to -n}\frac{(x+n)(x+(n-1))(x+(n-2))...x\Gamma(x)}{(-1)^n\,n!}}$$

スマホだと見切れるので横向にするべし

ガンマ関数の漸化式をまとめると

$${\mathrm{Res}(\Gamma,-n)=\displaystyle\lim_{x\to -n}\frac{\Gamma(x+n+1)}{(-1)^n\,n!}}$$

$${\quad\qquad\qquad =\displaystyle\frac{\Gamma(-n+n+1)}{(-1)^n\,n!}}$$

$${\quad\qquad\qquad=\displaystyle\frac{(-1)^n}{\,n!}}$$

完了!
ガンマ関数の留数には、逆数が関わっていた。

メリン変換

メリン変換とは、関数$${f(x)}$$に対し、

$${\mathcal{M}[f](s)=\displaystyle\int_{0}^{\infty}f(x)x^{s-1}dx}$$

という新しい関数を作ること。

メリン変換の条件

厳密な条件は私も説明できるほど理解できていないので、強い条件で紹介します

・$${c_1\, ,\,c_2}$$を定数とし、
 $${x \le 1}$$で$${|f(x)|\le c_1 x^a}$$
 $${1 \le x}$$で$${|f(x)|\le c_2 x^b}$$


これが成り立つとき、メリン変換の式は$${a < s < b}$$で絶対収束、一様収束します。

メリン逆変換

なんと、メリン変換には逆変換があって、

$${a < \sigma < b}$$となる$${\sigma}$$に対して、

$${f(x)=\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\int_{\sigma-i\infty}^{\sigma+i\infty}\mathcal{M}[f](s)x^{-s}ds}$$

と、このように元に戻す方法が存在する。

ガンマ関数を逆変換すると、

一旦これを認めてもらうと、
ガンマ関数は

$${\Gamma(s)=\displaystyle\int_{0}^{\infty}e^{-x}x^{s-1}dx}$$

であった。(定義)
なんとこれは $${f(x)=e^{-x}}$$ のメリン変換になっている。

この積分は$${0<\Re(s)}$$で正則なので、適当な$${0<\sigma}$$を選べば、メリン逆変換より

$${e^{-x}=\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\int_{\sigma-i\infty}^{\sigma+i\infty}\Gamma(s)x^{-s}ds}$$

すげー。
ガンマ関数と複素数が混じったよく分からん積分が、指数関数になってる。

メリン逆変換の証明

毎度すみませんが完璧な証明ではない。
直感的に分かりやすい証明にはなっているかと思う。

途中デルタ関数が出てくるけど、分からない場合は、「そういう都合いいものがあるんだな、」と、思って頂ければ。

また、デルタ関数は関数では無い(超関数)なので、デルタ関数に変形される積分を数値計算しようと思ってもできない、ということを理解してくれれば良いです。

次が$${f(s)}$$になることを証明します。

$${\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\int_{\sigma-i\infty}^{\sigma+i\infty}\Bigg( \displaystyle\int_{0}^{\infty}f(x)x^{y-1}dx \Bigg)s^{-y}dy}$$

同じ指数の部分を括る

$${\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\int_{\sigma-i\infty}^{\sigma+i\infty}\Bigg( \displaystyle\int_{0}^{\infty}f(x)\Big(\frac{x}{s}\Big)^{y}\frac{dx}{x} \Bigg)dz}$$

変数変換  $${x=st}$$  ($${t}$$が新しい変数)

$${\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\int_{\sigma-i\infty}^{\sigma+i\infty}\Bigg( \displaystyle\int_{0}^{\infty}f(st)(t)^{y}\frac{dt}{t} \Bigg)dz}$$

外側の積分区間がややこしいので変数変換
$${y=iz+\sigma}$$

$${\displaystyle\frac{1}{2\pi}\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\Bigg( \displaystyle\int_{0}^{\infty}f(st)(t)^{iz+\sigma}\frac{dt}{t} \Bigg)dz}$$

$${\frac{dt}{t}}$$といえば変数変換 $${t=e^u}$$

$${\displaystyle\frac{1}{2\pi}\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\Bigg( \displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}f(se^u)e^{izu+\sigma u}du \Bigg)dz}$$

係数と$${z}$$で先に積分する
(もともと一様収束してたので良い(多分))

$${\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}f(se^u)\Bigg(\displaystyle\frac{1}{2\pi} \displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}e^{izu}dz \Bigg)e^{\sigma u}du}$$

この大きい括弧はデルタ関数となります。

$${\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}f(se^u)\delta(u)e^{\sigma u}du}$$


デルタ関数の定義、
$${\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\delta(x)f(x)dx=f(0)}$$   より、

$${\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}f(se^u)\delta(u)e^{\sigma u}du=f(s)}$$

終了。

考察

もはやここが本題だと思っているので、読んでほしい。

ガンマ関数の留数は

$${\mathit{Res}(\Gamma,-n)=\displaystyle\frac{(-1)^n}{\,n!}}$$

でした。そしてこれは、ガンマ関数を積分しても出てくる値となります。

では、ガンマ関数の極全てを囲うような積分をするとそうなるでしょうか。

イメージはこれ
黄色線を積分路として、極を囲うようにどんどん大きくする

×は極の位置

これは囲んだ極の留数の和なので、
無限にデカくすると

$${\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\oint_{C}\Gamma(z)dz=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-1)^n}{n!}}$$

おや、この級数は、、
$${e^{-1}}$$に収束する。

では、こんな関数なら?

$${\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\oint_{C}\Gamma(z)2^{-z}dz}$$

$${z=-n}$$の留数が$${2^{-(-n)}}$$倍されるので、、

$${\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\oint_{C}\Gamma(z)2^{-z}dz=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-2)^n}{n!}=e^{-2}}$$

おお。つまり、

$${\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\oint_{C}\Gamma(z)x^{-z}dz=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}\frac{(-x)^n}{n!}=e^{-x}}$$

なんとメリン逆変換っぽいものが作れた。

メリン逆変換の証明がなんか騙されてる感じがしたけど、これを見れば「そうかぁ」ってなる。

そして、もっと一般にいうと、
極を持たない関数$${g(x)}$$に対して、

$${\displaystyle\frac{1}{2i\pi}\displaystyle\oint_{C}\Gamma(z)g(-z)(-x)^{-z}dz\\ \qquad\qquad=\displaystyle\sum_{k=0}^{\infty}g(n)\frac{(x)^n}{n!}}$$

が成り立つ?(自分で考えたのでまだ謎)
右辺は$${g(x)}$$の指数型母関数で、
テイラー展開でよく出てくる形。

つまり、、
テイラー展開できる関数は、ガンマ関数の積分で表せられるという事。。!(多分)

すごい。

いやでも、メリン変換の方がすごいか。

いや、数学的事実だから必然か。

ここまでです。ありがとうございます。

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