「みんぱく映像民族誌」でバーチャル・フィールドワーク vol.1~第28集 中国雲南省大理盆地の回族~
フィールド選択の順序
さて、早速バーチャル・フィールドワークを始めます。
本プロジェクトの趣旨については前号をご参照ください。
第1集から36集まで順番に見て行くと途中で息切れしそうなので、
ランダムに抜き出して見て行くことにしました。
早速、どれにしようかな~と紙袋の中を見ないで、たまたま
手に納まったのが第28集「中国雲南省大理盆地の回族」
監修:横山廣子(国立民族学博物館 現・名誉教授)だったので、
ここからスタートすることにします。
本DVDには4つの番組が収録されています。
回族について
回族は中国に住むエスニックグループで、見た目は漢民族に近いけれど、イスラム教を信仰する人々。生活文化もムスリム文化です。
私は新疆ウイグル自治区に行ったことがありますが、首府のウルムチにはウイグル族だけでなく、回族の人々が多く住んでいるようでした。
新疆芸術学院(日本の芸大のようなところ)の学生食堂が、漢族、ウイグル族、回族が各階に分かれていました。
ムスリムの学生にハラール(豚や酒などを使わない)料理を出すためです。
回族の階でも一度ご飯を食べたのを思い出します。
それ以外は、私はほとんど回族のことについては無知でした。
このDVDに収録された映像は、新疆とは遠く離れた雲南省大理市の回族の話です。
1.回族の村の生活 雲南省大理盆地のイスラム教徒
[12分]
製作年:2017年
撮影年:2010年、2012年
手のひらの上で高速で描いているもので字が汚くて恐縮です。
★この映像で知ったこと、感じたこと(以下★マーク)
★撮影年度がわりと最近なこともあってか、田舎な感じがしない。ナレーションでも言っていたが村の道が非常にきれいに舗装されている。
★大理盆地(雲南省大理市)という土地について全然知らなかった。大理石の産地でその語源にもなっているという(映像には石の話は登場しない)。
★洱海(じかい)の青い色が美しい!
★回族=漢語を話す人々と思っていたがここの回族は他の少数民族のペー族と隣り合って暮らすため、ペー語を話すという。
◎この映像で疑問に思った点(以下◎マーク)
◎村人900人が全員同じ「馬」姓だとお互いどう呼び合うのか?
◎モスクの柱が緑色、書かれている文字も緑色なのは宗教的理由?(イスラームについて無知でごめんなさい)
◎ペー語は漢語と全然共通性ないのだろうか?
◎映像では一般家屋の屋上にとりつけられたソーラーパネルについて注目しているが、なぜ?(監修の横山廣子先生に伺わなければ。)
◎もともと回族女性がベールをまとう風習がなかったが、最近はかならず着用するようになったという。きっかけは何?
2.回族の婚礼 中国雲南省大理
[33分]
製作年:2015年
撮影年:2012年
★最初のシーンが牛の解体だった。
四肢に巻いたロープを四方向にひっぱって牛を倒すところから
はじまるのは、韓国の田舎で2013年に見せてもらった
村の牛の解体と全く同じだった。
◎アホン(阿訇)と呼ばれるイスラム教の指導者が
「神の御名のもとに」と唱えないと絶対に屠殺を出来ない
というのが特徴的だというが、藁束と浅いザルで
首を隠してあげるのは何か特別な意味があるのだろうか。
◎民具については映像ではとくに解説はないが、それぞれ何と呼ばれどんな使い方があるのか気になる。
★結婚式当日の朝、食事の用意をするときに、その前日に解体された
牛の肉を小さく切り分けてどんどん竹の籠に入れていた。
底が方形で、サイズ感としては小さな背負い籠ぐらいなので
生肉がガンガン入れられているのはちょっと見慣れない光景だった。
★結婚式当日の婿いじめの風習がここにもあるという。
新郎が新婦を迎えに来たのに新婦友人がみんなで
ドアを締切にしたり、新婦の靴を隠して行かせないようにして、
最終的には新郎に金を出せと迫る。みんな楽しそうだ。
湖畔の素敵なスポットで、青唐辛子に赤唐辛子を詰めたものを
新郎新婦に両端から食べさせるという王様ゲームのようなことを
やらせていた。これは韓国でもありそうだ。
新郎宅に着くころには近所の人が総出でバケツに水を入れて
屋上からバシャバシャ盛大にかける。
楽しそうだけど疲れそう。
★新郎とともに新郎友人がゾロゾロついて廻るのも笑える。
韓国では婚前に、新郎友人が新婦の家にゾロゾロと来て
結納の品が納まった箱を持って大騒ぎする風習があるが
それにも似ていると思った。
(私は実際友人の姉の結婚前にそれに遭遇したことがある。)
◎新郎新婦の新居寝室で、邪気を払うために
唐辛子を炊いて刺激臭を充満させるというが、
寝るときに喉や鼻が痛くて初夜どころではないのでは…?
★嫁入り道具として、新婦の家から家電を持ち帰る映像があったが
最近日本でもよく新生活応援安価フェアなどで見かけるようになった
Haier(ハイアール)の冷蔵庫だったのが面白かった。
◎新郎新婦が新郎の親戚にあいさつ回りに行くときに持って行く
丸い黒糖の塊が気になった。何かの型で固めているのだろうか?
上の赤い飾りはどんな意味があって何で出来ているのだろうか?
★結婚式後の数日間、ひたすらあいさつ回りとご馳走が続くそうだ。
花嫁の顔に鍋の底のススが塗りたくられていた。
◎ご馳走はかならず八品目で「中国伝統の八大椀」と
ナレーションで解説されていたが、漢族と共通という意味だろうか?
料理一品一品がどんな味なのか気になった。
◎そもそもこの映像の主人公の一人である新婦は
ペー族(非ムスリム)の家庭出身で、自動車教習所で
新郎と出会い、婚前にムスリムに改宗したという。
すごい決心だとは思うが、両家の細かい習慣の差や
実家との関係性の変化、家族の本音が気になる。
「後日談」を聞いた作品があったらいいのにな、と思った。
3.新築祝い 雲南省回族の家屋落成式典
[24分]
製作年:2017年
撮影年:2010年、2012年
★この作品は、食堂経営で成功した人が村に立派な家を建て
新築祝いで村中の人を招く日を撮っている。
◎ここでも食事の用意の様子がしっかり映っているが
それぞれどんな味なのか、大変気になる。
◎新築祝いでも、結婚式の返礼品と同じく黒糖の丸い塊が登場していた。
あれはどういう意味があるのか?後でどうやって使うのか?
★この映像の後半は、新築の家を建てた人のお父さんへのインタビュー映像。どんな仕事で生計を立てて来たかと聞くと、長い間村を出て薬草の商売をやっていたという。息子は継がずに遠隔地で食堂経営を始めたそうだ。
◎日本円にして2000万円もの豪邸(本当に豪邸)を建てられるような食堂とはどんなレストランなのか。お父さんはムスリムに限らず様々な民族が利用できる「大衆食堂」だと話していたが、できれば食堂の取材もしてほしかった。
4.アラビア書道家 雲南省大理市南五里橋村の回族
[27分]
製作年:2017年
撮影年:2012年
コーランの言葉などをアラビア文字で書く(描く)
アラビア書道で有名な馬慶鴻さんについての映像。
★書道は、出来上がった作品そのものよりも書いている最中の映像が面白いし、瞑想的であるということに気付いた
★取材か近所の人かわからないが、撮影時に馬慶鴻さんの後ろにずらっとならんで「ほぉ~」とか「ふぅ~」とか唸っているおじさんたちに親近感が湧いた。
★アラビア書道の道具が面白い。書体によって、布を巻き付けた木片、竹のヘラ、刷毛筆と大きく三種類に分けて使うそうだ。そのわきに、アラビア語の翻訳をした漢語を一般的な毛筆で書く。漢字とアラビア文字のコンビネーション、バランスが美しい。
◎書道を始める前に紙を結構がっちり折っちゃっているのが印象的。左右上下のバランスが重要だからだとは思うが、日本の書道ではやらなそう?
◎そういえば、紙と墨についての説明はなかった。墨は墨汁のボトルを使っていた。あまりこだわりがなさそう?
★映像の後半部はやはり監修者の横山廣子先生による馬慶鴻さんへのインタビューだったが、ここでのやりとり(質問の方向性)が参考になった。とくに、この村にアホン(イスラムの宗教指導者として認められた人)が何人いるのかという質問に対し馬さんが「160人」と答えたすぐ後に、村の人口は?と切り返し「1400人ぐらいですね」と答えたすぐ後に、「じゃあ1、2軒に1人はアホンがいるという計算ですね」とおっしゃっていたのには驚きだった。もともとご存知だったのだろうか?それとももしかしてスーパーコンピューター?
※私は計算が苦手なので、1400(村の総人口)÷160(アホンの人数)=8.75人(のうち1人はアホン)→1家庭が2~3世帯とすれば8,9人家族だから、1家庭または2家庭に1人はアホンを輩出しているという計算に至るまで5分位かかりました笑。
以上、大阪府の大理市よりバーチャル・フィールドワークの報告を終えます。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?