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言葉を知るーBean to Bar

Bean to Bar (ビーントゥーバー)という言葉は日本でもずいぶん浸透してきました。ところが、この言葉がいったいどういうものなのか?という定義について明確に答えることができる人というのは案外少ないかもしれないと思い改めて書くことにしました。

直訳すると、豆(Bean) ~へ(to) 板(Bar) というのがそれぞれの単語の直訳。つまりカカオ豆から板チョコへ という言葉がビーントゥーバーの意味。

だけどちょっと待って。板チョコって全部、主原料はカカオ豆なんだから、そういう意味だけだったら板チョコレートはぜーんぶBean to Barですよね。

一般的に、Bean to barに定義されているのは、「自社でカカオ豆の調達から行いカカオ豆の加工から一貫生産で自社でチョコレート生地まで作り製品化しているもの」です。

これは、歴史的背景としてはそれまでのチョコレート専門店で販売されているチョコレートは、チョコレートの原料となるクーベルチュールチョコレート原料メーカーからチョコレート生地として仕入れをして、そのチョコレーっとを溶かしたり混ぜたりという加工をして商品化したものを販売していました。自社で行うのはチョコレート生地を扱うところから。

それは、チョコレートを作る機械というのが大がかりな装置産業であり大量生産する大手メーカーから入手するしか方法がなかったということと、そうしたメーカーは本職としてそのチョコレート生地を再加工しやすいように研究しそれぞれの用途に応じたレシピで原料を作っていたこと、や、いつでも同じ品質のものを使いたいという要望に応えることができるのは量が多く作られたもので品質や風味の特徴をいつでも同じように提供できた、という背景があります。

ところが、既存のチョコレート専門店とは異なりカカオ豆と出会い自分で自作の機械など個人でも入手できるような道具を使ってチョコレートを作って販売する人たちが出てきました。

その人たちが、既存のチョコレートメーカーさんとは違って自分たちでカカオの加工を行ってチョコを作っているんだ、ということを表現するために「Bean to Bar」を作っているんだよ、という言葉を使い始めたのです。

つまり同じ「チョコレート」ですがすれまでとは違う作業領域や手法でスタとした新しいジャンル、だったわけです。

韓国のショコラエオブジェさんとお話したときのことが私にとっては印象的でしたのでご紹介ですが、海外の方とお話する際に英語でのやりとりになり、オーナーのユンさんが自己紹介されるときにbean to barという言葉を使われました。それが私にとってはbean to barという言葉との出会いでした。

(ちなみに現在は、ソウル市内でcacaodadaさんというブランド名になっております。)お会いしたのは2011年が最初だったと記憶しています。bean to barブランドとして象徴的なアメリカブルックリンのマストブラザーズさんがスタートしたのは2007年。このあたりからこうした「自分たちで手探りで作り方や製造用の機械を試行錯誤してカカオ豆の加工からつくりはじめた」主に小規模生産のチョコレートブランドが世界各地で出てきていました。製造プロセスのあらゆるアイディアは知識を共有したりシェアするクレイゴードンさんのサイト「Chocolate Life」などあらゆるSNSなどで交流するなどして例えば、掃除機を利用したカカオ豆の殻をはずす機械を自作する方法など世界中のカカオからチョコレートづくりを挑戦した人たちの知識のアップデートが今につながっているように思います。そして、その技術や、知識、テクニックは現在進行形でまだまだ発展の余地があるのです。そこで登場したのが、私も参加している2012年に創設されたインターナショナルチョコレートアワードです。

こうした小規模生産で試行錯誤しながらもカカオ生産者とつながりカカオ豆からチョコレートを作っていく、そんな人たちにフィードバックをしたり賞を授与することで販売のセールスポイントになり売り上げ向上につなげることができたり、という活性化を行っています。

ビーントゥーバーというのは、今までの既存のチョコレート職人の仕事とは違う流れで出てきたチョコレート製法を識別するために生まれた言葉といえます。



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