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愛しさと切なさと心強さのブレンドをショットで。「ミッドナイトスワン」【ネタバレあり】

先日、「ビジネスストーリメイキング講座」に参加して、めっちゃ心動いたよ!という話を書きましたが、

そこで「作品に触れたとき、最も重要な演出や、感動したところについての演出についてブログ書くといいよ!」という話がありました。


「あー、mixiやってた学生時代は毎日本や映画の感想書いてたなぁ〜あの頃は楽しかったなぁ〜」・・・郷愁、いやいや、行動だ!!


今日は「ミッドナイトスワン 」について書こうと思う。
※やんわりネタバレあるので、ご注意を。

まさに「鳥肌が立つほどかっこいい」ミッドナイトスワン 

愛しさと切なさと心強さのブレンドをショットで飲むような感覚の映画。
え?よくわかんない?(笑)
この街のどこかの、きらびやかだけど暗い場所で、痛いほど苦しくて、でも一瞬の美しさを発見する。観賞後はクラクラする。映画に二日酔いしてる感覚がずーっと続く。

そんな観賞後のドロドロ、モヤモヤ、ツーンとした感情をうまく言葉にできなかったのですが「愛しさと、切なさと、心強さ」が一緒に並ぶ感覚ってこういうことか!!と、2週間経ってやっと合点したのです。
あの歌の、結構しんどい版か、と。


「ミッドナイトスワン」は、トランスジェンダーの主人公・凪沙と、母親から虐待を受け、愛を知らない少女・一果が共同生活をすることで始まる、2人の変化の話です。


最も心動いたシーンは、「凪沙が覚悟を決め、一歩踏み出した(性転換手術)のに報われず、衝撃的な姿になってしまった」場面でした。

えっ???うそ、これはバッドエンドなの・・・??報われないの????
混乱する私。

そのシーンが、映画を観た1週間後も2週間後も脳裏を離れず、もはや脳ミソ内に刺青のように彫刻されたてしまった。それくらいショッキングでした。最後の最後で、凪沙的ハッピーエンドになったのですが、しばらく席を立てず、落ち込みました。なぜこのシーンに一番心動いたのか、分析してみます。

1.これからやっとハッピーになる!と思わせておいて、予想もしなかった展開へ

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このスプラッシュマウンテンも驚く急降下、すごい。
いろいろ辛いこともあったけど、やっと、やっと幸せになれるよ!!やったね凪沙!!と喜ぶ準備をしていたのに、場面を追うごとに「??」続出の不穏な演出。

あれ、アパート変わったの?
えっ、なんでこんなに部屋が汚いの?あのラブリーなお部屋は?
ん?なんの声?もしかして凪沙が誰かとラブシーン中?(んなわけない)

と、襖を開けると、鶴の恩返し以上の衝撃が・・・!!!
その直後凪沙から発せられるセリフも「おむつ早く替えなさいよ…」で、生っぽくて。その後、初めて一果がちゃんと凪沙へ正直な言葉「ごめんなさい、ごめんなさい…」を投げかけたところで、さらにメンタル崩壊でした。


私もそうだったけど、(親はそのつもりでも)子どもはなかなか親からの愛情を認識できません…当たり前になってしまうからかな。どこまでいけば、親の命がけの愛に気づけるのか?家族だから愛を感じるのか?虐待をしていない時間の実親の行動は愛なのか?本当の親子じゃなくても、親子のような愛は可能なのか?愛ってそもそもなんだ?

いろんな問いが現れました。
愛って、あったかいけど、しんどい…。

2.人物の設定は特殊だけど、誰でも抱いたことがある感情

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「なりたい自分になりたい。本当の自分になりたい。なのに、なんで自分だけ???」登場人物と全く境遇は違うのに、自分のことのように共感しました。もしかして、この感情はある程度誰でも抱くものなのか?


その感情をより際立たせるために用意した設定が、虐待やトランスジェンダーだったのか。しかも凪沙は最後死んでしまう。全編通じて辛い展開で、これほどの試練を登場人物たちに与えなければ、私たち自身は、自分の感情や想像力や、誰かが叫ぶ言葉にならない愛に鈍感になってしまったのか。

「なりたい自分になりたい。本当の自分になりたい。なのに、なんで自分だけ?ありのままの自分で、私も当たり前に愛したいし、愛されたい」きっと誰しも一度は感じたことがあるこの感情に、映画が寄り添うために、彼女たち2人は必要だったのだ。おかげで、本当に今のこの街のどこかで一果も凪沙もりんも生きているようで、彼女たちはどうしているかな…ちゃんと元気に暮らしているかな…という気になる。それほど、人物にリアリティと共感を抱いた。


テーマとコンセプトを、想像してみよう

さて!私なりにテーマ(問い)と、コンセプト(問いに答えるための方法、表現方法)、映画を通じて伝えたい感情を想像してみた。

テーマ:常識や性を超えた愛の形とは?
コンセプト:孤独を抱える擬似親子のすれ違い、ぶつかり合い、ナギサの一果への才能の気付きを通じて、愛の芽生えを描く。
感情:どんな自分でも、愛とともにあれるという、愛しさと切なさと心強さを感じる

最後に

全体的に重いテーマと暗い映画だが、そこに光を差し込むのがバレエの美しいシーンとピアノの旋律。一果が舞うたびに、心もフワッと軽くなる。
ピアノの旋律を聴くだけで涙が…。

まるで愛の美しさを象徴しているようでもあった。
久しぶりに席から立てなくなる映画だった。


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