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【小説】マザージャーニー / うごけ、春 5

本作は2020年「News Picks New School 大友啓史×佐渡島庸平『ビジネスストーリーメイキング講座』の6ヶ月間で作り上げ、kindleには販売中の小説です。

この6ヶ月間は私にとって、転機となる半年間でした。知りたかった学び、出会いたかった仲間、本当に楽しく作品と向き合い続けることができました。
本作を完成させるにあたり、大友啓史監督、株式会社コルク 代表取締役 佐渡島庸平さんはじめ、同じ受講生の仲間たち、運営スタッフのみなさま、そして新たなチャレンジを応援してくれた夫より、多くの助言をいただきました。

note用に少しだけ微修正してます。
ぜひご覧くださいね。



「おはよう」

朝ごはんの食卓に、お父さんがのそりとやって来た。


「……はよ」

気まずい。いや、分からない。

お父さんはあべこべなのか、私があべこべなのか。昨日から、はずかしい気持ちと、分からない気持ちがごちゃまぜになって、どうしたらいいか分からなくなった。


「昨日は、」

 とお父さんが言いかけたところで、ごちそうさま!と早口でかぶせて、私は逃げた。


******

 ふう、とため息をした。まだ胸がどきどきする。深呼吸しながら作業場脇の畑に行くと、ワラのすき間から首を曲げて開きそうな、大豆の芽を見つけた。

「わ……!」

 なんで?

 袋の中だとただの豆なのに、土をかぶせたとたん、芽を出すなんて。これは私だけが見たまほうだ、秘密にしようと思った。

「豆がすごいのか、土がすごいのか……しんでるんじゃなくて、生きてたの」しゃがんで、開きかけの大豆の葉をながめる。


「だよなぁ、すごいよなぁ」

 頭の上から声がして、わっと尻もちをついた。ケンさんが上から顔をのぞきこんでいた。

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2,833字

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