たった10kgのさつまいもから始まった干し芋、県内量販店41店舗販売までの道のり
捨てる神あれば、拾う神あり…。
2018年干し芋加工所建設に失敗した私たちだけど、いろんな山谷ありながら、今年から私たちの干し芋が、新潟県のウオロク全41店舗で販売開始しました!
ウオロクさんは新潟県を中心に展開する、もうそれはそれは県民なら誰でも知ってるであろう量販店。ネットショップの干し芋自体も今月で完売し、ウオロクさんでの販売も終了。次は今年の12月ごろ再開できればと!
今回のウオロクさんでの販売は、私にとっては感無量な出来事だった・・・。
そもそもなんでこんなに「農産物加工」にお熱だったのか。
まず、ここ雪国では一年の半分が雪に埋もれているため、
農家の冬の仕事創出
が長年の課題だった。しかし移住・就農したばかりの11年前からの冬は、当時いた牛と鶏の世話と除雪ばかりしていた。
私と牛と鶏が生きるための除雪で一日が終わる日がほとんど…(この雪、春には消えるのに…)
(↑当時1人で住んでいた廃校。豪雪の日は、道路に出るまでの除雪と鶏小屋までの除雪&餌やりで半日が終わる)
(二階の高さ並に積もった雪から、滑り落ちるように牛舎に入る…)
加えて、地域で屋根の雪おろしのバイトなんかもしていた。
時間があるようでない冬。
今ごろ東京で就職した同級生たちはバリバリ働いているだろうに、私は春に消える雪を、自分たちが冬を生き抜くためにただただ除雪する日々…これでいいんだろうか(滝汗)
私の「なんかやらねば」スイッチが入った。
そこで最初に頑張ったことは、「夏は栽培に集中!だから冬こそ直販を頑張ろう!」だった。
農業体験に来てくれた人、知り合った人に地道にお手紙と注文用紙を送る日々…(当日はメールかファックスで受発注していた)
そして新たなお客様に出会うべく、生産した米や芋を持って東京へ。
しかし私は気付いた。
米も芋も重すぎて、私を知ってる人しか買わぬと(昔のパッケージ懐かしい)。
重いから買わない。
すぐ食べれないから買わない。
てことは、「これ、軽くしてすぐ開けて食べれるようにしたら、流通性高まるんやろか?」と委託加工で、手を変え品を変え重たい米や芋を加工するようになった。例えば米粉のドーナッツやシフォンケーキなど!
しかし賞味期限が短すぎて、店舗も持たぬ一農家では、なかなか思うように売ることが難しかった。売りたいタイミングとお客様が食べたいタイミングって意外と合わないもんだな…。
試行錯誤、いろんなものを作っては却下し、最終的にご縁ができて生まれたのが干し芋だった。
今や幻の初期パッケージ!!!
最初に作ってくれた試作品が、感動的に美味しかった。
その時は、師匠が作る雪国のさつまいもがなぜ美味しいのかを言語化できなかった。最近理解できるようになり、これはまた長くなるので後日書くとして、とにかくめちゃめちゃ美味しかった。
これはと鼻息を荒くし、いろんな芋も栽培してみた。
ふむふむ。美味しさ、干し芋にした時の蜜感や土壌や栽培期間との相性により、べにはるかに決定。
2012年から、最初はFacebookの投稿を通じて、確か30袋ほど販売。
少しずつ顧客リストが増えてきた。
よし、ちゃんとしたECサイトを作るぞと、Jindoという無料でホームページを作れるサービスを使って、自分でデザインも勉強し、自作した。
(当時のwebサイト)
その頃「ネットショップやるんやったら、クレジットで買えないとその時点でアウトやで」とお客様から助言いただき、速攻クレジット対応できるサイト作りへ。
しっかり投資せなあかんと、素人作りのHPからリニューアルし、クレジット対応にしたこと、受発注メールをしっかり送れること、クロネコのシステムを通じて色々できることが増えたことで、一気にお客様が広がった。
助言くださった方、本当にありがとう!!!(涙)
もう一つ、お客様がぐんと伸びたきっかけがもう一つある。
サイト一新に合わせてパッケージデザインも刷新したのだ。
というのも、自分の想いと、アウトプットとしてできた商品のデザインの不一致感にモヤモヤしていた。直接顔を見てではなく、ネットショップで売るからこそ、どうやったら想いは伝わるんだろう?ばかり考えていた。
また、こんなに美味しいからこそ、この干し芋さんをゴディバにしてあげたいと本当に思った。
とても美味しいのに、中身のすごさに合わないお洋服を着せられている農産物さんをたくさん見てきたからだ。
そんなこんなで「ブランドづくり」の本をかなり読み漁って、とことん言語化した時期だった。
美味しいだけではだめだ。美味しいは当たり前として、深く伝わらないと、そして心を動かさねば。そしてこの干し芋を応援していただけるようにならないと、買い続けてくださる、という行為までいかない、末永いお付き合いのお客様にならない、というのも、出張販売や直販で痛感したから。
そうして、熱い熱い想いをデザインにしてくださり、完成!!
見た目、ほんっとうに重要。めちゃめちゃ重要だった。
このあたりから商品と私とツール(webやパッケージ)に統一感が出て、お客様に伝わるようになり、より干し芋がぐんと広まるようになったと感じる。
そうして少しずつ規模拡大をしていった。
市内店舗でおいてくださる方も増えたり、十日町市のカタログギフトに掲載いただいたり。
途中、干し芋のギフトボックスがアジアのデザイン賞を受賞するという青天の霹靂も起きた。
そして去年。
一緒に新規就農者として頑張ってきた知り合いの農家さんが、ある話を持ちかけてくださった。
「ウオロクさんが、県内産の干し芋を探してるから、打ち合わせしてみる?」
まさに青天の霹靂どころか、大地が割れるほどの驚きだった。
いやいや待て待て、でも本当に大丈夫か?
今まで私自身、ネットショップを通じて、直接お客様にお届けするスタイルで続けてきた。当時の直販率は70%、年によっては90%近くになっていた。普通の農家さんのように市場出荷というのもをしたことがなかった。
量販店さんへの販売も未知の世界だった。
そして勝手ながら、、、「大きいところは、農家を買い叩くんやろ」と思っていた。違う量販店さんだが、農家さんからあまりいい話を聞かない店舗もあった。よって私の中で「量販店とかスーパーとか百貨店とか…とにかくデカイとこ、怖い・・・」という感情が無意識の中にあった。
ところが半信半疑で会った流通の方、市場の方、ウオロクのバイヤーの方、みんなめちゃめちゃいい人だったのだ!!!!
うちみたいな弱小農家を相手に、こ、こんなに条件を合わせてくれて、優しいなんて・・・も、もしかして私、騙されてるんやろか・・・。と本気で思った。
なぜなら、2018年の加工所建設失敗により、強烈な人間不信に陥っていたからだ。人類の9割は怖くて嘘つきで信用できへんと、ブラックホールモード可奈子になっていた。
それをどんどん覆してく、やさしい人たち。
(いやいや、こんなにいいことがあったら、次に絶対悪いことが起こるんやでと構える私)
正直でいよう。これが加工所失敗からの私の教訓となっていた。
だから、私の不安も全部話した。できないことも話した。
その話し合いの中で、もしかしたら一緒に走ってみることで、より実現したい未来が近づくんでないか?と思うようになった。
それは、私が大好きな心動く里山が、残り続けること。
「里山農業から心動く世界を」届けたいと思い続けていたことが、より実現に近づくこと。
そして2018年、加工所建設失敗したけど、もう一度立ち上がれるんではないかという光が見えたこと・・・。
よし、と手を取り合った。本当に感謝しかなかった。私が一人でできないことを、いろんな立場の人たちの力によって、現実になってゆく。
そうしてとうとう、私たちの干し芋が県内全店舗に並んだ!!
店舗の入り口の特別コーナーに、しっかり置いてくださってて感動・・・。
観光客かのように、記念写真。
そして見たことのあるパッケージに、一緒に興奮してくれる娘。
手放さない娘。
結局自分で自分の商品を買ってくことに!
「これね、私が育てたお芋なんだよ!!」
「えぇ、そうなんですかぁ」
「あ、はい……(人見知り)」
帰りの車の中でも、手放さない娘…。
そのまま眠りにつきましたとさ…。
(隣で長女がありえない体制で寝てるやないか・・・)
いろんな人の力を借りながら、遠くへ遠くへ飛んでゆく、私たちの想いと商品。
緊張する。
このこたち、大丈夫でしたか?と。。。
もっともっと、アップデートしてこう。
もっともっと、たくさんの人に、届けてこう。
どんどん羽ばたけ、美味しいお芋!
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【これから加工や直販にチャレンジしたい農家さんに向けてメモ】
<なぜ商品が遠くへ飛んでいくことができたのか?分析>
・そもそも市内で、県内で地元産さつまいもを使った干し芋がなかった
(あったとしても小規模)
・委託加工から販売を始めて、スモールスタートができた。また委託加工により、美味しい原料作りと販売に注力しながら、規模拡大をすることができた
・軽くて、開けたらすぐ食べれて、人に配りやすい。デザインも可愛くてお土産にできるのがいい。そういうのが地元になかった(とお客様に言われた)
・しかし「ないものを作ろう」精神は大事だが、一般的にある程度のパイがあるカテゴリであることも大事そうだ
・想いと見た目(デザイン)が合致して、届きやすくなった
・認知のためにはネットショップであっても、リアルの出会いも大事だった
・とにかくそもそもとても美味しい
<より商品の想いや背景を届けるためにアップデートし続けていること>
・美味しい理由の言語化
(感覚ではなく、具体的になぜ美味しいのか、数値も出しつつ)
・そのネーミング(商品名)である意味の推敲
・売り場(店舗かネットか)によってパッケージを微調整
・この商品が存在する意味を自分にも問い続ける
・こんなふうに届けれたら…ロールモデルを日々チェック
(当初は北欧暮らしの道具店さん、最近はMr.cheesecakeさん)
・栽培、加工風景をどんどん出して伝える
いただいたサポートは、里山農業からの新しいチャレンジやワクワクするものづくりに投資して、言葉にしてnoteで届けてまいります!よろしくお願いします。