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【小説】マザージャーニー / 変われ、夏 2

本作は2020年「News Picks New School 大友啓史×佐渡島庸平『ビジネスストーリーメイキング講座』の6ヶ月間で作り上げ、kindleには販売中の小説です。

この6ヶ月間は私にとって、転機となる半年間でした。知りたかった学び、出会いたかった仲間、本当に楽しく作品と向き合い続けることができました。
本作を完成させるにあたり、大友啓史監督、株式会社コルク 代表取締役 佐渡島庸平さんはじめ、同じ受講生の仲間たち、運営スタッフのみなさま、そして新たなチャレンジを応援してくれた夫より、多くの助言をいただきました。

note用に少しだけ微修正してます。
ぜひご覧くださいね。

↑はじめからはこちらより


翌日、鏡の前に立った。できることを、やろう。
作業場で、草刈機を修理していたケンさんに声をかけた。

「ケンさん、綱あります?」

「網ぃ? 何に使うんだ」

「田んぼ、ぐるっと囲いたいんです」

「あー、獣対策?それなら奥に双葉の母ちゃんが昔使ってた、ネット柵ならあるかな」

「そうなんですか!」

「今出すよ」

「あと、川の水をくみ上げる何かってないですか」

「川の水ぅ? 水利権の問題あるから、そもそもいいのかどうか」

「そっかぁ」

「水汲んでどうすんの?」

「田んぼがカラッカラなんです……」

「あー。うちもやばいよ。ただでさえ水少ないのに、上の方の田んぼで、水いっぱい取っちゃってる人もいるからねー」

「どーしよ」

「な」


ケンさんからネット柵を受け取り、田んぼの周りをぐるぐる囲んだ。

そして、家で二個のバケツに水をたっぷりくみ、台車で運んだ。勢いよく田んぼへ、ばしゃあんと水をあけた。

田んぼはヒビが割れたまま、ちょっと湿っただけだった。

これくらいじゃ、意味ない。でもたくさんバケツを運ぶのもしんどい。私、これっぽっちのことしかできない。

これっぽっちしかできない自分に、絶望した。

***


家に戻ると、家の前にぽつんとヨワオが立っていた。一気に力が抜けた。どこまでもついてくるヨワオに疲れてきた。無視して通りすぎようとした。

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1,367字

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