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産後1ヶ月ぶりに外に出てワタワタしてたら気づいたこと

夏の名残が、薄く秋空を覆う。
スコンと抜けるような青空。どこからから流れてくる風になる前の風は、ひんやりしているが、日差しはビリビリとまぶたを刺してきた。


蛍光色のナイロンジャケットを羽織り、うっすら泥はねが残るキャップをぎゅっとかぶる。
1ヶ月半ぶりに、外に出た。
晴れた。
いつの間にか田んぼの稲は刈られて空っぽになり、農道に垂れる草たちは黄色みを帯び、景色は彩度を落としていた。産後1ヶ月と少し、ずっと家の中で赤ちゃんといる間にも、世界はちゃんと変化していた。


その日は、さつまいもの生産者さんたちと、収穫シーズン前の選別基準目合わせ会だった。
緊張した。
久しぶりに外に出る。
久しぶりにたくさんの人に会う。
久しぶりに畑に行く。あああ。

いよいよ収穫シーズンが始まる。始まってしまえばもうここから加工シーズン、そして販売シーズンが終わるまで、時間はどんどん駆け足となって1月行って2月逃げて3月去るの如くすぎてゆくのが想像できる。

私にとっては今日からだったけれど、生産者さんたちはすでに9月からの稲刈り繁忙期の中にいて、めまぐるしさのど真ん中にいる。まだまだ続く繁忙期、疲れが出るころだけど、少しでもワクワクを共有できたらいいな。


そう、つい先週の役員で確認したのだ。
私たちは

「里山農業を、心うごく世界に」したい。

もっとワクワクしたい。もっと楽しみたい。それを一番大事にしたい。
改めてそれを胸き刻みながら、圃場に向かった。

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さて、圃場に着くと、すでにパラパラと生産者さんたちが集まっていた。
久しぶりの恋人に会うかのごとく、なんだか無性に嬉しかった。ドキドキした。でも緊張して、その喜びをうまく表現できなくて、どもってしまって、どう接していいか分からなくなった…(コミュ障)

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緊張したまま、さつまいもの選別についての説明をして、
でも自分でもなんだかうまく説明できてない感じがして、変な汗が出てきた。
そしてまたどもる……。

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↑多分ワタワタしてる私の背中


「こうやって曲がった芋はどうする?」
「皮が剥けてしまったのはどうかな?」
「この芋は、惣菜加工できそう」


自然とみんなの会話が繋がっていって、それにほかの役員の方がいい感じに説明してくれて、結局後ろからそっと見守る感じになってしまった(汗)頭が全然働いていない産後の私を痛感……。

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そうして、会話が繋がりながら、自然と機械操縦を見てもらい、またみんなであーだこーだと確認したりアイデアを出しあったり、向こうでは少しずつ選別し確認し合ったりが始まった。


あれ?


……なんだか、心地いいな、と思った。

男性もいて、女性もいて、若い人もいて、大先輩もいて、こどももいた。
そしてみんなが、本気で、自分ごとで、一生懸命だった。
その一生懸命っていうのは、「実践し続けている人たち」だからだ。

ここにいる一人一人の実践者が、今ここにいることが嬉しくて嬉しくて、胸がいっぱいになった。

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そう、本気で一生懸命な実践者たちとの空間が大好きだ。
実践者はまっすぐで、うそがなくて、どんどん挑戦する。挑戦に対して、すごくやわらかい。私もそうありたい!

「里山農業を、心うごく世界に」って、
その人たちを私一人でどうしてやろうって話じゃなくて、みんなが一緒にもっともっとワクワクできたり熱中できたり、ドキドキするような夢を語れるような環境を作るのが大事なんだった。
そこに権威的なリーダーシップはいらない。
今まで人と関わるなかで、どうやって人をやる気にさせたらいいのだろう、成長させたらいいのだろうと悩むことが多かった。それは相手を操縦するような価値観だったかもしれない。そうじゃない。


その人が、その人のままで、ワクワクできるような環境づくりをしなきゃ。
それが難しいんだけどね……でもその日、ちょっとだけ、もやの中にかすかに指に何かが触れるような感覚を感じた気がした。

✳︎ ✳︎ ✳︎

「今年、干し芋工場から、たくさんの芋の皮の生ゴミが出ちゃうんですよ。何かいいアイデアないですかね…」

「あそこに堆肥場があるから聞いてみようか」
「きのこ工場で、一緒に混ぜて専用の堆肥を作ったらどうか」
「豚のエサにすごく良くて、どこかの養豚場が使えないか」
「いや、むしろ自分たちで豚やって、さつまいも豚ブランド作るか!」
「豚事業にも進出ですか!!」

はははと笑い声が畑に響く。

いつまでも、この秋空の下で、みんなのワクワクを感じていたいと思った。

いただいたサポートは、里山農業からの新しいチャレンジやワクワクするものづくりに投資して、言葉にしてnoteで届けてまいります!よろしくお願いします。