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最後の一錠

夜勤明け、庭に咲いている白梅が満開で、あまりに眩しくて美しくてシャッターを切る。眩しいのは寝不足なせいなのだけれども、ごく当たり前に美しいものを美しいと思える感覚を持てて幸せだなと思う。

PTSDの治療を始めて3年以上が経つ。
昨日、医者から最後の一錠を減らしていきましょうという指示が出た。症状が寛解するまで一年半、減薬をはじめてから一年半以上、薬を増やすよりも減らすほうが時間がかかる。
そして、寛解といっても、完治といっても、未だ消えない不快感は残っている。
さっき、父親を食事に誘って車に乗ってもらったが、家族や親類に関わらず後部座席に人が乗っている感触は度合いこそ小さいものの不快感を伴う。息子の友人が乗り合わせたとき、運転座席を蹴ったときは思わず降りてもらおうかと思ったほど、コンディションによっては受け付けない。治療を始めた頃は常に上着のポケットには耳栓が入っていた。そんなこんな、やっとこさ辿り着いた治療の最終段階である。

先々月、最後の二錠のうちの一錠を減らして、脳が活性化されて眠れなくなるし、仕事中イライラするし、何より性欲がコントロール出来ない謎の現象がキツかった(笑)!
それでも二ヶ月目には落ち着いてきて平穏にはなった。

飲み始めたとき、吐き気が止まらなかった薬を、倍の時間をかけて抜いていく。
自分の力ではどうにもならなかったことを薬が解決してくれたけれど、今後は薬に頼らず自分の傷や弱さを律していく。
なんて書くとすごく難しそうに感じるが、三年かけて少しずつ普通の幸せを取り戻してきたと思う。美しいものを美しいと思い、好きなものを好きと言える感覚を。治って終わりと一筋縄ではいかないかもしれないし、治療が終結しても大きさが変わっただけで症状は消えないかもしれない。それでもいいや。
わたしも子どもたちも笑って過ごせているのだから。最後の一錠がなくなったことを噛み締めながら、また数週間、離脱症状に負けないようにしよう。



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今日もあなたが安らいで眠れますように。最後までお読みくださりありがとうございます。
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