#8 7時45分

6月9日、早朝3時。
麻酔のおかげで少し寝ていた私、先生の声で目覚める。

保冷剤を身体の色んなところにあてて、硬膜外麻酔の効きを確認する。
腕、冷たい。
左足、冷たくない。
右足、冷たい。
左の下腹、冷たくない。
右の下腹、冷たい。

どうやら、効いているはずの右下半身、保冷剤がちゃっかり冷たい。
麻酔の効きが悪いみたい。
 
このままラミナリア抜くと、恐らく激痛。
「じゃあこれからラミナリア抜くからね、しばらく眠ってもらいますよ~」
強制的に全身麻酔に切り替え。
痛いの嫌だからありがたいけど、ここから麻酔漬けの一日が始まる。

この時の全身麻酔は、どんな内容だったかあまり覚えておらず…
とりあえず思いっきり肩をたたかれて、目が覚めた時「ここはどこですか…同じ部屋ですか…」って確認した。
違う場所に連れてこられた感覚だったのよね。

硬膜外麻酔も継続して入れてもらってたから、昨日のような麻酔あけの激痛は特になし。
ラミナリアを抜くときに、1回目の陣痛促進剤も入れてもらったので、後は出産を待つのみ。

全身麻酔が抜けてくると、徐々に右下腹部の痛みが辛くなってくる…
やっぱり右側効いてないみたい。
先生に相談すると、「右を下にして横になってください」とのこと。
そこからずっと横向いてたから腰が痛くて砕けるかと思った。

出産は旦那さん立ち合い希望だったので、何時頃呼べば良いか相談すると、2回目の陣痛促進剤を6時頃に入れるので、その時で問題ないとのこと。
※陣痛促進剤は、3時間は間隔をあけないといけない。

6時過ぎには旦那さんに来てもらう。
その時にはすでに破水していて、麻酔の効いていない右下半身が定期的に痛む。
あぁこれが陣痛ってやつか。
麻酔のオプションをつけたので、本当は陣痛を味わう予定ではなかったけど、効きが悪いのでちゃっかり陣痛を経験する。

でも、そのおかげで、陣痛の間隔が短くなってきて、息ぐるしくなってきて、産まれそう…っていうのが分かった。
予定外の分娩が重なったのか?
なかなか私の部屋に様子を見に来てくれない先生と助産師さん。
陣痛に耐えられなくなり、旦那さんからナースコールしてもらう。
まさかの、もう赤ちゃん半分くらい出てきてた。
「7時45分ですね」
産声のあげない、静かな出産だった。
小さいから、出てくるときは全然痛くなかった。
その事実に、涙が溢れた。

助産師さんに赤ちゃんはだしてもらったのだけど、胎盤が完全に出てこない。
「ちょっと様子みて、出てこないようだったら先生に出してもらいますね」
と言われて、そこからしばらく放置される。

私の子は、もう死んでるんだもんな。
周りの命ある出産を優先するよな…。赤ちゃんごめんね。

そのあと、また陣痛のような痛みが襲ってくる。
息苦しくなる、耐えられなくなる。
また旦那さんにナースコールしてもらうと、やっと先生が来てくれた。
「胎盤を出すので、また眠ってもらいますね」
恐らく硬膜外麻酔の効きが悪いので、痛みを感じさせないために全身麻酔にしてくれたのだと思う。

出産後の全身麻酔は、【モノノ怪】というアニメの【座敷童子】の世界に入り込んでいた。
自分の子どもを救いたくて、必死に逃げている世界。
麻酔から目が覚めた時、アニメの世界にいたこと。「赤ちゃん救えなかった…」と、旦那さんにつぶやいたという。

胎盤も取り除かれると、びっくりするくらいあらゆる痛みが無くなった。
麻酔が切れるまでは、そのまま分娩室で安静にしなければならず、旦那さんと話ししたり、ちょっと眠ったりして時間を過ごした。

意識がしっかりしてきて、分娩台の上だったら多少身体も動かせるようになったころ、やっと赤ちゃんと対面することに。

とても小さくて、可愛い、私と旦那さんの子ども

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