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【産婦人科のリハビリ日記】#30. 帝王切開の後の起き上がりが大変

クリニックでの理学療法士の介入はまだまだ少なくて
「えっ!?産婦人科に理学療法士さんがいるんですね!?」と
驚かれることも時々あります。

理学療法士として産婦人科にいてよかったなと思ったことの一つが
帝王切開の産後の方のフォローをしたとき。


●産婦人科は「基本的には動ける」対象者さん

元々理学療法士として病院に勤務していた頃は、どちらかというと「どう見ても動作が困難な方」が対象でした。
でも、産婦人科って(特に私の場合はクリニックなので、産婦人科の中でもリスクが低めの方ばかりが対象になるので)基本的には「動ける」対象者さんなんですよね。

●動けるけど、痛みが強い。
●動けるし痛みというほどでもないけど、なんか違和感がある。
●動けるけど、なんかグラグラして動きづらい

対応としては、整形外科的なリハビリのイメージをしていただくとわかりやすいかもしれません。

●帝王切開の術後は起き上がれない方がいる

そんな中で、ある時クリニックで出会ったママさん。
いつものように「何か体のことで気になることはありますか?」とお尋ねすると、


今は痛くてギャッジアップで起きてるんですけど
私、家に帰ったらどうやって起きたらいいですか?
明日、もう退院なんです…

と、とても不安そうにおっしゃっていました。

お腹の傷の痛みで起きられないのかと思いきや、よくよくお話を伺うと股関節の痛み。
動作を見ていると、明らかに腹筋が使えない代償によるものでした。

妊娠を経験したことでインナーユニットが使いづらい環境にあるのは、皆さんそうなんですが、帝王切開の場合は特に腹横筋が使いづらくなる方も多く、完全に入力がない状態の方も割とみえます。

腹横筋が使えないと、上腹部に腹圧をかけてしまうことで、かえってお腹の傷に対して伸長的な負荷をかけてしまい傷の痛みが強く出る方はよくいらっしゃるんですが、この方はそれ以上に、代償による過負荷が辛かったようでした。


●起き上がり動作を練習する

こうなると、もう理学療法士の強い所ですよね。
なんかものすごく久しぶりに「病院でのリハビリをしている」という感覚。

産婦人科は、基本動作能力の低下が見られていたとしても、産科的に問題がなければ4日5日で退院するので、なんとかしてあげないと、家で困ってしまいます。

●取り急ぎ、腹帯を処方し
●適切に腹圧をかけながら下肢を動かす練習。
●それとともに、基本の起き上がり動作の練習。

帝王切開の術後で起き上がりが難しい方にはよくこんな感じで行っています。
腹帯は一時的な対策でしかないので、インナーユニットをきちんと使う練習が必須になっていきますが、

・毎日会えるわけでもないし、
・退院後すぐに通院できるわけでもないし、
・そもそも入力がない方に対して1回で理解してもらうのが難しい

ということもあってその辺りがまだまだ私の力が足りていない部分というのを毎回痛感しています。

とはいえ、
「不安で仕方なかった…」という表情だったママさんでも、とりあえずこうすればなんとか動ける!という解決策が見えてくるだけでも、みるみる表情が明るくなるのは事実です。


●産後の不安要素は一つでもない方がいい

産後特有のホルモンによる不安感って私も経験あるのでわかります。
でもこれってホルモンの影響のみではなくて、他にも何か引き金があって、それによって結果的に出てくる不安だったりもするんじゃないかな〜って感じることも多いです。

起き上がれない。

も、やっぱり不安要素の一つになり得ますし、そこに対して適切な評価と対応策をお伝えできる理学療法士の役割って、やっぱり大事なのかもしれないと思う経験を最近はたくさんしています。

本の小さな指先の切り傷一つでもストレスなんだから、
動けないって相当不安になりますよね。
産後の不安要素は一つでもない方がいい。そのためにお役に立てたらそんなありがたいことないな〜って思ったりします。


●おまけ:起き上がる時の対策の一つ

こんな感じでクッションでとりあえず対応するっていうこともあったりします。

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