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RW リーディングワークショップの授業と新学習指導要領との関係をメモしてみた

学習指導要領(国語編)との関連
第1章総説より


P1L3グローバル化の進展や絶え間ない技術革新により、社会構造や雇用環境は大きく、また急速に変化しており、予測が困難な時代となっている。
P1L5成熟社会を迎えた我が国にあっては、一人一人が持続可能な社会の担い手として、その多様性を原動力とし、質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくことが期待される。


▶教師の多くは成熟社会以前の「工業化社会」を生きてきた世代である。その価値観が色濃く、また、その教えを若い世代が受け継ぎ過ぎている場合がある。大人こそ新たな学びにチャレンジする必要がありそうだ。全体で同じことに取り組んだり、知識の暗記やテストの得点が人の能力を表したりするシステムは時代に合わない上に、そもそも公正なシステムではない。テストは人の力の一面に過ぎず、多様な価値観や生き方、学び方を取り入れる必要がある。全員が「質的な豊かさを伴った個人と社会の成長につながる新たな価値を生み出していくこと」ができるのかと言えば、それは高度な期待だと思う。けれども一人一人が自分らしく社会に参画できる力をつけることは必要。多様性の認められる授業がその最初の一歩。


P1L11人工知能がどれだけ進化し思考できるようになったとしても、その目的を与えたり、目的のよさ・正しさ・美しさを判断したりできるのは人間の最も大きな強みであるということの再認識につながっている。
P1L15このような時代にあって、学校教育には、子供たちがさまざまな変化に積極的に向き合い、他者と協働して課題を解決していくことや、様々な情報を見極め知識の概念的な理解を実現し情報を再構成するなどして新たな価値につなげていくこと、複雑な状況変化の中で目的を再構築することができるようにすることが求められている。

▶人間の美意識、つまり価値観や意味の構築ができることが人間の生活を豊かにする。個人と社会の成長につながる新たな価値のベースとなるもの。他人任せではなく、自分ごとにすることにつながる。社会参画のベースとも言える。


P2L2“よりよい学校教育を通じてよりよい社会を創る”という目標を学校と社会が共有し、連携・協働しながら、新しい時代に求められる資質・能力を子供たちに育む「社会に開かれた教育課程」の実現を目指し、学習指導要領等が、学校、家庭、地域の関係者が幅広く共有し活用できる「学びの地図」としての役割をはたすことができるよう…。


▶つまり、学校だけでは無理!ということ。もちろん、当たり前。

今回の改訂の基本的な考え方


P2L30子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力  実際に生きて使える力!
P2L34知識及び技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成のバランス
P3L2知識の理解の質を更に高め、確かな学力を育成する  知識の理解の質?とは?
育成を目指す資質・能力の明確化
P3L8目的を見時から考え、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と幸福な人生の創り手となる力を身に付けられるよう
P3L18「理解していること・できることをどう使うか(未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成)」

▶かなり高度な要求に思える。「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力等」とは?“優れた読み手・書き手が使うスキル”が関係するように感じる。関連付けたり、映像化したり、根拠のある推測をしたり、選択をしたりするようなスキル。まず、知識とスキルを身に付ける。その先に「理解」があるのではないかと考えている。「できること」はスキルを指すと考えてはどうか。

「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善の推進


P3L30学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し、これからの時代に求められる資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的に学び続けられるようにする
P4L201回1回の授業で全ての学びが実現されるものではなく、単元や題材など内容や時間のまとまりの中で、学習を見通し振り返る場面をどこに設定するか、グループなどで対話する場面をどこに設定するか、児童生徒が考える場面と教師が教える場面をどのように組み立てるかを考え、実現を図っていくもの…

▶主体的、能動的にするにはどうしたらよいのか。やはり生徒が学ぶ理由を理解することが必須であると思う。理由を納得できて学びのスタートラインに立つイメージ。自分らしく社会に参画するための力をつける。教材を学ぶのではなく“優れた読み手・書き手が使うスキル”を(すべてではなくても、自分の人生のためにできるだけ)身につける、そして自分なりの意味や価値を表現する方法を経験すること、それを振り返るプロセスによって自分の成長を自覚できる。成長の自覚ができたら学びが面白くなる。テストの点数でランキングするだけでなく、performance評価を増やすことが必要だ。3P評価が理想的ではないか(performance、progress、process)。自分の人生と教科教育を結び付けること。キャリア教育との両輪での実践が理想的だ。国語の力は生き方を考える際にも使われ、使う場を得て、さらに伸びていくものである。アメリカではテストの成績は評価の20%程度だとも言われている。


P4L26各教科の「見方・考え方」は、「どのような視点で物事を捉え、どのような考え方で思考していくのか」というその教科ならではの物事を捉える視点や考え方である。
P4L30「見方・考え方」を自在に働かせることができるようにする

▶国語における「見方・考え方」は“優れた読み手・書き手が使うスキル”と設定してみてはどうだろう。教材「を」教える=教材の解説ではなく、教材「で」教える=スキルや知識⇒物事の理解と意味(価値)の構築に至る授業づくり。


各学校におけるカリキュラム・マネジメントの推進


P5L4教科横断的な学習を充実
P5L5単元や題材など内容や時間のまとまりを見通して行うこと
P5L9カリキュラム・マネジメントに努めることが求められる。

▶教科書を知識やスキルの共通レッスン(基本)素材として、その後、生徒が本を選択し、自力で読み解いていくWW/RW(writing workshop/reading workshop)とする授業を提案する。現状でも年間40時間のWW/RW(writing workshop/reading workshop)の時間の確保は可能である。学びのハンドルを生徒に委ねる=主体的であると考える。もちろん、ただ放置するのではない。このworkshop授業には複数の生徒とつながる手立てが組まれている(例えばチェックイン、レターエッセイ、フィードバックなど)。ワークショップにつなげるイメージでスキルの習得を計画したり、教材の配列を決めたりすることで、振り返りのタイミングなども計画できる。年間のカリキュラム・デザインと各単元のプログラム・デザインが必要である。これを総合的な学習の時間のキャリア教育と連動させるのが理想的である。なぜなら、キャリア教育で求められるスキルと国語の“優れた読み手・書き手が使うスキル”は必要とする力が非常によく似ているからである。(2018~2019年度 実践済み)※キャリアとの連動は私のオリジナルな考え方。

P6L16伝えたい内容や自分の考えについて根拠を明確にして書いたり話したりすることや、複数の資料から適切な情報を得てそれらを比較したり関連付けたりすること、文章を読んで根拠の明確さや論理の展開、表現の仕方等について評価することなどに課題があることが明らかになっている。

▶これらの力は人生のあらゆる場面で使われる力であろう。どれも体験しながら訓練することが楽しく学ぶ秘訣だ。実際にやってみる。その後、得意なスキルを選択して磨いていく。苦手なスキルは仲間と再度学ぶ。国語は詩歌、物語、論説、古典などが繰り返される教科なので、再度学ぶチャンスが複数回ある。教材の解説「を」聞いて、ノートをとるだけの講義型ではスキルの習得は難しい。


P6L24依然として教材への依存度が高いとの指摘もあり、更なる授業改善が求められる。

▶未だに教材「を」のタイプの方がいる。デジタル化にどう対応するのだろう。


P7L21意味を理解している語句の数を増やすだけでなく、話や文章の中で使いこなせる語句の量を増やすとともに、語句の意味や使い方に対する認識を深め、語感を磨き、語彙の質を高めることである。

▶これも高度な要求。1年間に教科書1冊程度の読みものでは不足。これらの力をつけるには読み書きの総量が必要。たくさんの読み書きの体験を、個の力に応じて積んでいくこと。これは教科書だけではできない。精読は生徒の望む作品、絵本、教師のレッスンとしての言語活動で可能だ。


P8L27様々な媒体の中から必要な情報を取り出したり、情報同士の関係を分かりやすく整理したり、発信したい情報を様々な手段で表現したりすることが求められている。

▶これも「する」授業でなければ身につかない。論説だけでなく、物語でも必要。これらを全て実現できるのがレターエッセイである。他にも学びのフレームとしてABD(active book dialogue)、学びの契約書、フレームワーク等がある。これらを習っておしまいにするのではなく、WW/RWで生徒が自分の読みを加速するためのフレームとして活用できるようにすれば生徒は自らの力で自走しだすことになる。


P8L30「教科書の文章を読み解けていないとの調査結果もあるところであり…。」
▶文科省は、新井紀子氏の「教科書が読めない子どもたち」という本を意識している?
新井氏の研究と主張には平田オリザ氏が著書で反論している(「22世紀を見る君たちへ」にて)。
また、新井氏はAIに負けない子を育てる必要性を説いているが、現実にはAIと勝負する必要は一切なく、むしろAIと仲良くして生活を豊かにできる思考力・判断力・表現力が私たちには必要であるという平田氏の考えに、私も賛成する。
そもそも、教科書が読めないといけないのか?という疑問がある。人は読みたいものを読みたいようにしか読めない。個々に得意な分野や内容、文体、長さ、ジャンルなどがある。多様性への配慮は教材にまで及ぶ。どの作品をどのように解釈するかも個々の力と好みによる。多様性があるからこそ、違いが面白く、違う側面からものを見たり考えたりする面白さや新しい視点に体験的に気づく。解説型の講義ではこうした体験や多様性を認めることはできない。教師の読み、指導書の読みが正解で、それを覚えることに何の意味があるのか。これからの世の中で求められる力は、正解を探すことよりも、意味や価値を作り出すことであるのは、この学習指導要領でも明白に語られている。また、本に書かれている文字は、読者が自分なりの意味をもつまでは、ただのインクの染みであると言ったのはNY大学教授のローゼンブラッド氏である。学習の目指すところは、自分なりの意味、価値を説明できる子どもを育てることなのである。


P9L14全ての領域において、自分の考えを形成する学習過程を重視し、「考えの形成」に関する指導事項を位置付けた。

▶まさに、意味を作り出せる人になること。価値をもてる人になること。そのための読み書き、話す聞く力である。それを明確に求めている。そのためのレッスンや言語活動を仕組むのが教師であろう。

P9L26国語科の指導内容は、系統的・段階的に上の学年につながっていくとともに、螺旋的・反復的に繰り返しながら学習し、資質・能力の定着を図ることを基本としている。


▶何度でもチャレンジできる。スキルは複数あり、どれを選択するのか、どれを今日練習するのかも生徒が選ぶことだ。基本レッスンさえしっかりすれば、そこから学びを作るのは生徒自身であり、自走できるまで支えるのが教師の仕事である。点数をつけて生徒の値踏みをやめて、根気強く彼らを言葉で支えることで生徒は気持ちよく学びに向かう。形成的評価を推進したい。初めて自転車に乗れるようになる訓練に最もイメージが近いと思う。乗れるようになったら価値を求めて自走するようになる。


第2章国語科の目標及び内容より


P13L6言葉が持つ価値には、言葉によって自分の考えを形成したり新しい考えを生み出だしたりすること、言葉から様々なことを感じたり、感じたことを言葉にしたりすることで心を豊かにすること、言葉を通じて人や社会と関わり自他の存在について理解を深めることなどがある。こうしたことを価値として認識することを示している。面白いと思えること!
P13L20こうした言語感覚の育成には、多様な場面や状況における学習の積み重ねや、継続的な読書などが必要であり、そのためには、国語科の学習を他教科等の学習や学校の教育活動全体と関連させていくカリキュラム・マネジメント上の工夫も大切である。


▶ここに述べられていることこそ、まさに、WW/RWそのものである!オンライン授業でも可能である。デジタルファイルの共有によるブッククラブができる。レターエッセイの指導もオンラインで可能である。読書をさせっぱなしにしたり、冊数を競ったりするのではなく、生徒の成長を根気強く支える授業がWW/RWである。


学年の目標


P15表 学びに向かう力、人間性等 「進んで読書をし…。」「読書を生活に役立て…。」「読書を通して自己を向上させ…。」

▶これを「学びに向かう力、人間性等」の目標として設定しているということは、読書と国語を一体化したものとして認識することを求めていると考えられる。(現在、小学校の習慣からか、国語と読書の時間は全く別の時間として認識されている。)
国語の学習を活かして、読書に向かい、学び、意味や価値を作り出し、人生を豊かにすることと考えると、読書と国語は強く結びつく。

知識・技能/思考力・判断力・表現力


P25L20国語科の学習が読書活動に結びつくよう発達の段階に応じて系統的に指導することが求められる。

▶読書は国語の添え物でも別料理でもなく、国語であるという確認ができ、かつ国語への意欲を読み取る場面の一つとなる。(冊数の多寡ではなく!) 意味を作り出そうと参加したかが重要。

知識・技能 

表現技法
情報を取り出す 
情報同士の関係 
情報の整理

根拠
情報と情報の関係
具体と抽象
原因と結果
関係
理解
使う

思考力・判断力・表現力

<話すこと聞くこと> 
異なる立場 
多様な考えを想定する 
事実と意見 
解釈 
考えの形成 
共有 

<書くこと>
互いの考えの尊重 客観性 
信頼性 
論理の展開 
根拠を明確に 
表現の効果 
引用 
推敲 
共有

<読むこと>
事実と意見 
主張と例示 
解釈 
要約 
意味 
結び付け 
批判的に読む 
根拠を明確に 
比較 
考えの形成 
共有 
捉え方の違い 
理由

まとめ

上記の全てはRW/WWで実現が可能だし、オンライン授業にも対応できる!むしろ、これまでの授業観でオンライン授業の国語をやろうとする人は無駄が多くなるうえに、子どもに「学び」を提供できないだろう。

コロナ禍を機に、オンライン化と効率の良い学びの場を提供し、学びをもっと自由で楽しいものにできる!


最後までお読みくださってありがとうございます。


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