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醤油だけで煮る魚

一般に煮魚を作るときの考え方はうまい煮汁を作って、その煮汁を身にしみ込ませるというものが多い。煮汁の材料は水、酒、醤油、みりん、砂糖である。沸騰させたら魚を入れ魚のうま味を煮汁に落とす。うま味の出た煮汁を魚にしみ込ませつつ煮詰めていき魚に絡めていく。調理時間は魚をいれてから10分~15分といったところである。この方法では安定して美味しい煮魚をつくることができるが、その裏返しでどんな魚でもだいたい似たような味になってしまう。せっかくいい材料がこれでは少しもったいない。

金石では醤油のみで煮て3分~5分で仕上げるという家庭が多い。この調理法のすぐれているところはうま味を身に閉じ込め臭みや余分な脂を煮汁に捨てることで、魚本来の味を楽しめることである。ハチメはハチメの味。赤ガレイなら赤ガレイ。イワシはイワシの味が楽しめる。

身の外側だけ醤油の色がついているが、短時間で仕上げているため中は真っ白、食べるとフカフカ(煮魚の表現として変だと思うが、食べた人は口を揃えて”フカフカ”という)である。

そのままの味がでるので魚の鮮度と質が重要である。一度大型スーパーで買った魚でやったら生臭くて食えたものではなかった。ただ良い魚にあたると美味しさも格別である。使う醤油も金石・大野の甘味がある醤油が良いようで、県外のものを使うと醤油くさくてダメだった。金石独特の料理は日本全国に一般化できるものではなく、金石の風土や文化に根差したものだと痛感する。

冷めると醤油が身に入って塩くどくなる。温かいうちに食べてもらえるように食卓がすべて整ってから煮始める。家族が一品二品食べ終わった頃合いを見計らってテーブルに出すとそれが最高のご馳走になる。

漁師に話を聞くと、船の上はとにかく忙しい。短時間で作れて持ち込む調味料も醤油だけですむので良いとのこと。実に合理的なのである。この単純にして素材の良さを引き出す調理法は、船上での必要性から生まれたのかもしれない。

作り方
1 魚を食べやすい大きさにぶつ切りにする。
2 鍋に醤油を200㏄ほど入れて沸騰したら魚を入れ蓋をする。
3 3分ぐらい経ったら火を止めて1分蒸らしたら完成。

※煮る時間はカレイだと2分、大きいハチメで4分ぐらい。
※水を入れてもいいが、せいぜい水2:醤油8ぐらい。






















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